特集

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2020年2月号 No.515

建設業の魅力を伝えるために今すべきこと

 取組事例 CASE2 大幸建設株式会社 

〈Company Profile〉
埼玉県川口市を拠点に営業を行っている、型枠工事の専門業者。主にマンションやオフィスビル、学校、病院などの新築工事に携わるほか、近年は耐震補強工事や改修改築工事も積極的に手掛けている。

採用は人材確保のゴールではない
離職させないために“働かせ方改革”を推進

型枠工事を専門に行う大幸建設株式会社が掲げる採用活動のモットーは、「採用したら辞めさせない」。3年前までは地元・埼玉県内の高校からの入職者がいなかった同社の、高校生を入社させる/離職させないための施策とは何だったのでしょうか。その工夫と企業努力に迫ります。

年3回の学校訪問を重ね先生方との関係性を築く

同社が本格的に高校生の採用活動を始めたのは、今から3年前です。当時はまだ学校と関係性が築けていなかったこともあり、学校推薦枠には入れず人材確保は難航。なんとか高卒入職者を――そう考えた代表取締役会長の大久保さんは、「この学校の生徒に入社してほしい」といった“ターゲット校”を定めて、重点的に関係性を高める努力をしました。

ターゲット校の対象は、工業高校・普通科を問わず、埼玉県全域の高校。

「多い年には20校ほどありましたが、最近は15校ほどに絞りました。高卒入職者に必要なものは、建設業に対する知識よりも、やる気があること。工業高校を卒業したとしても職人としてはゼロからのスタートです。3年もすれば工業高校卒と普通科高校卒の差はまったく感じられなくなります」と言うのは、人事労務顧問の木戸さん。

また、学校訪問をするタイミングも戦略的に考え、年3回を基本にしています。

「最初は、新年度になってすぐの頃。4月の後半からゴールデンウィーク明けにかけて、主にその年の3年生の傾向をリサーチします。進路決定のための三者面談が6月にあるので、就職の方向性が決まる前に弊社のことをアピールしておきたいという意味があります。残りの2回は、求人票を持って行く7月と、二次募集をかける9月下旬から10月上旬にかけてのタイミングです」(木戸さん)

学校が安心して生徒を送ってくれるようになるまでには、少なくても3年かかると見込んで、地道な訪問活動を繰り返してきた大久保さんと木戸さん。3年目にあたる今年、“ターゲット校”から、入職者の出た“実績校”となった学校も出てくるなど、少しずつ手応えを得ているといいます。

左:代表取締役会長 大久保 幸二 氏  右:人事労務顧問 木戸 勝彦 氏

高卒入職者の初任給を増額休日出勤手当など条件面を改訂

ターゲット校への訪問では、先生から建設業界の印象や課題もヒアリング。「給与や休暇などの水準が他業界よりも低い」という先生からの言葉を受けて取り組んだのが、高卒入職者の給与の見直しです。日給制が基本となる建設業界にありながらも、3年ほど前から月給制を採用。その額も4大卒生並みにアップし、安定的な給与体系を示しました。一般的に見ても好待遇となり、当初の狙い通り、高卒入職者を増やすことに成功しました。

大企業であればその上の先輩社員たちの給与も上げないといけないところですが、新卒社員の初任給だけを格別に上げました。当社は小規模な会社なので、こういうときにとても小回りが利くんです」と木戸さんは語ります。

さらに、業界全般に取り組みが遅れていた休日のルールづくりを推進し、社内規定を改訂しました。

「土曜日は月に1回は出勤となりますが、それ以外は基本的に土日が休日になります。工期の問題でどうしても出勤しなければいけない場合には、休日出勤手当を支給。労働条件の向上は本人にとってもプラスな話なので、社員のモチベーションアップにつながったと感じています」(木戸さん)

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