建設経済の動向

建設経済の動向
2026年7・8月号 No 580

熱中症対策義務化2年目、「暑い時に働かない」にシフト

日経コンストラクション編集長 真鍋政彦

熱中症対策の義務化から2年目を迎える。冷却ウエアやウエアラブルデバイス、スポットクーラーなど設備や装備が充実している建設現場は増えたものの、効果には限界がある。特に気象庁が「酷暑日」と定めた40℃以上になると、お手上げだ。そこで、暑い時間の作業を避けられるような働き方にシフトする動きが各社で見られる。

労働安全衛生規則(安衛則)の改正による熱中症対策の義務化が2026年6月で施行2年目に入った。全ての事業者は熱中症の恐れがある作業者を発見した場合の報告体制の整備や周知の他、症状悪化防止のために必要な措置の策定・周知が求められるようになり、各現場で対応が進んだ1年となった。

施行2年目はさらに対策が普及すると見られる。というのも、昨年の義務化のスケジュールはかなり急だったためだ。厚生労働省による安衛則改正の条文の公布は同年4月15日で、施行のわずか1カ月半前だった。そのため、特に地方建設会社などにおける現場への熱中症対策義務化の浸透は不十分だった。

それでも義務化のかいがあってか、熱中症による死亡者数は25年、大幅に減少した。一方で、死傷者数は残念ながら4年連続で増える結果となってしまった。25年は40℃以上を観測した地点が日本各地で延べ30地点に上るほどの記録的な暑さで、現場で働く以上、熱中症にかかる人が増えるのは、ある意味仕方がないのかもしれない。

職場における熱中症による死亡者数、死傷者数の推移。各年とも12月末時点の速報値。死傷者数は熱中症による死亡者と休業4日以上の業務上疾病者の数(出所:厚生労働省)

ただしだからといって、熱中症の発生を見過ごすわけにはいかない。ではどうすれば、発生率を減らせるのか――。その解決策の一つとなるのが、労働時間や勤務日数にまで踏み込んだ働き方改革だ。簡単に言うと、「暑い時に働かない」ということに尽きる。

夏季連続休暇や週休3日制、サマータイム制
柔軟な働き方に加えて給与制度にメスを

例えば、夏季連続休暇や週休3日制の導入、1日の労働時間を短縮したり朝夕にシフトしたりするサマータイム制の設定などが該当する。特に注目されている取り組みが、猛暑期間に現場作業を避ける、または現場を休みにして、代わりに春や秋に作業をする「夏季連続休暇」だ。

ただし、他の期間に作業を代替するということは、1カ月の時間外労働時間が原則45時間までなどと定めた労働基準法の三六協定の規制に抵触してしまう。なかでも、特別条項を設けても時間外労働が45時間を超える月は年6回までという規制が、業務の支障になっていると指摘する声が多い。

そこで、夏季連続休暇を導入するうえで、欠かせない制度と言われているのが、労働基準法で定めている「1年単位の変形労働時間制」だ。所定労働時間を繁忙期に増やす一方、他の時期で減らすことができる。ただしこちらも問題がないわけではない。制度を適用するには、自社の就業規則を変更したうえで労使協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要がある。さらに、少なくとも30日前に、日々の労働時間を設定したスケジュールを確定する必要がある。ただ、天候などは30日前から分かるはずがなく、使い勝手が良くないという意見があるのも事実だ。制度改正が望まれている。

1年単位の変形労働時間制のルール(出所:厚生労働省の資料を基に日経クロステックが作成)

こういった柔軟な働き方だけでなく、給与制度の問題にもメスを入れる必要がある。夏季に長期休暇を設定すると、日給月給制の技能者は、休んだ分だけ収入が減る。技能者が他の現場に流出し、「夏季休暇が終わると戻ってこないのではないか」と心配する元請け会社は多い。こうした事態を避けるには、技能者への月給制の普及が欠かせない。

 

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