FOCUS

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2022年9月 No.541

自信をつけ、興味を深めれば、自ら力を伸ばしていける!「自分で考え、行動できる」生徒を育む取り組み

基本は“授業のみ”
いかに集中して取り組めるか

2級土木施工管理技術検定学科試験や測量士補資格の高い合格率も、同校土木科の特徴の一つ。補習などでカバーしているのかと思いきや、意外にも“授業のみ”が原則と話す山崎先生。

「資格勉強に限らず、いかに授業に集中できるかがポイントです。ただし生徒自身が問題を解く楽しさや喜びを得られなければ、集中して取り組み続けることなどできません。その中で意識しているのは“中間よりやや上”のレベルを想定した授業。まずは、ちょっと頑張れば解ける問題を投げかける。それを解くことで自信がつき、より分野への興味が深まり、授業に集中する──そうした日々の積み重ねが『自分で考え、行動できる』子を育み、生徒たちの切磋琢磨にもつながると考えます。最近はタブレットを活用し、Googleに問題や解説をアップして、生徒たちが繰り返し自主学習できるよう図っています。あわせて鍵になるのは、クラス内に“勉強する”という雰囲気がつくれているかどうか。土木科の先生方とも、生徒のこと・土木科の将来のことなどを話し合い、いっしょになって取り組んできたことが、就職内定率や高い資格合格率といった結果につながっていると感じています」

高校生にとっては超難関といえる測量士試験の合格者なども輩出してきた山崎先生。そこにもこれまでの経験が活きている。

「以前に受け持ちクラスの生徒が測量士試験に挑んだのですが、私に教える力が無く、合格に導くことができませんでした。これではいけない!と一念発起し、私自身も測量士試験に向けて猛勉強して合格を果たし、その経験を生徒たちに還元しています。以後は毎年のように測量士試験の合格者を出せており、大きな糧になっています。今後も土木科の先生方とともに、そうした生徒を一人でも多くバックアップしていきたいです」

2級土木施工管理技術検定学科試験や測量士補資格において、工業生合格率や
一般・社会人を含めた全国合格率と比較しても高い合格率をマークする土木科。
「資格取得のための補習は行わず、あくまで授業とタブレットを活用した課題の繰り返し。
効率的な学習に取り組むことは、教員側の働き方改革にもつながっています」と山崎先生

 

※公益社団法人全国工業高等学校長協会データをもとに作成

 

『土木科に入って良かった』と
感じてもらえる喜び

定員割れを起こす公立校も少なくない昨今だが、土木科は3学年とも定員割れを起こさず、安定的に入学希望者を集めている。新たな後輩が生まれるきっかけとしても、生徒たちの力が活かされている。

「中学生対象の体験入学では、主体となるのは教員ではなく本校の3年生。コンクリート破壊試験の実演やクイズ形式でのコミュニケーションで、工業高校で学ぶ内容をわかりやすく伝えてくれます。同伴される保護者の方や中学校の先生方にも、取り組みがイメージしやすいと評判をいただいています」

生徒の中には志望学科への入学が叶わず、結果的に土木科を選択する子もいる。そうした生徒も、授業や実習を通して楽しさを覚えていくようだ。

「全く興味が無いまま土木科に入ってきても、土木の世界や意義を知り、苦手を克服していくことで面白さを覚え、将来の夢を膨らませる生徒もいます。そのうちの一人は、数学が苦手ながらも努力して測量士補の資格取得まで至り、卒業時には『土木科に入学して本当に良かった』という言葉をくれました。そうした気持ちを知ると、大きなやりがいを感じます」

そんな山崎先生が大切にしているのが、中学校のときの恩師の言葉だ。

「教員採用試験の受験前に恩師とお会いした際、教育者の方針として挙げられたのが『百の理論より一の実行』という言葉。さまざまな解釈がある言葉ですが、私としては『まずは、やってみる』ことだと認識しています。生徒を相手にするとき、ああしようか、こうしようか、と考えているうちに状況は刻一刻と変化します。検討することも大事ですが、スピード感をもって一歩踏み出すことがなによりも大切だと思います」

今後はドローンを活用した地形測量実習などにも積極的に取り組みたいと話す山崎先生。

「地元企業さまからの機材の寄付、技術提供をいただき、ようやく実現に至ります。土木科の先生方と連携し、それぞれに知恵と工夫を凝らしながら、より良い学びを生徒たちに提供していきたいです」

 

沈下橋(四万十川)

山崎先生が選んだのは、四国最長の河川・四万十川の風物詩である沈下橋。「増水の際などにあえて『沈む』よう設計されたというところに、人間の知恵や発想のスケールを感じます」

 

 

高知県立高知工業高等学校

〒781-8010 高知県高知市桟橋通2丁目11-6
WEB:  https://www.kochinet.ed.jp/kochikogyo-h/

 

◎本誌記事の無断転載を固く禁じます。

 

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