特集

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2023年10月号 No.552

建設系専門高校の今を知る!

生活の根幹となるインフラを支え、地域社会の安全・安心を守る建設業。その担い手確保と業界の活性化の大きな鍵となるのは、これまでも多くの若き力を育んできた建設系専門高校です。少子高齢化やグローバル化、高度情報化などを受け、今までにないほど社会が変化する中で、高校生たちの価値観はどのように変化しているのか?その可能性をどのように広げていけるのか?教育現場の第一線で教鞭をとる2名の先生をお招きし、本財団 谷脇理事長との意見交換を実施しました。

 

東 君康 先生 ・・・(以下 東)
岡田 篤 先生 ・・・(以下 岡)
谷脇 暁 ・・・・・(以下 谷)

就職か進学か。変化する生徒・保護者の志向。

谷)本日は教育現場で日々生徒に向き合われているお二人にお越しいただきました。以前より建設系専門高校からたくさんの人材が建設業界に入り活躍されてきたわけですが、近年は少子化の影響が色濃く、生徒の数そのものが減少していることに加え、殊に建設産業は若い世代の人手不足が顕著です。まずは、最近の建設系専門高校の生徒の特徴や進路状況などを伺いたいと思います。

東)はい。私は30年間、東京にて教鞭をとらせていただいていますが、30年前と今を比べると、特に大きく変わったのは保護者の考え方や価値観だと思います。進路指導の面から言いますと、建設業界に入る前に“まずは進学”という選択肢をとる生徒、あるいは保護者の希望が多くなっており、それはデータにも表れています。30年前はそうした生徒は数える程度だったのですが、都市部の生徒、保護者の考え方というのは少しずつ変わってきている印象です。

谷)なるほど。岡田先生は宮崎県のほか、他の県でも教鞭をとられていますね。岡田先生の感覚としてはいかがですか?

岡)はい。私はゼネコンで4年間勤務した後、長崎県、佐賀県などで教鞭をとり、4年前に地元の宮崎に戻ってきました。宮崎の場合、建設系専門高校に入学する生徒の特徴としては、学科で学習する資格や勉強の内容を理解して入学するケースが多い印象です。進路先は就職が約6割、その他4割が公務員や進学といった形です。リーマンショック直後と比較すると約5倍の求人が来る状況ですので、生徒にとっては就職するほうが有利だと思うようです。ただ最近は、公務員を希望する生徒・保護者も多くなったほか、コロナ禍を経て就職希望者の地元志向というのが非常に強まったとも感じます。

谷)進学希望の生徒は、大学の工学科や専門学校などを希望されるのでしょうか?

岡)そうですね。宮崎の生徒は、やはり九州エリアでの進学が多いです。その後は地元に戻る者もいますが、そのまま県外へと出ていくケースも多いです。

 

 

谷)宮崎県での就職先に関するデータを拝見したのですが、地元の建設会社に就職する方と県外の建設会社に就職する方と、ほぼ同数ですね。同じ建設業界でも、地元ではなく県外に行くというのは、どのような動機からでしょうか?

岡)いわゆる規模の大きなものづくり、スケールの大きな現場に携わりたいと考えた際には、県外や都市部の企業へ行く生徒が多いですね。自身のやりたい仕事に合った企業を選択しているのだろうと思われます。

谷)なるほど。希望される就職先としてはどういった傾向がありますか?保護者の皆様の希望なども関わっているかと思いますが。

東)私が教えている生徒の中では、大体3つのパターンに分かれます。ものづくりが好きな生徒は“自分で作りたい”という気持ちが強いので、直接携われるような仕事に進みます。もう1つは、コンピュータによる処理やデスクワークの仕事を望むパターン。そしてもう1つが、人や現場を管理する施工管理業務の道。最近の傾向としては“人をまとめる仕事はやりたくない”と感じる生徒が多くなってきており、施工管理業務を望む生徒が非常に少なくなってきています。それもかなり深刻な問題だと捉えています。学校では施工管理の資格取得に向けた勉強には取り組みますが、グループとして何かしら作業をさせることはあっても、現実論として仕事を管理したり、人を取り仕切る業務というのは、授業の中では取り入れられていないのが実情です。

谷)宮崎県も同じような状況でしょうか?

岡)宮崎県の場合は技術職を希望する生徒が多く、そうした生徒を育成する学校が多いため、施工管理の道に進む生徒も多いです。

谷)大小様々な現場に関わる地場の建設会社の場合、採用する側としても現場管理ができるような人材を育てたいという想いが強いように感じます。そうした想いと環境があることも、施工管理を選ぶ生徒の多さにつながっているのかもしれませんね。

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