特集

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2020年11月号 No.523

技術検定制度の見直し、 工事現場の技術者に関する規制の合理化について (建設業法の改正)

Ⅲ. 主任技術者の配置義務の見直し(「専門工事一括管理施工制度」の創設)

建設業の許可を受けた建設業者については、工事現場に主任技術者を配置することが求められています。今回の改正では、主任技術者の配置義務を見直し、下請の主任技術者について、一定の金額未満で一定の要件を満たす場合、主任技術者を配置することを要しないこととしております。(専門工事一括管理施工制度)

具体的には図6のとおりです。図のような施工体制の場合、これまでは、一次下請A社が配置する主任技術者による技術上の施工管理のみで適正な施工が確保される場合であっても、二次下請B社、同D社、同E社のそれぞれに主任技術者の配置が必要でした。改正後は、一次下請A社が現場に配置する主任技術者が、A社の主任技術者として行う技術上の施工管理に併せて二次下請B社、同D社、同E社の主任技術者が行う技術上の施工管理を行うことを各社間で合意した場合、二次下請各社は現場に主任技術者を配置する必要がなくなります。

この制度の対象となる工事(以下「特定専門工事」という。)は、土木一式工事または建築一式工事を除く建設工事のうち、その施工技術が画一的であり、かつ、その施工の技術上の管理の効率化を図る必要があるものとし、現段階では鉄筋工事と型枠工事としています。また、この特定専門工事について、下請契約の請負金額についても上限を定めています。主任技術者に専任義務が生じるのが請負金額3,500万円以上であることから、これを踏まえ、下請金額の合計額が3,500万円未満としています。また、特定専門工事に配置する主任技術者は、当該特定専門工事の現場に専任で配置されること、対象となる特定専門工事と同一の種類の建設工事に関し1年以上の指導監督的実務経験を有することが必要となります。なお、この「指導監督的実務経験」とは、工事現場主任者、工事現場監督者、職長などの立場で、部下や下請業者等に対して工事の技術面を総合的に指導・監督した経験が対象となります。

これらの条件を満たし、一次下請A社と二次下請B社、同D社、同E社の4者が書面で合意した場合、B社、D社、E社は主任技術者を配置する必要はありません。ただし、一次下請A社は対象となる工事の注文者から、あらかじめ書面による承諾を取り付ける必要があります。

なお、更なる下請を認めた場合、適正な施工に係る一次下請A社やその主任技術者の責任の範囲が不明確となることから、主任技術者を配置しない二次下請B社、同D社、同E社は、請け負った工事を別の下請負人に請け負わせることが禁じられます。これに違反した場合は、監督処分の対象となります。

この制度を活用することにより、元請負人は自社施工分を超える業務量にも下請負人の協力を得ることで対応しやすくなり、主任技術者の資格を有する技術者が不足している下請負人についても受注機会を得ることが可能となるものと考えています。また、建設業における重層下請構造の改善にも寄与することが期待されます。

なお、この制度の活用にあたり注意すべきことがあります。元請負人と下請負人との契約は請負契約であり、下請負人に主任技術者を配置しない場合においても、元請負人の主任技術者から下請負人への指示は、下請負人の事業主又は現場代理人などの工事現場の責任者に対し行う必要があります。元請負人の主任技術者が下請負人の作業員に直接作業を指示することは、労働者派遣(いわゆる偽装請負)と見なされる場合があることに留意する必要があります。

 

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