特集

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2022年10月 No.542

新しい時代の担い手を育む 工業高校の今とこれからのあり方とは

学校・行政・企業が一体で
育成する時代へ

東)最近は、IoTなどの技術の高度化・情報技術の発展などに対応した学習も重視されています。実際に土木技術や建築技術も進化し、現場で用いられる機器や材料なども変わってきていますが、意識した取り組みはありますか?

山)そうですね、本校はトータルステーションと連携した電子平板などに課題研究として取り組んでいます。前任校では、ドローンを活用した実習などもありました。ドローンは本校でもぜひ取り組んでみたいのですが、飛行制限がかかってしまうのが悩みです。

戸)私の今年度の課題研究も電子平板です。ドローンは同じく飛行制限が悩みなので、生徒がインターンシップや現場実習で伺った際に触らせてもらい、使い方などをレクチャーしていただいています。

東)生徒たちは私たちが思う以上に電子機器にも素早く順応しますね。

山)そうですね。オープンスクールの時にも実にうまく扱っていると思いました。一方、例えば実習で電子平板に測点を取ったとして、現場での活用方法の理解やつながりが薄いように思います。

戸)たしかに、与えられたものを操作する力は非常に長けているのですが、それをうまく活用していけるかは、自分からはまだ考えられないという生徒も目にします。

東)何のためにこの取り組みをやっているのかを、生徒にしっかりと伝えていくことが重要なのでしょうね。戸頃先生は、教室以外で、生徒を育成するために取り組まれていることはありますか?

戸)今後やりたいと考えているのは、出前授業のような形で生徒自らが中学生に向けて授業を行ったり、一緒になってものづくりを経験する取り組みです。授業をイチから考えて段取りを組み、要点やポイントを絞っていく過程は生徒にとって良い学びになると思います。また生徒もそうですが、私も経験値が少ないので、企業の方も一緒になって実践的な体験ができればと思います。授業のカリキュラムとしてどこに挟むかはとても難しいのですが、まずはやってみることから始めたいと思います。

東)地域の企業の方が応援してくださるようになれば、長い目で見ると人材・担い手を確保していく一つの道にもなりそうですね。何か企業の皆さまへ求めることはありますか?

戸)本校の生徒も希望を持って建設業に入職するのですが、1年も経たずに辞めてしまう卒業生も多いんです。特に1年目の子たちを気にかけていただいて、少しでも違和感があれば近況報告などを聞けるだけでも、こちらから連絡をとって話を聞いてあげるなどのアクションは取りやすいですね。

山)そうですね。卒業したら終わり、ではなく、私も前任校で進路指導担当だったころ、特に県外に出た生徒のことは気にかけていました。1年目の離職に関しては、企業・学校の双方で注視しておきたいですね。企業の方も本当にいろいろとやってくださっていて、本校でも県内・県外の企業さまとオンラインでのインターンシップなどに取り組むなど、非常に協力的にサポートしていただいています。やはり工業高校を卒業する生徒たちにはできるだけ土木に関連した事業に携わって欲しいなと思っています。

東)今までは私たちが、挨拶や礼儀、基礎的な知識を学ばせ、送り出すという人材育成のあり方でした。そこを企業の方や行政と共に取り組んでいけないかですね。三者が一緒になって育て、魅力を伝えていくことが大切な時代になってきたのかもしれません。

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