特集
持続可能な建設業へ向けた変革

建設業における生産性向上の急務
少子高齢化が急速に進むわが国において、1970年代前半生まれの団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年には、深刻な労働力不足に直面する「労働供給制約社会」の到来が予測されています。リクルートワークス研究所『未来予測2040』によると、現状の推移のままでは2040年に全国で1,100万人の労働供給不足が見込まれ、なかでも建設業では労働需要に対する供給不足率が22.0%に達すると試算されるなど、地域のインフラ維持や災害復旧への影響が強く懸念されています。こうした状況を踏まえ、持続可能な産業基盤を維持するためには、担い手確保・育成と併せて、業務効率化や生産性向上に資するデジタル化の推進が極めて重要な鍵となります。
DXの推進による抜本的な事務効率化
これまで建設現場においては、ICT施工やi-Construction等の導入により、生産性向上に向けた取り組みが進められてきましたが、一方で、本社・支店や現場事務所が担う「バックオフィス業務(間接部門)」のデジタル化は依然として遅れているのが実情です。統計をみても、過去20年間で建設業の実質国内総生産額が13%、就業者総数が20%減少したのに対し、事務職就業者数は1%増加しており、バックオフィス業務の効率化が十分に進んでいない状況がうかがえます。重層下請構造の中で発生する膨大な「紙文化」や、各取引先が利用するITサービスに合わせた個別対応は、現場の技術者や事務員の負担を増大させ、業界全体の生産性向上を妨げる要因の一つとなっています。
今、求められているのは、企業の枠を超えた連携によるバックオフィス業務の抜本的な効率化です。取引先を含む関係企業が一体となってDXを推進し、建設現場とバックオフィスが情報をシームレスに連携することで、それぞれが本来注力すべきコア業務に集中できる環境の整備が期待されます。こうした取り組みは、生産性の向上に加え、持続可能な経営基盤の構築に繋がります。また、建設業の魅力をさらに高め、新たな担い手の確保にも寄与すると考えられます。
一般財団法人建設業振興基金 創立50周年記念事業の一環として
『2025年度 建設バックオフィス業務のDX推進支援助成事業』を実施
■ 助成事業の趣旨・目的
本財団では、2024年7月に「建設業バックオフィス業務のDXに関する勉強会」を設置し、建設業のバックオフィス業務のDXに係る課題や今後の方策について議論を重ねました(報告書の概要については建設業しんこう2025年10月号参照)。それを受けて2025年、本財団創立50周年記念事業の一環として、建設企業等を対象として企業間連携による様々なバックオフィス業務のDX推進を支援する「建設バックオフィス業務のDX推進支援助成事業」を実施しました。本助成事業は、根強く残る紙文化や、取引先に合わせて同じ機能であっても別々のサービスを使用せざるを得ない非効率等の建設業特有の事情を解消し、企業が連携してバックオフィス業務のDXを推進することを目的として実施したものです。
■ 助成実績
本助成事業における助成実績として26の企業グループ・団体(総連携企業数:1,025社)への支援を行いました。交付された助成金の総額は17,518,700円となっています。
[各事業者の主な取組内容(概要)]
本助成事業に採択された企業グループ・団体では、協力会社間等における事務負担を解消するため、以下のような具体的かつ多角的な取り組みが展開されました。
● 安全書類作成・管理、現場管理業務のDX活用による効率化
現場管理ツールの導入により、従来は紙や電話、Excelを用いて行っていた入退場管理、安全書類作成、施工体制台帳管理、作業員名簿管理、写真管理、工程管理、進捗報告等の業務をデジタル化できるものである。また、建設キャリアアップシステム(CCUS)や関連システムとの連携により、技能者情報の自動取得が可能となり、重複入力や書類受け渡しに伴う事務負担を大幅に軽減できる。さらに、元請・下請企業や現場と事務所間でリアルタイムな情報共有を実現し、確認作業や手戻りを削減することで、業務効率化、生産性向上および働き方改革の推進に資するものである。
● 電子取引システムによる商取引全般のペーパーレス化
見積書、注文書、注文請書、請求書などの取引データ・帳票を電子化することにより、郵送事務や送料等のコスト削減が図られるとともに、電子署名およびタイムスタンプ等による改ざん防止措置を講じることで、安全かつ信頼性の高い電子契約を実現する。さらに、取引関連情報を共有領域に一元管理することで、ローカル環境での書類保管リスクを低減する。これにより、発行・受領・保管業務のオンライン化を図り、業務プロセスの効率化と迅速化を実現する。
● AI活用とパートナー企業共同のデジタル人材育成
協力会社および材料メーカー等の従業員とともにDX・AI推進の勉強会を開催。あるべき姿と理想から取り組むべき課題を整理し、タブレット入力やデータ連携といった身近な改善から着手し、段階的にデジタル人材を育成しながら推進していく手法を学習。他にも画像認識を活用した現場写真の分類・整理や、業務自動化アプリのプロトタイプ開発を体験的に学ぶことで、DX・AI活用への理解と実践意欲の向上を図る。
● 小規模企業・職人に特化した情報プラットフォームの構築
身近に利用されているSNSツールの利便性を活用し、業務連絡、求人・採用、購買関連業務を一元管理できる自社アプリの開発を推進。あわせて、現場で運用している各種専用システムのサポート機能を充実させ、気軽に問い合わせや相談を行える環境を構築。また、英語表記への対応をはじめとした多言語化を推進し、多様な人材が円滑に利用できる環境整備を進めていく予定。
以降のページより、助成を活用した企業事例をご紹介します。




