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2024年11月号 No.563

令和6年度「作文コンクール」受賞作品が決定!

しんこうTODAY

国土交通省と建設産業人材確保・育成推進協議会では、高校生の方と建設産業で働く方を対象とする作文コンクールを実施し、優秀な作品を表彰しています。今回は、国土交通大臣賞に選ばれた2作品をご紹介します。

 

高校生の作文コンクール 国土交通大臣賞 受賞作品

笑顔のあるコミュニティ再生を、建築の力で

静岡県立浜松工業高等学校 建築科 3年
鈴木 和弥 さん

受賞者へインタビュー

■Q1 受賞された感想を教えてください。
私の思いや夢を誰かに伝えられた様な気がして、とてもうれしく思います。日本の建築のすばらしさを伝える機会を頂けてとても光栄です。

■Q2  なぜ工業高校に進学しましたか? 建設系の勉強をしようとおもったきっかけ 等
フィリピンでの劣悪な環境を見てきた私は、いつか皆が笑顔に、幸せになれる建築を造ることが夢でした。その第一歩として建築の基礎を学ぶため、建築科のある工業高校に進みました。

■Q3  学校ではどのような勉強をしていますか?
私は日々、建築の基礎・基本を学んでいます。建物の構造や材料、予算や法律など幅広い分野をもとに、建築について学んでいます。初めてのことばかりで大変なこともありますが、技術を身につけています。

■Q4  将来の夢を教えてください。
高校で学んだ知識をもとに大学へ進学し、将来外国へ出向き、家のない人たちに安らげる空間を、帰る場所を造りたいと思っています。建築で不幸な思いをする人たちを、減らしたいです。

私の夢は、世界の人々に自分の居場所、帰る場所「自宅」を作ることだ。そして、「自宅」で囲まれたその街に、幸せが溢れかえるようにする事だ。

私はフィリピンで生まれ、幼少期を貧しい田舎で過ごした。私は恵まれていたのだ。ありがたいことに自宅があり、普通の生活をしていた。食べるところや寝るところ、シャワーを浴び、くつろげる空間が、そこにはあった。しかし周りを見渡せばダンボールの上で寝て、ダンボールの上で食べ、雨風も凌げないような人達が多くいた。家はあっても簡易的に作られた小屋のようなものしか無かった。バラックのような家が広がった街ではゴミが散らばり、治安は悪かった。景観は荒れていた。一体誰がこの街で分かりあい、幸せを感じて過ごすことができるのだろうか。

私が日本に来たのは5歳の頃だった。幼い時に見た、フィリピンの荒れ果てた景色とは違い、景観や街に住む人達の姿を見て感動したのを覚えている。みんなこの景色を当たり前のように見て過ごしていて、日本の建築物のクオリティの高さに驚かされた。そしてこの光景を作り出しているのは、当たり前に日々を過ごし、当たり前に帰る。そんな「自宅」、「街」があるからこそ、みんな幸せそうに笑っているのだと感じた。その日から私はいつか世界中の誰もがみんなが幸せになれるような「自宅」「街」を作ることが自分の目標になった。

私は今、高校で建築を学んでいる。構造から材料、建て方や景観まで自分の夢を叶えるため日々建築の基礎から一つずつ力を身につけている。建築の奥深さに触れ、色々な違いにも気付かされた。日本と海外では大きく建築物の特徴に差があった。気候が違えば使う材料が違うし、考え方や文化が変われば、建物そのものが、街や地域それ自体が変わってくる。建物を建てる時の費用の大きさにも驚いた。今のままでは貧しい人達には到底「自宅」は作れないことを知った。建築一つにも違いがあった。同じ建築物で全ての人に幸せになって貰うことは出来ないことに大きく気付かされた。そして自分の夢がどれだけ大きいかも気付かされることになった。それでも私はこれからも建築を学んでいく。地域にあった建築物を建てるために、貧しい人達に帰る場所、住める街を作るために。いつかみんなが楽しく不安のない、幸せな日々を作るために。街の治安や人が幸せを感じられること、みんなが笑顔でいられること。それが建築から始まっていることに気付いた日から、私は学びを止めない。

私はまだまだ未熟である。建築に対する知識も経験も遥かに足りない。私は大学に進学し安く耐久力に優れた構造、海外の建築文化、海外の歴史や特色について学ぼうと思っている。これからも建築に触れ合い、深めていきたい。私の夢が叶うまで、いつか世界の全ての人に自宅と住まう街ができるまで。

私たちの主張 国土交通大臣賞 受賞作品

魅力に気がつく瞬間

穂積建設工業株式会社
佐々木 ゆのか さん

受賞者へインタビュー

■Q1  受賞された感想を教えてください。
本当に驚きました。昔から作文が苦手だったので、まさか私が賞を頂けるなんて、、、と未だに実感が湧きません。嬉しい気持ちと恐れ多い気持ちでいっぱいですが、この賞に見合う現場監督になれるよう精進します。

