特集

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2020年5月号 No.518

写真家 山崎エリナ ×建設業

幻想的な光景、懸命な仕事風景、人間味あふれる瞬間まで

佐々木 こちら(写真5)は一転して、モノクロの写真ですね。


山 崎 写真家として、より「人間」に焦点を当てた作品にしたいと思って、色に引っ張られないようあえてモノクロで表現しました。これは新潟の現場で、海沿いの線路の石を整える作業風景です。海からの風や雪が吹き付ける中、たくましく作業されていました。ちょうど雪がやんで作業を始められた瞬間を撮ったものなんですが、シャッターを押したとき、ふと絵画の『落穂拾い』のような幻想的な魅力を感じた一枚です。
佐々木 本当に『落穂拾い』を思わせる、なんとも心を惹きつけられる写真です。モノクロになることで、より印象を深めている気がします。「人」を見せたいという山崎さんの狙いがうまく出ているということですね。
山 崎 こちら(写真6)は反対に、40℃を超える猛暑の中での作業でした。がけ崩れがあった場所を補強しているシーンなんですが、仕事に挑む勢いが「かっこいい!」と思って。たとえばこどもたちの目から見ても、この雄々しい表情や気迫のこもった様子は魅力的に映るのではないでしょうか。


佐々木 しっかりと歯を食いしばって懸命に作業する空気が伝わってきます。こちら(写真7)はまた違った雰囲気の一枚で、現場の女性を正面から撮っていますね。


山 崎 20代の女性の現場監督で、一生懸命走り回って仕事をされていたのを覚えています。そんな姿を真正面で撮りたかったんです。この写真をパネルにして掲示したら、いろんな先輩から声をかけてもらったと喜んでくれて。社内の方にも頑張る姿を発信できたのが嬉しかったです。女性の活躍という点にも注目して撮った一枚ですね。
佐々木 そうした姿を記録することは本人のモチベーションアップにもつながるし、周りにもいい刺激になりますね。こちら(写真8)はさらに現場の方の表情に寄った写真ですが、映画俳優かなと思うくらい素敵な笑顔ですね。


山 崎 ちょうど仕事の手を止めて、談笑する瞬間を撮影できた一枚です。それまではひたむきに黙々と作業されていたんですが、ふと日常に戻った一瞬をうまくとらえられました。真剣な表情から一時離れたときに垣間見える人間味あふれる瞬間というのか…。そうした魅力もまた、伝えていきたいポイントですね。

(写真5〜6 写真集『Civil Engineers 土木の肖像』より4点転載)

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