特集

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2022年12月・2023年1月 No.544

持続可能な建設業にむけて

登録者100万人超・CCUSの先に見える可能性

谷脇:今やあらゆる産業においてDX(デジタルトランスフォーメーション)が推し進められていますが、建設業に関してはいかがでしょうか?

長橋:行政の分野ではデジタル庁が中心となり、申請や許可などのデジタル化に向けて動いています。国土交通省でもこの1月より、建設業許可と経営事項審査(経審)の申請の電子化を始めています。また先の経済対策で示されたBIM(Building Information Modeling)の推進にも力を入れているところです。BIMを活用することでより業務効率化や生産性向上を図れるほか、工事におけるコストなどもさらに明確になり、公共・民間問わず様々な事業に役立っていくものと思います。またデジタル化を進めていくことで、ゆくゆくは現場管理の在り方も変化するはずです。監理技術者がオンラインで2つの現場を兼務するといった働き方も生じていくのではないかと考え、そうした可能性についても検討を図っています。

谷脇:なるほど、デジタル化の推進は将来の働き方にも大きな影響を与えそうですね。また先ほど挙がった技能労働者の賃金の下支えやDXにもつながる話ですが、業界の皆さまとともに進めている建設キャリアアップシステム(CCUS)が、2022年にいよいよ登録者100万人を達成しました。今後さらに全面的な適用に向けて取り組んでいくわけですが、現在の普及状況やこのシステムの有用性についてはどのようにお考えですか?

長橋:登録者数が100万人を超えたということで、業界内においてかなり浸透してきた実感があります。建設キャリアアップシステムは、技能者個人の経験や資格を“見える化”する優れた仕組みであると同時に、デジタル技術により現場での入退場や出勤・休暇の状況、施工体制などを確認できるツールでもあり、業界にも企業にも個人にも大きなメリットをもたらすシステムです。ただし、いくら優れたシステムであっても、異なる制度が併存すると効果は半減してしまうもの。建設キャリアアップシステムを標準化し、様々な制度に内在させることができれば、より生産性の向上や事務作業の効率化も図っていけるものと思います。

谷脇:特に建設業の技能労働者については、その実態が見えづらいという声が以前から挙がっていました。建設キャリアアップシステムにより技能者個人の経験や資格が“見える化”されることは、賃金の下支えに貢献しますね。

長橋:建設キャリアアップシステムに登録することで、各々が自身の本来あるべき処遇を認識でき、転職の際などにもステップアップしていける…そんな機能を制度や契約の中に盛り込んでいくことが大切だと考えます。自身の持つ価値を知ることは下支えにつながり、雇用の流動化や市場の活発化にもつながっていくもの。それは個人にとってはもちろん、多くの働き手を抱える企業にとってもメリットと言えます。今後は普及のみならず、現場での利用率をさらに向上させていくことが重要です。公共・民間双方に、よりこのシステムを周知していきたい考えです。

谷脇:建設キャリアアップシステムには様々な活用方法と大きな可能性がありますね。運営主体である我々建設業振興基金としても引き続き全力で取り組んでまいります。

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