特集
建設DXで働き方改革をどう実現するか?
日本の建設業は、少子高齢化によって生産年齢人口が今後も減り続ける一方、時間外労働の上限規制が厳格化された「2024年問題」という課題が突きつけられています。その解決策として注目されているのが建設DX(デジタル・トランスフォーメーション)です。これまで人手に頼りすぎてきた建設業の仕事を、様々なデジタルツールを駆使して大幅な効率化を図り、より短い時間、人数で従来と同様の質・量の仕事をこなすことを目指すものです。建設業に携わる関係者全員が、建設DXに取り組み、生産性向上と働き方改革を実現するための方法を考えてみましょう。
【なぜDXが注目されるのか】
人頼みの現場仕事は「ぜいたく」過ぎる時代に
インターネットや産業用ロボットなどによる自動化が進んだ今、自動車や家電製品の工場では、多くのロボットが働き、人間の手によるものづくりは、ごく一部になってきました。一方、建物や土木構造物などを造る建設業の仕事は、数十年前から基本的にはあまり変わらず、今でも現場に多くの人が集まって、鉄筋や型枠、生コンクリートなどの素材から、職人さんの手作りによって作業が進められています。
● 建設現場ではいまだに多くの人手に頼った方法で、仕事が進められている
しかし、今後はこうした人間に頼った建設業のものづくりは、ぜいたくすぎて、続かなくなることが明らかです。というのも、日本では今後、建設業を支える15歳から64歳までの「生産年齢人口」が、減少の一途をたどることが確実だからです。
下のグラフは、平成27年版の厚生労働白書に掲載されたもので、わが国の人口推移を予測したものです。日本の人口は平成20年の1億2808万人をピークに、その後は減少の一途をたどっています。一方、生産年齢人口はそれよりも早く1990年代半ばをピークに減少に転じています。たとえ外国人労働者が入ってきても、焼け石に水で、人手不足は22世紀以降も減少を続けるのです。
ロボット導入で建設業を逆転した製造業
そこで、最近、ますます聞くようになったのが「労働生産性」という言葉です。労働者1人が1時間当たり、何円の付加価値を生み出すかという「付加価値労働生産性」は1980年代まで、建設業は他産業を上回っていました。ところが1990年代以降、建設業は製造業に逆転され、今では倍近くも離されています。その大きな理由は、製造業は設計には従来の2次元図面に代わって3次元CADを使い、衝突実験なども数値シミュレーションで行うようになり、製造には産業用ロボットを導入して、人手による作業をどんどん減らしていったことにあります。
建設DXの基本戦略は時短と省人化
建設業の生産性向上を実現するためには、1人当たりの労働時間を減らす「時短」と、仕事を行う労働者の数を減らす「省人化」の両方を進めていくことが基本的な方法となります。その具体策としては、省人化はロボットやAI(人工知能)など、人間以外のものに仕事をさせること、時短は徹底的にムダな時間を省くことと、人間が作業するスピードを上げることになります。
つまり、肉体労働はロボットに、頭脳労働はAIにできるだけ任せ、移動や手待ちなどのムダな時間は徹底的に省き、人間はデジタルツールなどを使って能力を“超人化”する、というのが、建設DXの基本戦略となるのです。
- ● 労働生産性を上げるためには、デジタルツールを活用して人数と労働時間を減らすことが基本戦略となる(資料:筆者)