4. 資格者に対する継続教育の実施
平成20年、経営事項審査が改正され、「建設業経理事務士等の数」が「公認会計士等の数」に名称変更されるとともに、W(社会性等)において、新たに「監査の受審状況」が審査項目となりました。社内に在籍する登録経理試験の1級合格者(1級建設業経理士)が、経理実務責任者として経理処理の適正を確認し、自らが署名した書類を提出することによる自主監査を行った場合に加点されるものです。これは、企業が作成する計算書類の虚偽や誤謬を防止し、質の高い企業情報の作成に関与できる人材に対して適正な評価を行う趣旨であると考えられます。
これにより、建設業経理士は今まで以上に重要な役割を担うことになるため、国土交通省は登録経理試験実施機関(建設業振興基金)に対して、次の事項を通知しました(平成20年3月17日付)。
1.(略)
2.登録経理試験実施機関は、登録経理試験に合格した者の建設業の経理に関する業務を
遂行する能力の維持向上を図るため、必要に応じ、講習の実施、企業会計基準の変更等
必要な情報の提供その他の措置の実施に努められたい。 |
この通知を受け、建設業振興基金は国土交通省と協議を重ね、平成21年3月に建設業経理士(1級・2級)を対象として、会計知識等の維持及び向上を図ること、経営安定化に努力する企業や人材を支援することを目的とした「登録建設業経理士制度」を創設しました。『建設業経理士登録講習会』を開催し、その修了者を検定試験合格後も積極的な自己研鑽を行う者であると認定(登録建設業経理士)したうえで、5年間にわたり「継続学習ツールの配信」や「各種セミナーへの無料または特別割引価格での招待」を提供するものとしました。また、登録建設業経理士が在籍する企業を、人材育成に尽力している企業として広く周知していくこととしました。
■ 検定試験制度経営事項審査等の変遷
昭和50年代前半 |
- 「建設業冬の時代」から脱却するためのポイントとして「ドンブリ勘定」が問題となる。
- 企業における計数管理は不可欠であり、また、建設業会計は様々な要因から他産業とは異なる特殊な会計処理があるとの認識から、建設業会計を担うべき人材育成が急務となる。このような流れから、様々な団体が「建設業会計講習会」を実施する。
- 講習会から発展した、建設業会計に係る資格制度創設の要望が高まる。
|
昭和56年 |
- 「建設業経理事務士検定試験」制度が創設される(1級~4級)。
- 第1回試験を昭和57年3月28日に実施する。
|
昭和59年 |
- 建設業経理事務士検定試験が「建設大臣認定」となる。(建設省告示第1,415号および第1,522号)
- 検定試験制度の一環として、試験と講習を組み合わせて実施する特別研修を創設する(4級:昭和59年~、3級:昭和62年~、2級:平成6年~)。
|
昭和60年代 |
- 「建設業経理事務士」を主観評価する地方自治体が現れる。
- 「建設業経理事務士」を客観点数においても評価すべきとの議論が強まる。
|
平成6年 |
- 経営事項審査のW(社会性等)に「建設業経理事務士等の数」が設定され、企業内の建設業経理事務士の数が評価されるようになる(1級~3級、3級は10年間の時限措置)。
- 客観評価されたことに伴い、計数管理の重要性を認識する企業が増加する。同時に、企業内の人材育成の一環として建設業経理事務士の資格を奨励する傾向が強まる。
|
平成13年 |
- すべての国土交通大臣認定資格から認定が外され、純粋な民間資格となる。ただし、建設業経理事務士については、その社会的重要性から建設業法施行規則第19条に「建設業の経理知識審査等事業」として位置づけられ、経営事項審査の評価が継続することとなる。
|
平成14年 |
- 公益法人改革の一環として、公益法人が実施する民間資格・講習に対する国のお墨付きを平成18年3月までに廃止するよう閣議決定される。対象となる資格・講習については、認定等の廃止や登録試験として実施する等の措置が講ぜられることとなる。
|
平成17年 |
- 建設業法施行規則の改正により、第19条が廃止されるとともに「登録経理試験」が創設され、平成18年度より施行されることとなる。
|
平成18年 |
- 建設業振興基金が、登録経理試験の実施機関第1号として認定される(6月8日)。建設業経理事務士検定試験(1級・2級)を発展的に解消し、登録経理試験(1・2級)を「建設業経理士検定試験」の名称で実施する(第1回試験:平成19年3月11日)。
- 建設業経理事務士検定試験(3・4級)は建設業振興基金独自の資格として位置づけ、従来通り実施していく。
|
平成20年 |
- 経営事項審査の項目に「監査の受審状況」が新設され、登録経理試験1級合格者が経理実務責任者として自主監査する場合に、加点評価されることとなる。
|
平成21年 |
- 建設業振興基金が登録経理試験合格者(建設業経理士)を対象として、合格後の自己研鑽を支援することを目的とした「登録建設業経理士制度」を創設する。
|