特集

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2023年5月号 No.548

事業承継

Ⅱ 事業承継におけるタテとヨコの課題

円滑な事業承継を行うためには、事業承継におけるタテとヨコの関係を理解することが重要です。

1.経営者と後継者との関係(タテの関係)

昔はよく「地震、カミナリ、火事、親父」といい、親父は怖いものの代名詞でした。親父に「勘当だ、家から出ていけ!」と言われると相続権すらなくなったものです。事業承継でも長男が言うことを聞かないと二男に継がせればいいという風潮もありました。しかし、現代のように少子化の時代になるとそうはいきません。代わりの子供がいないことが多いのです。つまり、親父と子供の立場が対等になりつつあり、経営方針などで親に堂々と意見を述べる子ども(後継者)が多く見受けられるようになりました。

2.後継者と利害関係者との関係(ヨコの関係)

昭和22年の民法改正により、昭和23年1月1日から従来の嫡子相続制から均分相続制に切り替わりました。つまり、法律上は、兄弟姉妹は平等に相続権をもつことになったのです(民法900条)。

改正前のように、嫡子がすべて相続するのではなく、遺産分割においては、兄弟平等の立場で協議が行われるようになりました。

これにより、後継者以外の兄弟姉妹においてもしっかりと自分の権利を主張できる素地ができたのです。

また、会社では、労働基準法に基づく社員の権利が強化されており、会社の社員たちも経営者にしっかり物申す時代になりました。

少し前のように、「長男に後を継がせるから、お前たちは黙っておけ」という時代ではなくなったのです。当然ながら、会社幹部や社員たちの意向も事業承継では重要な要素を占めてくるようになりました。

つまり、現代の事業承継では経営者と後継者の「タテの関係」だけでなく、後継者と利害関係者の「ヨコの関係」をしっかりと斟酌したうえで、進めなければいけないものなのです。

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