特集

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2017年6月号 No.489

建設業×ダイバーシティで働き方も変わる

事例紹介 CASE 03
外国人雇用への取り組み

菅信建設株式会社

福島で地域に根ざした建設会社として39年の歴史を持つ菅信建設。20年前より定期的に外国人技能実習生を受け入れ、昨年は3年間の修了者4名を建設就労者として雇用しました。型枠・土木工事の即戦力として、震災復興事業にも貢献しています。

菅野 富信会長 とベトナム人就労者のクァンさん(中央)、カンさん(左)

翻訳アプリを使う熊田さん

実習修了者4名を雇用中 即戦力として事業に貢献

菅信建設では約20年にわたり、商工会議所や建設業振興基金の支援を受け、延べ61人もの中国人・ベトナム人技能実習生を受け入れてきました。昨年には実習を修了したベトナム人4名が建設就労者として雇用され、日本人職員とともに、業務にあたっています。
「福島の浜通りは原発事故の影響で震災復興が遅れており、工事は続行中です。さらにオリンピック関連工事もあり、建設業界自体が慢性的な人手不足の中、当社も例外ではありません。そんな中で日本に残ってもらえたのは大変ありがたいことだと思っています」(菅野さん)
4人とも3年間の実習で技術・技能を十分に修得した即戦力。日本語での業務指示にも問題なく対応し、「真面目」「丁寧」と現場の評判も上々です。細かい意思疎通が必要な場合は、ジェスチャーや翻訳アプリなどで対応しますが、作業中はほとんど問題がないそう。

クァンさんとカンさんのこの日の作業は消波ブロックの型枠施工。生コンを充填する作業でもテキパキと指示していた。

「4人とも若くて元気なので現場が明るくなりました。災害時の工事にも迅速に駆けつける若手がいるとして、地元での信頼獲得に一役買っていますね」(熊田さん)

国境を超えて助け合う 長い目で見た関係づくりを

こうした信頼関係は、生じる問題の数々を丁寧に解きほぐしてきた結果だといいます。
「文化も習慣も違うのに『言わなくても分かれ』というのは横暴でしょう。挨拶など当方の要望をしっかり伝えた上で、齟齬は納得いくまで話し合う。すると『同じ人間だなあ』と実感します」(菅野さん)
さらに「地元企業の一員として生活もなじんでほしい」という思いから敷地内に専用の寮を設け、ゴミ出し指導からホームシック対応まで、会長夫人が率先して生活全般を見ているそう。さらに福島大学の留学生や他社の外国人就労者との交流も頻繁で、ベトナム料理のパーティに会長や社員が参加することもしばしばとか。さらに地元の「わらじ祭」への参加や、修学旅行と称した東京旅行など、仕事以外での交流も充実しています。

就労者等が暮らす寮の名前は「オールサムズホーム」(すべての息子達の家)。命名は菅野会長の奥様。寮では会長夫妻を交えてのベトナム料理パーティも度々行われている。

「やっぱり『来てよかった』と思ってほしいですから。その信頼関係を基に、母国でも日本との架け橋となってくれるといいなと思っています」(菅野さん)
事実、就労者として事業に貢献したり、中国人実習生受け入れ時に交流のあった会社から加工石材を輸入したり、事業的な効果も少しずつ出てきました。“ボランティア”だったという外国人技能実習生受け入れも、長い目で見れば、縮みゆく日本の建設市場が活路を見出すための布石の1つとも言えるでしょう。戦略的といいつつ彼らを見つめる会長の目には、古き良き日本の親方の温かさが宿っていました。

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