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2022年4月 No.537

教員歴36年を迎えるベテラン先生が気づいた、個性的な授業を支える「基礎」の大切さ

120年以上の歴史を持つ岡山県立岡山工業高等学校では、7つの専門科で未来のスペシャリスト育成を目指し、基礎・基本の学びを大切にしています。土木科では2級土木施工管理技術検定において、2020年度(40名)・2021年度(37名)と2年連続で受験者「全員合格」を達成するなど、高い指導力にも定評があります。今回は、教材研究・開発を軸に特色ある授業を展開し続けてきた土木科の早瀬一英先生に、教育に対する想いを伺いました。

紙パックのゴミで全水圧を教える!?
教材開発の肝は生徒の関心を引き出すこと

秋田大学鉱山学部土木工学科を卒業後、1986年に高校理科の非常勤講師として教員キャリアをスタートさせた早瀬先生。その後、数学や理科の非常勤講師、機械科の教員を経て、専門の土木を担当するようになったのは1993年のこと。専門とはいえ現場経験がない中、いかに生徒に飽きさせない授業ができるかを試行錯誤して辿り着いた一つの答えが、教材の研究・開発だ。

「授業で取り扱うテーマに対して、身の回りで教材になりそうなものを探してみるんです。例えば水理の授業では、身近にある紙パックを使います。紙パックの上部をハサミでカットして即席の器にし、それでバケツの中の水をすくって“この水の重量は?”と質問する。そこから全水圧の話につなげると、ただ理論を説明する時よりも生徒は面白がって聞いてくれるんです」

地域に根ざした人材育成は多くの工業高校が注力する取り組みの一つだが、身近なものを教材に取り上げる早瀬先生の授業は、まさに生徒の学問そのものへの興味関心を高めるだけでなく、地元のことを知るきっかけにもつながっている。

「土木業界でGISが話題になり始めた頃は、地図をコンピュータに取り込む方法や、その際にどんな情報が必要なのかを考えていました。学校のGISに消火栓や上水道を加えて防災教育に発展させたり、地元市町村の下水道マップをGISにして下水道システムを学ぶ機会にもしました。また、リモートセンシングの技術を用いて、近くの石灰岩地域を画像で解析するなど、衛星写真で近隣の土地を調べてもらったこともありました。日常的に見ている地元の景色とは違うものが見えてくるのは面白いですよね」

生徒に興味を持たせ、効率的に進めることを常に考えているという早瀬先生。もちろん、単なる面白い授業で終わらせないために、時には専門書や論文を参照しながら扱うテーマを深掘りし、自分の言葉で説明できるようにしておく。それでも分からないことがある時は、他の先生や大学の教授に教えを請うこともあるのだという。

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