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2019年11月号 No.512

しんこうTODAY 建築・土木技能体験フェア「技フェスタ」開催

 だから建設という仕事に惚れたんだ!   

 矢作建設工業㈱

 紀伊 保さん

 

 


受賞者のコメント

ゼネコンに就職してからの32年間、私は建設業の虜になっています。
建設業はしんどいことも含めて、やりがいが多い仕事ですが、昨今ではこの業界に入職する若者が減っていることもあり、私は、中学生や高校生を対象に建設業の意義や魅力を発信する活動を精力的に行っています。今回のコンクールも魅力発信の一環として応募しました。
中学校や高校での出前授業では、実際に型枠を組む、学校のタイルを貼り替えるなどの施工体験をしています。最初は気乗りしていない生徒も、手を動かすうちに、だんだんと目がキラキラしてきます。自分たちで作業をして作り上げる達成感や、自分の通う学校の一部を作ったという誇らしさを肌で感じる。これこそが、建設業の魅力です。私自身、建設業への愛はまだまだ止まりそうにありません。これからも、この仕事の魅力を発信し続けていきます。


僕は32年前に現場監督としてゼネコンに入社した。時代が流れ、若者の職業観というものも随分変わってきた。厚生労働省の調べによると、大学を卒業して就職した若者が3年以内に離職する割合は全体の30%。高卒で就職した若者の離職率は全体の40%と言われている。中でも建設業に至っては高卒の早期離職は全体の47%だ。彼らにとって仕事の意味や意義、働くことの尊さという価値観が大きく変わってきているのではないだろうか。多くの若者が仕事の目的や志を見出せないまま転職を繰り返しているように思えてならない。

考えてみると、どんな仕事にも感動もあれば辛いこともある。あれがいい、これが足りないと他の仕事や他人と比較してばかりでは、必ずミスマッチが起こる。いつの時代も不満や不幸の元凶は、他人との比較から生まれるものだ。その仕事にやりがいを見出さない限り、離職は止まらないだろう。

しかし、彼らの価値観を一方的に否定し、別の職業観を押し付けても問題は解決しない。仕事に対する夢や希望というものは、外から与えられるものではないからだ。

だからこそ、僕はもっと若い世代に建設業の魅力を伝えることが大事だと考えている。最近では3K、5Kと揶揄される建設業に入職してくる若者は極めて少ない。そこで、僕は、出前授業と称して、中学や高校に精力的に話をしに行っている。昨年だけでも職業体験を含めると25回、延べ649人に話をしてきた。

出前授業として学校に赴くのだが、そもそも働くということに実感のない生徒たちに、いきなり建設業の話をしてもまず聞いてくれない。共学の普通高校には女子生徒もいるのだが、彼女たちは建設業の話になんて、まったく興味はなく、僕は100%アウェイ状態だ。

こんな状態で、スライドを使って、「建設業のお仕事」の内容を逐次解説しても、誰も聞きたがらないだろう。そこで僕は、最初にNHKのプロジェクトXでも取り上げられた東京タワーの建設について話した。何をつくったのか、どうやってつくったのかではなく、何のためにつくられたのか、当時の職人さんたちがどういう思いで、命を賭けてまでして東京タワーを建てたのか、その志について話した。仕事の内容ではなく、仕事の意義や建設に携わった人達の「思い」を伝えたのだ。

東京タワー建設は、いわば戦後間もない国家プロジェクトであり、誰もがそんな大きな仕事に携わることができるわけではない。しかし、仕事というものはプロジェクトの大小に関係なく、そこに大きな意義と感動があるということを今度は現場の実体験で伝えた。

「鉄道の切り替え工事。昨日まで地上を走っていた列車が、今朝から自分たちがつくった高架橋の上を走るんです。その瞬間は、なん回経験してもシビレます。」「建物が完成して通電試験をしたとき、照明が一斉についたマンションを見て、なんだか建物に命が吹き込まれたような気がしました。」「私立高校のクラブハウスをつくった際、こちらから何も言っていないのに完成した建物の屋外廊下を、生徒さんたちが、わざわざ靴を脱いで手に持って入ってきてくれたとき、感無量でした。」「何日も昼夜を通して掘り続けてきたトンネルが貫通したとき、もうもうと舞うホコリの中に日の光が差し込んだ光景を見た瞬間に全身に鳥肌が立つほど感動しました。」「超突貫のトンネル災害復旧工事。もう無理だと思ったけれど、その場に集まったみんなが、弱音も損得勘定も捨て去り、不眠不休でやり通しました。開通予定前夜の午前3時40分、最後の仕事が終わった瞬間に、その場に居合わせた工事関係者たちの中で誰からともなく拍手が沸き起こり、涙がこぼれました。」

これらは、すべて僕たちが肌で感じた実体験だ。実体験には有無も言わせない説得力がある。下を向いていた女子生徒が顏を上げて聞いてくれる。やんちゃな男子生徒を注意していたその先生たちが、真剣に聞いてくれた。人は、表面的な話しになんて感動しない。苦労を乗り越えた事実に触れたとき感動せずにはいられないのだろう。

僕は、高校生たちに仕事で感動することの素晴らしさを伝えた。それと同時に僕自身がこの建設という仕事を愛してやまない理由が明確になったのだ。それが「感動」だ。

感動するかどうかは、仕事の規模や立場、あるいは仕事の成功や失敗かではなく、自分がどれだけ一生懸命やったかで決まるのだと思う。どんな仕事でも全力で取り組めば、そこには必ず達成感や感動が生まれるのだ。

そして、スケールが大きく、成果が形として残る建設業は、その感動の大きさも達成感も地球規模だ。いままでつくってきた構造物の数だけ感動があった。その数々の感動こそが、僕がこの世に生きた証そのものだ。だから僕は、この建設という仕事に惚れたんだ。

 

◎本誌記事の無断転載を固く禁じます。

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