特集

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2023年12月・2024年1月 No.554

持続可能な建設業にむけて

資材価格の高騰や時間外労働規制、そして担い手の確保など、多くの課題や時流への対応が迫られる建設業界。そうした中、中央建設業審議会・社会資本整備審議会基本問題小委員会では持続可能な建設業についての議論が交わされ、2023年9月に中間とりまとめが策定されました。改めて見つめ直された現状・課題や、その解決に向けた要点、業界の未来への展望などについて、国土交通省 塩見不動産・建設経済局長にお話を伺いました。

 

国土交通省 不動産・建設経済局長 塩見 英之 氏……(以下、塩見)
一般財団法人 建設業振興基金 理事長 谷脇 暁 ……(以下、谷脇

 

課題が浮き彫りになった建設業界

谷脇:各建設業協会や関係団体の方、全国の工業高校生など、様々な方に目にしていただいている『建設業しんこう』ですが、その中でも毎年の局長との対談は、局長ご自身の想いやこれからの展望を直接伺うことができる貴重な機会として読者にも好評の企画です。ぜひいろいろなお話をお聞きできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

塩見:よろしくお願いいたします。

谷脇:さて、局長は2023年7月に現職に就任されたわけですが、2010年8月に入札制度企画指導室長、2012年6月には労働資材対策室長を務められ、その後も土地・建設産業局総務課長に就かれるなど、建設行政にとって非常に重要なポストを担われてきました。当時から現在にかけて、建設業界の変化をどのように捉えておられますか?

塩見:2010年から建設行政に関わってこられたことは、私にとって非常に貴重な経験となりました。それまでも建設業界には発注側として関わりを持ったことがありましたが、より直接的に建設行政に関わり、関係の皆さまと接する機会が増したことで、より深く業界を知ることができましたし、その課題をしっかりと認識することもできました。それだけに、この業界には深い愛着を持っていますし、不動産・建設経済局長という任を担ったからには、業界の発展のために自身の能力を最大限に発揮して取り組んでいきたいと考えています。10年前と比較してということですが、一言で申し上げるならば“課題となりつつあったことがより深刻化している”という認識です。喫緊の課題は、建設業界が持続可能であるにはどうすればよいか、ということですが、その中心となるテーマはなんといっても担い手の確保。これは業界の皆さまにとって共通の理解かと思います。10年前においても“地域の生活を守る建設企業をどう存続させていくか”“高齢化が進む中で、どう現場の処遇を改善し働き手を確保するか”といった点は議論されていましたが、主に専門工事業者の問題として捉えられていたように思います。現在はその問題がより深刻化し、今や待ったなしの状況です。この10数年の間にも各関係者が努力をされてきたと思いますが、今一度いっそうギアを上げていかねば、今後の建設産業の存続は難しくなるでしょう。だからこそ今、皆さまと共に気持ちをひとつにして課題にあたっていきたいと思っています。

谷脇:おっしゃるとおり、担い手の確保という問題は以前よりも深刻化し、専門工事業者だけでなく、元請け事業者を含めた業界全体の課題として浮き彫りになっていますね。

塩見:その一方で、当時はダンピングという問題が大きく注目され、大手企業も含めて経営状況も非常に苦しいものがあったかと思います。また、社会的にも批判を受ける問題が少なからずあったかと思いますが、それがこの10年ではかなり改善し、良い方向に向かっていると捉えています。将来にむけた改革へチャレンジできる環境が整ってきたとも感じますので、このタイミングだからこそ、皆さまと共に力強く行政を進めていけると感じています。

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