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2020年3月号 No.516

建設工事標準請負契約約款の改正について

(6)発注者の契約解除権について

①民法の改正内容
改正民法において、債権者の解除権については催告解除と無催告解除に分けて規定された。なお、催告解除については、解除の根拠とする債務不履行の内容が軽微であるときは解除できないこととされている。

また、これまでは建物その他の土地の工作物について工事完成後に瑕疵があることを理由に発注者は契約を解除することができなかったが、改正民法でこの規定は削除された。

②約款の改正内容
約款においても発注者の解除権について催告解除と無催告解除に分けて規定を行った。催告解除については改正民法同様、債務不履行の内容が軽微であるときは、契約を解除できないこととし、無催告解除については、民法に規定されている解除事由を約款においても建設工事の事情を踏まえて規定した。また、改正民法において、完成後の契約解除を禁止する条項が削除されたことを踏まえ、約款において完成後の解除事由として、催告解除に「正当な理由なく、履行の追完がなされないとき」、無催告解除に「引き渡された工事目的物に契約不適合がある場合において、その不適合が目的物を除却した上で再び建設しなければ、契約の目的を達成することができないものであるとき」を追加した。

なお、契約の解除について、その根拠が発注者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、契約を解除することはできないこととした。また、(2)の譲渡制限特約に違反した場合について契約の解除事由として明示することとした。

(7)解除に伴う措置について

契約の解除に伴う措置として、原則として原状回復義務が生じるところ、工事の完成後の契約の解除については、除却するか否か、除却費用をどのように負担するかなど、それぞれの工事の事情に応じて決定すべき内容が多く、約款において一律に規定することが困難であることから、工事の完成後の契約の解除に伴う措置については、民法の規定に基づいて、受発注者双方が協議により決定することとした。

(8)契約不適合責任の担保期間について

①民法の改正内容
旧民法では、請負人の瑕疵担保責任の存続期間は、引渡しから1年である(第637条第1項)が、建物その他の土地の工作物については、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後5年間その担保責任を負うこととされ、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、その担保期間は10年とされていた(第638条第1項)。また、この場合には、工作物が瑕疵によって滅失し、又は損傷の時から1年以内に、修補等による権利行使をしなければならないとされていた(同条第2項)。

改正民法においては、売買の規定に統合する形で第638条は削除され、引渡しの時から1年以内に、かつ、その権利の行使までしなければならないとするのは、注文者の負担が過大であるとされたことから、注文者は目的物の種類又は品質に関して仕事の目的物が契約の内容に適合しないことを知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しなければその権利を行使することができないとされた。

これにより、改正民法下では、受注者は、この「契約の内容に適合しないことを知った時から1年以内の通知」と消滅時効の一般原則に従い、契約不適合に関する責任を負うこととなった。なお、消滅時効についても併せて見直しが行われ、債権は、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使をしないとき」又は「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」は時効によって消滅することとされている(改正民法第166条第1項)。

②約款の改正内容
約款における契約不適合の責任期間
建設工事は監理者等の検査等のもとに施工され、工事完成検査の際には専門家により厳重な確認がなされることにより不適合の部分はほとんど修補されて引き渡され、契約内容と不適合な部分が生ずるおそれは少なく、また、民法の担保期間を適用すると受注者を長期間不安定な地位に置くこととなるなどの理由により、民法の担保期間を約定で2年に短縮していたところ、この事情は民法改正によって変わるものではないため、引き続き、契約不適合の担保期間を原則として2年とし、発注者は、工事目的物の引渡しから2年以内でなければ、契約不適合を理由とした履行の追完の請求、損害賠償の請求、代金の減額の請求又は契約の解除(以下「請求等」という。)を行うことはできないこととした。この例外として、設備機器本体等の契約不適合については、引渡しの時に、発注者が検査して直ちにその履行の追完を請求しなければ、発注者は契約不適合を理由とした請求等を行うことはできないこととしている。ただし、一般的な注意の下で発見できなかった契約不適合については、引渡しから原則として1年が経過する日までは請求等を行うことができることとしている。

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