特集

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2017年6月号 No.489

建設業×ダイバーシティで働き方も変わる

事例紹介 CASE 02
地域産業にとってのダイバーシティへの取り組みとは

株式会社長岡塗装店

島根県松江市で創業79年を誇る長岡塗装店。20年前より、若年者の定着を目的に「働きやすさ改革」に取り組み、高齢者雇用や育児、家族の介護など、さまざまな課題に全社一丸となって取り組んできました。「小さな組織だからこそできる」という秘訣を紹介します。


常務取締役 古志野 純子(すみこ)

従業員の状況に耳を傾け快適に働き続ける方法を模索

2017年の「しまね女性の活躍応援企業知事表彰」や第2回「ワーク・ライフ・バランス大賞」などの賞を受け、「誰もが働きやすい会社」として注目を集める長岡塗装店。かつては若手の離職率の高さに悩んでいました。変革の起点となったのは、20年前に「若い人が辞めるのは会社のせい」と40代社員から発せられた苦言。この言葉に奮起した常務の古志野さんが牽引役となって「働き方改革」に取り組みました。まず熟練技能士の定年による技能者不足の懸念には、当時は珍しい高齢者再雇用制度を導入。加えて育児や介護に使える30分単位の休暇や時短制度、費用負担などを次々と導入しました。こうした改革が社員に受け入れられた秘訣を尋ねると「ある人を支援すれば、しわ寄せは他にいきます。その負担感を経営側が共に負いながら、制度としてもバランスを取ることがコツだと思います」と古志野さんは語ります。
従業員の抱える問題に1つひとつ向き合い、解決策を見出して導入した結果、多様な情況を理解して自然に助け合う“お互い様”の雰囲気が生まれていきました。「先日は入社5年目の独身の女性社員が、子育て中の先輩男性社員に代わって遠方の現場行きをかってでてくれたんです。その気持ちが嬉しかったですね」(古志野さん)

「しまね女性の活躍応援企業」として事例を発表する機会も多い。(発表会資料より)

協力し合える環境を目指した「見える化」で生産性も向上

働く環境改革に取り組んだ結果、8年間退職者はゼロ。若手も定着し、育児世代や高齢者も活躍する中で、男性ばかりだった職場が、現在では女性従業員は10人に増え、“ドボジョ”と呼ばれる女性技能者の入社も相次いでいます。
「ダイバーシティという言葉も知らないうちにそうなっていましたね。その環境下で、自分を含めた誰もが働きやすいルールやマナーとは何か。主体的に考えて動けるようになってきました」(古志野さん)
その成果の一部は壁面に貼り出されたさまざまな予定表にも現れています。誰がどこで何をやるのか、休みはいつか、車はどこか、受けるべき資格や健康診断の予定まで徹底して「見える化」し共有されています。
「誰だって『知らなかった』というのは不快ですよね。可視化の結果、会議の進め方も変わり、ICT連携の新しい業務も考案されました。誰もが働きやすい環境とは情報を共有化し仕事を見える化していくことが必須ですから、仕組みが改善されるほど、必然的に業務効率や品質面でも向上するようです」(古志野さん)



壁に貼り出された資格取得状況。また今年、5年後の目標も見える化。これがやる気にもつながる。

職場環境の改善の一環として、現場スタッフが集まる研修室を改装。これまで長机だったが丸机にしたところ、現場チームごとのコミュニケーションがとりやすくなったという。

今年は働き方改革をテーマにした外部講師を招いての全社員参加の講習会を開催。今後は、誰もが快適に利用できる現場設備の改善等に取り組むなど、一人ひとりの最適な働き方とパフォーマンスを追求していく予定です。

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