FOCUS

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2022年4月 No.537

教員歴36年を迎えるベテラン先生が気づいた、個性的な授業を支える「基礎」の大切さ

何かのきっかけで人は変わる。
内地留学で学んだ人生の可能性

長い教員生活の中で、大きな転機の一つになった出来事がある。2002年の岡山大学への内地留学(現役の教職員が大学等で研修する制度)だ。1998年に津山地域で起きた台風による氾濫の数値解析をテーマに、「1日10時間。大学の受験勉強の時よりも勉強しました」と振り返るほど、研究に没頭した。日々、大学教授の厳しい指導を受けながら研鑽した経験のおかげで、専門書や論文を的確に読み解く力、学んだことをアウトプットする力が飛躍的に向上したという。

1年後、論文を書き上げて内地留学を終えた早瀬先生は、以前から研究を進めていた土木系情報教育に関する論文を発表し、その後も定期的に情報教育に関する論文を執筆。のちに教科書の内容改訂につながるほどの影響を与えることもあった。

「この経験から私が学んだのは、人は何かのきっかけで大きく変われる、ということ。これは教員にも生徒にも通じることです。生徒たちには“一生懸命頑張れば、どんどん世界は広がるよ。君たちも、突き詰めて取り組めば見えてくる世界があるよ”と伝えていますし、実際に生徒がすごく成長する瞬間をたくさん見てきました。だから、今はできないことがあっても、何かのきっかけでできるようになると信じて教え続けています」

衛星画像を用いた岡山県の様々な地域の観察・検証(左)や、有限要素法によるトラスの力学解析プログラムをモニターを使って紹介(右)。
今学んでいる内容をどのように使うかなど、実践的な視点も養う

高校生ものづくりコンテスト測量全国大会(2018年)前日の練習風景。本番に向けて据え付け練習にも熱が入る

道具探しは工業の原点。
自分の身体に合う道具を見つけよう

土木科の教員だけではなく、いくつかの学科で経験を積んできた早瀬先生。「若い先生たちの授業の工夫には敵わない」と笑いながらも、長年の教員生活を振り返り、若手・中堅教員へ、こうアドバイスを送りたいという。

「最近の若い先生たちの授業は展開に工夫が凝らされていて、とても面白いと感じています。だからこそ、バックボーンとなる学問や教材研究を怠らないことが大事です。何事も基礎となる“型”があってこそ個性が生きると思うので、幅広く指導力を身に付けた上でオンリーワンの技術を磨くことをおすすめします」

では、生徒に対して願うことは? と問うと、早瀬先生の答えは「きちんと学ぶ姿勢を身に付けること」、そして「自身に合う文房具を探すこと」だった。

「日々の授業をきちんと学び、理解に努める。その理解の積み重ねが自信を生み、応用力にもつながります。学びの原点は、まずそこにあると考えます。そのうえで生徒には、自分の身に合う文房具を探してほしいです。道具は発想を広げる大切なツール。手に馴染むペンを持つと、自ずとアイデアも浮かびます。何より、自分が欲しいツールを見つけることは工業の原点。トンネルを掘る際、どのように掘るかで道具も変わります。自身で考え、こしらえる力をぜひ身に付けてほしいですね」

 

加茂川

実家の近所を流れている「加茂川」。今考えると危険なので真似しないでいただきたいのですが、ちょっとした洪水が起きると子どもながらによく見に行っていました。私が洪水解析に夢中になった原点は、もしかすると加茂川なのかもしれません。

 

 

 

岡山県立岡山工業高等学校

〒700-0013 岡山市北区伊福町4-3-92
WEB:  http://www.okako.okayama-c.ed.jp

 

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