ベテランの目から見る
工業教育現場の変化

教員となり、まもなく25年。生徒の特性や授業スタイルの変化も第一線で感じている。

「教科書の内容を大切にし、原理や理論を理解させ、応用力を身に付けさせる。そうした基本的なスタンスは変わりませんが、タブレットや電子黒板などのICT活用が可能になったことで、内容を視覚的にわかりやすく伝えられるようになり、事例紹介や情報共有も容易になりました。ただ一方で、生徒たちの“書く量”が極端に減ってしまった面もあります。人は視るだけでは忘れてしまいやすいので、書いて覚えるということを意識的に促すようにしています。また今の生徒たちは、幼い頃からデジタルデバイスに触れている世代であり、趣向や目標も多様化しています。多くの情報から正しいものを取捨選択し、本質を見抜く力を身に付けてほしいと思います」

新学習指導要領が導入され、“生徒を見る目”の変化も求められている。

「特に観点の1つである『主体的に学習に取り組む態度』を見取るため、昨年度よりレポートに自己評価の欄を設け、生徒自身が自らを見つめ直せる仕組みをとっています。『主体的に学習に取り組む態度』とはつまり、探究心を持って自律的に学ぶ姿勢のこと。数値化するのが難しいですが、他教科の評価方法や他校における例などを参考にしながら、適正な評価となるよう改善を図っていきたいと思います」

将来に向けて意欲的に取り組む生徒を、周りも一体となってサポートしている。

「地元企業さまによるi-Construction講習会や現場見学会などは、最新技術や実際の現場を知る良い機会になっていますし、徳島県中小企業家同友会さまにご協力いただいている“社長塾”も、生徒の進路選択に大きなヒントを与えてくださる取り組み。また2級土木施工管理技士（第一次検定）などの資格取得に向けても、徳島県県土整備部の皆さま、徳島県建設業協会阿南支部の皆さまなどのご協力により、講義や模擬試験を実施することができています。私たち教員も希望者に向けて補習を実施しており、学校・地域が一体となって引き続き生徒を力強くサポートしていきたいです」

現場見学会やインターンシップのほか、企業経営者の方を講師に招いた“社長塾”なども開催。「社長塾では、働くことの意義をはじめ様々なお話をしていただいています。先日は地元の伝統産業を海外展開する事業の様子などを語っていただき、生徒も大きな感銘を受けていました。多彩なお話が刺激となり、生徒の成長や進路選択につながっています」

地域の未来、生徒の
未来を支えていくために

専門高校が全国的に減少傾向にある昨今。県内高校の統廃合などを目にしてきた河野先生も、現状に危機感を抱く。

「地方においては、人口減少・少子化が加速度的に進んでいます。普通科志向の高まりもあり、専門高校の在り方はドラスティックに変化している部分がありますが、人口流出や後継者不足による地域社会の存続危機、特に中山間地域における災害復旧やインフラ整備などを考えると、専門高校の役割は非常に大きいもの。徳島県においても産官学が一丸となって、各エリアの建設系学科を堅持しなければならないと感じています」

地域の将来、業界の未来を担っていく生徒に寄せる想いもひとしおだ。

「本校にいる間に、社会で活躍する力をしっかりと養ってほしいです。そのためには、まずは小さなことから挑戦し、自信をつけていくこと。本校の校訓にある“進取”が示すとおり、自ら物事に進んで取り組む精神を身に付けてもらえたらと思います。もちろん生徒だけでなく、教職員もそうした教育の提供に挑戦し続けていくことが大切です。私自身もさらに研鑽を積み、生徒の夢の実現を後押ししていきたいです」

そう語る河野先生の表情は力強く、今後も未来の担い手たちの背中を支えていくことだろう。

ベテランながら“人生の中で今が一番勉強している”と笑顔を見せる河野先生。「私たちの職業は、将来を担う技術者の育成という崇高な使命を有する仕事。誠実に謙虚に、自己研鑽に努め、専門性を高めていくことが大切です。ただ自分自身を振り返ると、若い頃は本当に未熟で…（笑）。教員になってからのほうが勉強量は増えました」

徳島県立阿南光高等学校

〒774-0045　徳島県阿南市宝田町今市中新開10の6
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