FOCUS

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2023年11月号 No.553

あえて正解は与えない!多様な経験を通じて“自分の人生を自分で生きていく”という実感を深めてほしい!

生徒が進みたい道を
見つけられるようサポート

 同校が2019年度から導入した“浮工得意技コース”は、1年次に共通で各分野の基礎・基本を学びながら、2年次より生徒自身が学びたいコースに進んで専門的な知識や技術を習得していくというもの。3年間の教育を通じてのポイントを伺った。

「1年次から進路への意識を持たせるための時間を計画的に確保し、学期毎に面談をして対話を繰り返しながら、生徒自身がそれぞれの資質や能力、自身の志向に沿った進路を選択できるよう図っています。特に1年次には広く楽しく業界を学べる教材を提供し、チームワークによるものづくりの楽しさを伝えられる実習に取り組んでいます。また本校に求人をいただく企業の皆さまにも、どのような学生が欲しいのか・現場や業界はどう動いているのかといったリアルな状況を伺うとともに、生徒たちの現状をお伝えし、お互いにミスマッチが起こらないよう意識しています」。

 例年、県内外から多数の求人があり、就職率100%を達成する同校。将来に結びつく資格取得のサポートにも意欲的だ。

「測量士補試験と2級土木施工管理技術検定(第一次検定)については、授業の内容を交えながら試験対策をしています。生徒たちも合格に向けて頑張り、良い結果を出してくれますね。入学時にはあまり自信の無さそうだった生徒たちも、楽しみながら学び成長していく過程で、将来の資格の必要性を感じるようになり、3年生になるころには前向きに資格取得に取り組むようになっています」。

 

多くの選択や判断を
通じて成長してほしい

 民間企業を経て教職に就いた松田先生。教員として特に大切にしているのは、“正解を与えるのではなく、物事の多面性や新たな選択肢に気づかせ、考えさせ、判断させる”という姿勢だ。

「生徒の疑問や課題にフラットな目線で向き合いながら、それぞれの人生が豊かになるためにどうすれば良いかをいっしょに模索していきたいと思っています。そのために気をつけているのは、“答えを教えすぎない”ということ。自らの頭でたくさんの選択や判断をするということは、自分自身を知る近道にもなります。他人や環境のせいにせず、主体的に動き、考え、判断する。そうした経験を繰り返すことで、“自分の人生を自分で生きていく”という実感を深めてほしいです。また、今はSNSなどでの些細な言葉遣いでも問題に発展しやすい社会。これを言われたら相手はどう思うか、この立場から見たらどう思うか…。そうしたことも物事の多面性を学んだり、自分自身で深く考える癖をつけることで捉えていけるのではないかと思います」。

 松田先生が力を入れて取り組む環境工学基礎においても、生徒同士での対話やディベートなどの機会を積極的に設け、多面的な見方を養っている。

「環境工学基礎は地球規模の環境問題から身近な住環境まで、社会のあらゆる課題を考える科目であるため、現実社会とリンクさせ、対話をしながら進めていくことができます。生徒同士でディベートを重ねることで、異なる意見に耳を傾けたり、自分自身の意見を主張することができ、多様な視点や考え方・伝え方などを体験的に学んでいけます。そうした多くの経験をさせていくことが、私たちの役割なのではと思います」。

 今後の目標は“国家資格である測量士補試験と2級土木施工管理技術検定(第一次検定)の全員合格!”と掲げる松田先生。

「資格取得は生徒たち自身の成功体験につながるもの。本校で学んだことに自信を持ち、胸を張って社会に出ていってほしいと思います」。

 


地域の課題解決に貢献するものづくりボランティア活動・テクノボランティアの取り組み。様々な形で社会貢献を図ることで、生徒の達成感や学ぶ意欲を高めている。近年には同校の最寄り駅である田主丸駅にて、ほっと一息つけるベンチや、小さなこどもたちも楽しめる顔出しパネルなどを製作・寄贈した

 


2023年7月の記録的な大雨により校舎1階などが浸水。環境デザイン科ではその苦難も、土木を学ぶきっかけとした。「陥没した道路の補修や泥・雑草などの撤去を行いました。通学時に原付や自転車で通る場所でもあるため、そうした場所が自分たちの手できれいになっていく様子を見て、生徒たち自身も喜びを実感していました」

 

若戸大橋(わかとおおはし)

松田先生が故郷・北九州市のシンボルとして挙げたのは、洞海湾に架かる赤い躯体が目を引く、長さ627mの若戸大橋。1962年の開通当時には東洋一の長さと謳われた日本の長大吊り橋の先駆けであり、2022年に国の重要文化財(建造物)にも指定されました。夜間にはライトアップされ、美しい景観を楽しめます。

 

 

福岡県立浮羽工業高等学校

〒839-1233 福岡県久留米市田主丸町田主丸395番地2
WEB:https://ukiha-tech.fku.ed.jp

 

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