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2020年3月号 No.516

建設工事標準請負契約約款の改正について

請求等の方法
請求等を行う場合は、具体的な契約不適合の内容、請求する損害額の算定の根拠等、当該請求等の根拠を示して、契約不適合責任を問う意思を明確に告げることで行うことを規定している。これは、旧民法下で権利保存するために必要とされていた請求内容が示されていた判例(最判平成4年10月20日)を参考に、約定で権利保全の方法を規定したものである。

改正民法では、権利を保全するためにここまでの負担を発注者に求めることは過剰であるとされ、目的物が契約の内容に適合しないことを通知することで足りるとされたが、本約款においては、建設工事の特性を踏まえた以下の理由により、契約不適合責任に関する発注者の権利を保全するために、これまでの判例と同様の請求が必要であるとしたものである。

  • 「通知」により権利が保全されるとした場合、その保全期間は消滅時効に従うこととなるが、その場合には、通知から実際の権利行使までの期間が長期となり、期間内の使用や経年変化により、通知を行った時点での契約不適合の内容や程度が不明確となる可能性があること。
  • 上記の場合に、消滅時効が成立するまでの期間中は受注者が不安定な地位に置かれ続けることとなり、受注者に不相当な負担を課することとなる可能性があること。
    ・直ちに請求を行うことが可能である発注者に対しても通知を課すことは二度手間となること。

期間内の請求とみなす場合
上記のとおり、本約款においては権利を保全するために請求等を行う必要があるとしたところ、の担保期間の終了間際に契約不適合が発覚した場合にまで請求等を行うことを求めることは酷であり、実態上もこのような短期間で請求まで行うことは難しいと考えられる。そのため、通知によって権利保全されるとした民法改正の趣旨も踏まえ、の契約不適合に係る請求等が可能な期間(以下「契約不適合責任期間」という。)のうちに契約不適合を知り、その旨を受注者に通知した場合で、発注者が当該通知から1年が経過する日までに の方法により請求等を行ったときは、契約不適合期間内に請求を行ったとみなすこととしている。この場合の「通知」は、単に契約との不適合がある旨を抽象的に伝えるのみでは足りず、細目にわたる必要はないものの不適合の内容を把握することが可能な程度に、不適合の種類・範囲を伝えることが必要である。この「通知」の内容は、商法旧第526条における通知の意義に関する判例に即して規定したものであり、に規定する「具体的な契約不適合の内容」よりも抽象的な内容で足りるものである。

故意又は重過失の場合
 契約不適合が受注者の故意又は重過失の場合は、受注者を保護し担保期間を短縮する必要がないことから、からまでの規定を適用せず、民法の原則に従うことを規定したものである。

民法第637条の不適用
からまでの規定については、民法第637条第1項の発注者がその不適合を知った時から1年以内に通知しなければ、その不適合を理由として請求等を行うことができないとする規定を適用しないこととすることを規定している。これは、引渡しからの客観的な期間制限を設けた上で民法第637条第1項を適用すると規定が複雑となることや担保期間を原則2年としているところ、知ったときから1年以内を併存させても適用範囲が限定的となりそれほど意味を持たなくなることなどを踏まえたものである。

請求等ができない場合
 契約不適合が支給材料の性質又は発注者若しくは監督員の指示により生じたものであるときは、発注者はこの契約不適合について、請求等を行うことができないことを規定している。ただし、受注者がその材料又は指示の不適当であることを知りながらこれを通知しなかったときはこの限りでないこととしている。

3.おわりに

建設工事標準請負契約約款の改正部分は、改正民法の施行日とあわせ、改正建設業法の規定に係る部分を除き、令和2年4月1日としている。実際に新しい民法の規定の下で、契約行為が行われることによって、建設工事の請負契約についても新たな判例などが蓄積されていくものと考えられるが、まずは、改正民法下での本約款の運用が円滑に進むよう改正の内容やその趣旨の周知を図っていく。

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