FOCUS

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2023年2月号 No.545

感覚を研ぎ澄ませ、いきいきと活躍する技術人へ!積み重ねてきた経験をもとに多くの未来の力を育成

建設に関わる多彩な経験を
工業教育に活かす!

建設業を営む家に生まれた池田先生。大学院では建設材料やコンクリートについて専門的に研究し、民間企業での業務経験もある。

「以前は教員になるとは想像もしていなかったのですが、縁あって“教職に就いてみては?”と声をかけていただき、ものづくりの最前線で働く人たちを育てるのも面白そうという思いが芽生えました。毎年数十人の生徒を育て続けるのは、ものづくり以上に可能性にあふれることではないでしょうか」。

とはいえ、自身の経験を踏まえつつ生徒に教える日々は、試行錯誤の連続だと語る。

「当然ですが、生徒一人ひとりに個性があり、理解の仕方もそれぞれ。同じ科目を教えるにしても、目の前にいる生徒に応じて伝え方や話し方を変える必要があります。自分が高校生だった頃、先生たちはどんなふうに教えてくれていたかな…と意識しつつ、一人ひとりに合った教え方を模索しています。また一言に建設業と言っても、施工する人だけでなく設計する人もいるし、公務員として計画立案の立場で関わる人もいれば、企業に属して様々な役割をこなす人もいる。就職の際にも大切なのは、会社の規模の大小などではなく、いかに自分に合った働き方ができるかどうかだと思います。建設業を深掘りし、自分が何をしていきたいかを考えてほしい、ということは折りに触れて生徒に話していますね」。

課題研究では、国旗・校旗掲揚台の制作に向けて測量や鉄筋組立などに取り組む生徒たちを指導するほか、コンクリート甲子園にも挑戦。
「生徒たちが自分から一歩踏み出せるきっかけを与え続けていきたい」と池田先生

自由度の高い時代だからこそ
大切にしてほしいこと

ドローンを用いた測量や3Dスキャナーでの計測など、現場で活躍する新しい技術を積極的に取り入れ、実習への活用を図っている。地元の建設会社に研修を願い出て実践的なドローン技術を学ぶなど、今なお研鑽を積む池田先生の視点から、次世代の土木技術者に必要な素養を伺った。

「かつては設計書や規格通りのものづくりが最も重要視されていましたが、昨今は性能照査型設計法や総合評価型の入札などが導入され、より柔軟な設計・施工が可能となるなど、ものづくりの自由度が大きく増しています。先進機器の発達も手伝って、企業や個人の技術がすごく反映されやすい時代になったのかな、と。そうした自由度の高い時代だからこそ、基礎・基本をしっかり押さえ、それを応用できる力が重要だと考えます。そのベースとなる部分を育てるのは、まさに私たち工業高校の役割です。あわせて生徒に大切にしてほしいのが、自身の感覚を研ぎ澄ませるということ。言葉で表しづらいのですが、様々な数式や計算を習得する一方で、それを頭だけで理解するのではなく、“これくらいの長さ”“これくらいの重さ”といった肌感覚で分かる力を養ってほしいです。実物と照らし合わせながら地道に学ぶしかないのですが、そうした感覚が将来的に現場での仕事や他者とのコミュニケーションなどにおいて役立っていくものと思います。自動化ツールやテクノロジーに振り回されず、五感で考え仕事ができる人間になってもらいたいですね」。

生徒に対しては、失敗を恐れず挑戦してほしいとエールを送る池田先生。積み重ねてきた経験をもとに、未来を支える新たな力を育み続けている。

「現場で用いられている先進技術や最新のICT施工にはできる限り触れさせたい」と話す池田先生。
ドローンの操縦体験や点群データの取り込みなどを通して、生徒たちの実践的な力を伸ばしている

 

石井樋(いしいび)

池田先生の生まれ故郷にある石井樋は、“治水の神様”といわれた成富兵庫茂安により築造された利水・治水施設。佐賀城下の農業用水や生活用水を確保するとともに、水害を防ぐ働きも備えていたそう。「当時の最先端技術で造られた、様々な工夫が凝らされた土木構造物です」。日本最古の取水施設ともいわれ、2006年に復元がなされています。

 

 

佐賀県立鳥栖工業高等学校

〒841-0051 佐賀県鳥栖市元町1918
WEB:https://www.education.saga.jp/hp/tosukougyoukoukou/

 

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