建設経済の動向
ナフサショックに揺れる建設業界、今こそ抜本的対策を

中東情勢の混乱に伴う原油やナフサの不足が建設業界に波紋を広げている。ナフサショックだ。建材・設備メーカーが受注制限や原料高騰を受けた製品の値上げを続々と発表し、建設現場では工期の遅延やプロジェクトの中止が発生。一人親方や専門工事会社などは倒産や廃業の危機に直面し、悲痛な叫びを上げている。
中東情勢の混迷が長期化して、国内の建設業界に大きな影響を及ぼしている。建設資材の調達難だ。中東から、ナフサ(粗製ガソリン)の原材料の供給が滞り、それを原料とする建材の供給不安が高まった。供給の目詰まりは、販売価格の高騰を引き起こす。例えば、シンナーの1kg当たりの平均単価は2026年3月までは260~280円で推移していたが、4月に315円へと一気に跳ね上がった。同様に防水材やシーリング材、断熱材なども比較的早い段階で値上げに踏み切っている。
6月以降は内外装材や建具関連など、様々な製品分野にも値上げが波及している。日本建設業連合会の取りまとめによると、価格改定だけでなく受注停止や出荷調整などを告げられた受注制約、それから納期遅延などといった取引条件変更の影響が生じた建設資材は計77品目に及ぶ。
建設資材が高騰すると建設費の高騰は免れない。その影響は既に自治体のプロジェクトなどの「中止」「延期」という目に見える形で生じ始めている。
例えば、東京都武蔵野市の武蔵野公会堂の改修工事4件の入札が2026年4月に中止となった。1月に公告して、開札予定日は5月11日だった。入札中止は中東情勢の混迷によって石油由来の資材が調達しづらくなり、工事着手の遅延や工事契約後の中断などで事業費が増えるリスクを踏まえた判断だという。
計画延期、工期遅延などで現場が長期間ストップしたことによる小規模事業者の経営状況の急速な悪化も問題視されている。帝国データバンクが公表する全国企業倒産集計(26年5月報)によると、小規模事業者の割合が高い塗装・防水工事業の倒産件数が全国で80件に達した。2000年以降、最多を記録した25年に次ぐペースだという。
シンナーの平均単価の推移(出所:日本塗料工業会の資料を基に日経クロステックが作成)
新たな入札の不調・不落対策
予定価格を超過しても失格としない
このように先行きが見えない状況は続くが、業界への影響を最小限に抑えるためには抜本的な対策が欠かせない。ここでは、誌面に限りがあるため、建設費の高騰がもたらす実勢価格と予定価格の大幅な乖離による入札の不調・不落対策の一例について紹介したい。
それは、郷原総合コンプライアンス法律事務所の郷原信郎弁護士と筑波大学の楠茂樹教授が提唱する「参考入札」方式だ。同方式は、入札が不落となった場合、速やかに随意契約の手続きへ移行するもの。採用する自治体は入札公告時に宣言しておき、入札時は通常の方式で競争入札を実施するが、予定価格を超過する入札があった場合でも失格とはせず、参考入札として扱う。
もし、予定価格の範囲内で応札者がいなかった場合、参考入札の結果を基に最も評価が高かった応札者を、随意契約の相手方として選定する。総合評価落札方式の場合は、価格と他の評価項目を総合した第1順位者を相手方とする。選定結果と、予定価格を上回る価格の妥当性について審査し、議会などの承認を受けた後に随意契約を締結する。随意契約でありながら、応札者が第1順位者となることを目指すため競争性が働くのもポイントだ。随意契約は価格交渉の不透明性が批判の対象となるが、競争性を担保することで合理性を説明しやすくなる。
参考入札方式のスキーム(出所:取材を基に日経クロステックが作成)
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