建設経済の動向

建設経済の動向
2026年6月号 No 579

「進化」「深化」する建設3Dプリンター

日経コンストラクション編集長 真鍋政彦

省人化や工期短縮、環境配慮などの視点から、建築・土木分野で建設3Dプリンターの活躍の場が急増している。この1年で土木学会や国土交通省で3Dプリンターに関する技術指針や参考資料が次々と公表されており、現場打ちやプレキャスト工法に次ぐ第3の工法としての確立が期待される。政策動向や最新のトレンドなどを紹介する。

日本国内で建設3Dプリンターを使った建造物が世に出始めたのが、2019年前後。当時は試験施工の域を出なかったが、そこから数年で急速に「進化」を遂げる。本設構造物としての実装例は土木構造物が先行しており、埋設型枠や集水升を皮切りに護岸や擁壁など、様々な部位や構造物に使われ始めた。

一方、建築分野では2022年ごろから倉庫やグランピング施設、小規模住宅などが次々と完成。2025年には、3Dプリンターで2階建ての住宅を建設するまでになった。

材料なども、広く使われているモルタルから、土、樹脂、金属などあらゆるものが登場。用途や要望に応じて、適切な材料を選べる時代になっている。

技術も進化を遂げた。3Dプリンターが使われ始めた当時は工場でプリンターを稼働させる「オフサイト」が一般的だったが、現場近くで稼働させる「ニアサイト」や建設場所に直接据え付ける「オンサイト」などで公共事業の擁壁を建設した事例が出てきた。他にも、鉄筋を組み込んだ構造部材の施工技術や大型ドローンで空を飛びながらコンクリート材料を吐出する技術なども各社で開発が進む。

技術指針、参考資料、制度創設――
2026年は目が離せない建設3Dプリンター

先行する民間企業の取り組みに対して、ここ1年で制度設計も充実してきた。例えば、土木学会は2025年7月、建設3Dプリンターでつくる埋設型枠に関する初の技術指針(案)を作成。これまで各現場での対応が必要だった3Dプリンター製部材の品質について、担保する基準を設けた。

さらには国土交通省技術調査課が3Dプリンターの適用事例が増えてきたことを踏まえ、発注者の監督職員が出来形や品質を確認するための基本的な考え方を整理した参考資料(案)を2026年3月に公表した。

建築分野での規制緩和も2026年に実現しそうだ。現時点ではモルタル系材料は指定建築材料に該当せず、構造耐力上主要な部分には使えない。構造体として利用するには、建築基準法20条に基づき、建築物ごとに大臣認定を取得する必要がある。

そこで国交省は、20条認定なしでも建設可能になる仕様基準の制定案を2026年3月に作成・公表した。小規模建築物を対象に構造耐力上主要な部分としてモルタル型枠を扱う場合の仕様基準だ。2026年5月以降の公布・施行を予定している。

制度設計が進み、実例がますます増えるのは間違いない。ただ手放しで喜んではいられない。これまでは実装するだけで話題に上がっていたが、今後はそれに加えて実用性や効果がシビアに求められる。合理的な設計や施工の方法、技術的優位性が発揮できる適用分野などを模索する「深化」が必要だ。

その点では、東京大学が大手建設会社などと共に2026年4月に社会連携講座「建設用3Dプリンタによるコンクリート構造の革新」を開設したのは、時代の流れと言える。官学民が危機感を持ってさらなる実装や技術発展、制度化・標準化を進めなければ、現場打ちやプレキャスト工法に次ぐ、「第3の標準工法」として、建設3Dプリンターを確立することは難しくなる。建設3Dプリンターの「真価」が問われる。

オンサイトプリンティングで製作した重力式擁壁。2025年11月撮影(写真:生田 将人)

清水建設が描く2050年の建設現場の姿(出所:清水建設の資料に日経クロステックが加筆)

 

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