■Q2  建設業へ入職したきっかけを教えてください。
高校2年生のときに参加した現場見学会で施工管理に興味を持ったことがきっかけです。また、学生時代から憧れていた可愛くて優しい大好きな先輩が自社に勤めており、一緒に働きたいと思い入職を決意しました。

■Q3  現在はどのようなお仕事をされていますか?
土木工事の現場監督(見習い)です。ベテラン上司の元で施工管理について学んでいます。入社2年目になって任せていただける仕事が増えてきたことが嬉しいです。作業員さんから現場の知識を教えてもらうことも多く、学びが多い日々を過ごしています。

■Q4  今後の目標を教えてください。
「この人になら安心して任せられる」と思ってもらえる現場監督になりたいです。まだあやふやなことが多く、周りを頼ってばかりいるため、ピンチの時でもどっしりと構える安定感と頼りがいのある人になることが目標です。

私は地元八戸の建設会社に就職し、土木工事の現場監督をしている社会人2年目だ。

幼い頃から可愛い服が好きだったため、私服で出社できる仕事に就きたいと考えていた。きらきらした生活と、女性らしい職業に憧れていたのに、なぜ土木工事の現場監督をしているのか。度々家族や友人から不思議に思われ、現場監督っぽくないとよく言われている。この職業を選んだ理由を問われる度に、この仕事のやりがいと楽しさについて考えている。

そんな私が建設業に出会ったのは高校2年生の頃である。学科長の勧めにより、三陸沿岸道路の建設現場の見学に行った。遠足感覚で参加した行事で、初めて重機が動いているところを見た。山を切り開いて道路を作っている様子は壮観だった。翌年に完成した道路を見学した際に、この道路は地元の人の生活を、私の生活を便利にすると思った。感動と同時に、自分は土木工事に関わる仕事に就くかもしれないと思った。しかし、大変な職業というイメージがあったためとても悩んだ。私は重い荷物を持つ力も、暑さ寒さに耐えられる十分な体力も持っていない。女性が働きやすい職業が増えてきた社会で、わざわざ苦労する道に進まなくていいと学校の先生に言われたが、やりがいを見出せない職業よりは、大変だがやりがいがある職業に就いた方が幸せなはずだと思った。以上がこの職業に就こうと思った経緯である。

若い世代は大半が都会に就職する。私のクラスでも、40人中3人しか地元に残らなかった。そして、地方の企業は従業員の高齢化に伴う人手不足に悩まされていると聞く。建設業も例外ではない。実際に現場にいると、2、30年後が心配になるほどに作業員の年齢層が高いことを実感する。私は地元の建設産業が人手不足により衰退していくのが怖い。

地元の建設業に興味を持つ若者が増えることが活性化に繋がる近道だと思う。しかし、興味がない人に興味を持つよう促すことは難しい。若い世代の大多数は効率重視だ。少ない苦労で大きな利益がモットーな世代に、やりがいが売りである建設産業は受けが悪い。それを理解した上で、それに打ち勝つような楽しさと、地元のインフラを支えることのやりがいがあることを理解してほしいと思う。

私のやりがいは、地元のインフラに携わりながら、地元の人の暮らしがより良いものになっていくのを近くで感じることである。私の1番仲の良い友人が「この橋ができたら、私の家から一直線で出勤できるようになるんだよね。」とよく話している。私は今、その橋につながる道路の建設に携わっている。自分の日々の仕事が、大好きな友人の「便利」に繋がることがとても嬉しくて、今までで最大のやりがいを感じている。

建設産業は、その地域の「安全」や「生活水準」に直接関わることができる。地元の建設産業に携わることは、身近な人の暮らしに貢献していることをとても近くで実感できるということだ。それは、地元の建設会社に就職したからこそ感じられるやりがいである。生まれてからずっと過ごしてきた八戸の街並みが変わっていく様子を、傍から見ているだけではなく、変わっていく景観の中に自分が携わった建設物があるという喜びを理解した。だから私はこの仕事を続けたいと思うようになった。

小さい頃に憧れた生活はできていない。周りの人が不思議に思うほど自分に似合っていない職業。不安なことばかりだった。しかし、地元に貢献できる実感を得られた今は、不安よりもやりがいが大きくなった。同時にいくつもの目標ができたため、日々が充実している。

地域に根付いた建設産業だからこそ、味わえるやりがいがある。このことを知った私は、できるだけ長くこの職業に就いていたいと思うようになった。できるだけ多くの若い世代が、地元の建設産業の魅力に気がつけるとよい。今は似合わない「現場監督」という職業が板につくようになったら、高校生の頃に現場見学会で味わった感動を、多くの若い世代が感じられるよう、私もその魅力を伝える側の一人になりたい。

 

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