特集

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2023年5月号 No.548

事業承継

Ⅲ 後継者目線での「迷惑だった親ベスト3」

円滑な事業承継を行おうとする真面目な経営者ほど、意外と後継者目線でみると、事業承継において迷惑と感じられることが あります。後継者からみると、次のような親が意外にも迷惑だったということを耳にします。

後継者目線での「迷惑だった親ベスト3」

1  健康で仕事大好きで、譲らない親
健康・元気で、仕事大好き人間の親父が頑張りすぎて、ある日急に倒れました。 せめて定期的に健康診断を受けて欲しかったです。

2  心配性で、任せてくれない親
心配してくれるのはありがたいが、あれこれ口を出してきます。少しは私のことを信じて、任せて欲しかったです。

3  権威主義的に、何でも否定する親
「お前はなにも分かっていない。なにをやっても駄目だ」と従業員の前で頭から否定されると、意欲がなくなりました。

番外 従業員に優しい親
従業員に対して優しく接して慕われている親の後継者は、親と比較され辛かったです。

1.健康で仕事大好きで、譲らない親

身体が健康で、仕事大好きな親父は一見すると理想的な親であるはずです。

「うちの親父はセブンイレブン(7時に会社に行き、23時に会社から帰ってくる)だ」と言われるほど、仕事にのめり込んでいる経営者を見受けします。また、なんでも自分で行わないと気が済まない親も多いようです。

このような親がある日突然、急に病で倒れたりすると大変です。後継者は今まで経営者が行ったことを引継がなければいけませんが、業務は親がすべて行っていたことなので全く把握できていません。後継者としては、事業承継をするにあたり、なんら準備も出来ずにバトンタッチをすることになってしまい、その後非常に迷惑するのです。

なぜ、もっと早く仕事の段取りや後継の準備をしないのでしょうか。経営者は自分の身体が元気でいることから、ついつい目先の経営課題に没頭し、事業承継をまだ先のことと考えてしまいがちなのです。

上杉謙信は49歳の時に居城である春日山城の厠(トイレ)で脳卒中にて倒れました。その後、後継者の準備をしていなかったために後継者争いが勃発し、2年に渡る内乱を引き起こし、戦国最強を誇った上杉軍団も疲弊したのです。この教訓は現代にも当てはまるものではないでしょうか。

2.心配性で、任せてくれない親

早々と自分は代表取締役会長に退き後継者を社長にしたのは良いのですが、後継者の経営がとても心配で「あれはこうした方がいい、これはああした方がいい」というように、あれこれと何にでも口を出してくる親も迷惑なものです。

後継者からすると、「少しは俺のことを信じてくれよ」とか「いい加減に早く引退してくれよ」という気持ちに陥りやすいものです。

経営者から見ると、早々と社長を譲ったけれど、もしも後継者が失敗して苦労するといけないからという老婆心から様々なアドバイスをしたがるものなのです。これは完全無欠な経営を目指している経営者に陥りがちな傾向にあります。

後継者が自分で判断してミスをしてしまったとしても、そのミスが貴重な経営経験になるのだと思います。子供が転んでもすぐに手を差し伸べないで、子供が独力で立ち上がるのを見守ることも大事な親の教育ではないでしょうか。事業承継では、経営者が後継者の行動を見守る勇気も必要です。

3.権威主義的に、何でも否定する親

「お前はなにも分かっていない。なにをやっても駄目だ」と従業員の前で頭から否定する親も迷惑なものです。

経営者自身は、まるで猿山にいるボス猿みたいな存在だと思っているかもしれませんが、実際にそう思っているのは自分だけで、後継者も社員たちも冷ややかな目で見ているものです。「俺と後継者とは同じDNAを持っているので、心の中では分かっているはずだ」と考えている方がこの手のパターンの経営者によく見受けられます。

しかしながら、そもそも親子であっても、教育や育った環境が異なるのです。全く同じ考えの親子はいません。つまり、自分と子供とは違う人間なんだという自覚のもとに、同じ人間同士、妥協しあって事業承継を行うことも重要なのです。

番外編

従業員に優しすぎた親

後継者から迷惑だと聞いて意外にも驚いたのが、従業員に対して優しすぎた親というものです。

従業員に優しく接するため、従業員からは「仏」の経営者と思われていますが、その後にバトンタッチした後継者からみるとたまりません。絶えず先代と比較されて、少し従業員に注意をするだけで、「鬼」の後継者と言われてしまいます。

後継者に経営をバトンタッチする前には、自分が従業員に対して悪役となり、注意をすることにより、後の後継者の経営が非常にスムーズになるということも理解すべきです。

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