特集

特集
2017年11月号 No.493

災害から地域を守る~建設業だからできること~

平成29年7月九州北部豪雨の災害対応
地域の建設業者の力を結集し復旧作業に尽力

福岡県土木組合連合会朝倉支部

平成29年7月に起きた九州北部豪雨では福岡県朝倉市や大分県日田市において集中的な豪雨により土砂災害が発生し、甚大な被害をもたらしました。このような想定外の災害の中、昼夜を問わず応急復旧に尽力したのが地元の建設業の皆さんです。突然起こる災害に対し地域建設業はどのような役割を担い、行動したのか、福岡県土木組合連合会朝倉支部の平田立身(ひらた たつみ)支部長にお話を伺いました。


平田立身支部長

降り続いた豪雨、続々と入る復旧応援要請

朝倉支部のある甘木地区は、雨は激しく降ってはいたもののあまり被害はありませんでした。被害が集中したのは荷原川(甘木から車で約15分ほどの場所)から大分県日田市にかけてです。県からは5日の夕方頃に、夜以降危ないかもしれないということで待機要請がありました。実質的に活動したのは6日になってからのことでしたが、ここまで大きな被害になるとは思いませんでした。朝倉市は5年前にも豪雨の被害があり土砂災害が発生しましたが、とにかく今回は流木の量も多く、5年前と比べて数倍もの規模でした。市内にある寺内ダム、江川ダム、施工中の小石原川ダムが大量の土砂や流木を堰き止め、下流域の被害軽減に繋がりました。もしこれらのダムがなかったら被害はもっと拡大していたでしょう。

昼夜を問わず続けられた復旧作業(写真提供:国土交通省 九州地方整備局)

発災当初は情報が錯綜し混乱も

当支部は現在27社の企業が所属しています。東峰村、朝倉市、筑前町の3つの地域に分けて不定期ですが、地域の自主パトロールなども行っています。福岡県朝倉県土整備事務所とは「風水災害時の緊急対策工事等に関する協定」を締結しており、地域で災害が発生した場合はその場所に一番近い企業へ直接県から連絡が入り、対応するようにしています。今回の復旧作業では朝倉支部の会員企業のほか協定を結んでいる42社が対応にあたりましたが、発災当初、情報はかなり錯綜しました。会員には県や市などから直接連絡があったことで、同じ場所に複数の会社がバッティングするようなこともありました。また道路啓開作業と同時に消防、警察、自衛隊等が人命救助のための捜索を担うのですが、発災直後は混乱もあったと思います。10日程が経ち、市の災害センターが情報を一元化するようになってから活動がスムーズになったと感じました。

県外からの応援も

現在(9月末取材時点)、主要道路の復旧は完了しており、8月末には崩壊土砂や流木が多量に発生した赤谷川流域(杷木松末地区)などで国による直轄工事が開始され、復旧に向けて動き出しています。
しかしここに至るまでには、建設業各社の不眠不休の働きがありました。私自身も8月末まで作業を殆んど休むことができませんでした。
復旧対応にあたった作業員は延べ約2,000人にのぼります。当支部としては人手が足りない場所への応援要請などを受け付けていましたが、ずっと電話が鳴りっぱなしの状態でした。会員企業の中には自らも被災し、また親戚が行方不明になったという者もいましたが、皆、とにかく1日でも早い復旧を目指して休みなく作業しました。連日、猛暑が続き非常に過酷な中での作業でしたので、安全面や精神面には気を付けるようにしていました。
今回は地域を超えて、多くの団体・企業からの応援もありました。会員企業の下請業者も作業に協力してくれ、久留米支部からは災害が起きてすぐに土のう袋が5,000袋以上届くなど建設機材・資材から飲料水にいたるまでさまざまな物資を支援いただきました。また栃木県建設業協会からは大型土のう簡易製作機「クイックホッパー」を3台提供いただき、堤防や法面の土留めに必要な大量の土のう製作に役立ちました。従来は1日当たり120袋くらいが限界でしたが、この機械の導入によって製作のスピードが倍以上になり、8月末までに15,000袋を製作するなど、作業効率が上がり大変助かりました。

被災した比良松中学校と積み上げられた土のう


「クイックホッパー」は1機で連続して2袋の土のうを作製
(写真提供:国土交通省 九州地方整備局)

日ごろのコミュニケーションがあるからこそ

迅速な復旧作業に対応できたのは、豪雨災害の経験があったからということもありますが、日ごろの会員同士のコミュニケーションが生きたのではないかと考えています。
今回は膨大な量の流木を撤去する必要がありましたが、撤去に必要な大型重機はどこの会社にもあるわけではありません。そうした重機の貸し借りなども会員同士でスムーズに行っていました。これは日ごろからのコミュニケーションがあればこそだと思います。また会員だけという枠を超え、動けるところには動く、そうした取り組みもあったことで、発災当初に情報が錯綜しても対応できたのだと思います。
復旧作業中のある現場では作業員に対して、住民から飲み物の差し入れや、お礼を言われることもあったと聞いています。普段は直接お礼を言われるようなことはありませんが、住民の皆さん方も今回のことで、地域の建設業の存在価値について改めて気づいていただいたのではないかと思います。

がれき撤去に携わった建設業者へ東峰村澁谷村長より感謝の言葉がかけられた
(写真提供:国土交通省 九州地方整備局)

今後も復旧に向けての作業は続きます。地域にとっての復興への力として、地域の建設業の役割はますます重要性を増してくるでしょう。この地域を一番よく知る私どもが、地域の守り手として、そして地域の復興の要として、力を尽くしていきたいと思います。


平成29年7月九州北部豪雨について

平成29年7月5日昼頃から九州北部地域、特に福岡県朝倉市から大分県日田市にかけて降った雨は時間を追うごとに激しくなり、6日までに日田雨量観測所で記録した雨量は観測史上最も多い記録的な豪雨となりました。この雨は5年前に起こった豪雨災害に比べると約2倍もの雨量になります(日田観測所記録による)。この雨で河川の氾濫や土砂災害が起こり多くの家屋が被災。また多くの死者・行方不明者を出した災害となりました。

【冊子PDFはこちら

1 2 3 4 5

関連記事

しんこう-Webとは
バックナンバー
アンケート募集中
メールマガジン配信希望はこちら