特集

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2022年10月 No.542

新しい時代の担い手を育む 工業高校の今とこれからのあり方とは

山)はい。ただ昨年は土木科が定員を割りました。岡山県内の他の工業高校もここ5年ほどは苦しい状況が続いています。危機感を持っているのが正直なところです。

戸)茨城県内の工業高校も同様です。下館工業高校も全学科で定員割れが起こっています。こどもの数が減っているとは思いますが、「特にやりたいことが決まっていないから普通科へ進学」という生徒が多いと聞きます。

山)昨年参加した全国規模の研修でも「工業高校に人が集まらない」「どうしたら定員を満たせるのか」という声が多々挙がり、岡山県だけで起こっている問題ではないんだと実感しました。

東)工業高校の魅力が伝わっていなかったり、将来の選択肢が狭まるといったイメージが強かったりすることなどが足かせになっているところもあるでしょうか?

戸)“一度その学科に入ったら3年間、同じ専門の内容を学ばなければいけない”というのが、中学生にはやや重い気もします。自分に向いていないかも、とか、他の学科が魅力的に映る場合には、1年生の途中などに学科を変更できる制度があれば、生徒にとっては気が楽かもしれませんね。

東)なるほど。科名が変わる動きもありますね。

山)個人的には、名称は無理して変えなくても良いのではと感じています。大学などでも“土木”という名前を用いないケースが広がっていますが、取り組む内容は土木なので、そこはぼかす必要はないんじゃないかな、と。岡山県内の工業高校でも基本的には“土木”の名称として残っています。

戸)そうですね。私たち大人から見ると“土木は土木”という認識があるのですが、中学生の目線で見ると受け入れやすい言葉も違ってくるのかな。技術科も“総合”の名称を加えるなど、将来の選択肢が狭まるといったイメージを持たれないよう工夫する必要がありますね。

東)戸頃先生は母校の下館工業高校で教員をされていますが、工業高校の魅力や高校3年間で学んだことを後輩たちに伝えていきたいという思いがあるのでしょうか?

戸)はい。在学中は先生や周りの環境に恵まれたこともあり、実習がすごく楽しかった思い出があります。測量にしてもコンクリートを作るにしても、班を編成して友達と和気あいあいと取り組んで…そうした楽しさは土木ならではのものだと思います。ただ教育実習で母校を訪れた際に「実習ってつまらない、実習は嫌い」という声を耳にして、実習ほど楽しいものはないのに、と歯がゆい思いをしました。そうした生徒たちに、「実習の時間だけは好き!」と言わせたいというのが教員になった原動力です(笑)。

 

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