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2020年11月号 No.523

しんこうTODAY:令和2年度「作文コンクール」受賞作品が決定!

高校生の作文コンクール 国土交通大臣賞 受賞作品

一人ではできないからこそすべき事

岩手県立盛岡工業高等学校 土木科2年
淺沼 小春 さん

受賞者へインタビュー

■Q1  受賞された感想を教えてください。

コンクールへの参加を勧めてくれた先生に感謝の気持ちでいっぱいです。自分の思いが審査員の方々に届いたので本当に嬉しいです。私は元々賞を取ることは考えずに自分の思いをそのまま書いて他の方に知ってもらいたいだけだったので、まさかこのような賞をいただけるとは思いもしませんでした。

■Q2  なぜ工業高校に進学しましたか?

中学1年生の頃に母からけんせつ小町の話を聞き、土木に興味を持ったのがきっかけです。その話を聞くまでは進路についてほとんど考えておらず地元の高校に進もうかと考えていました。ですが、母から土木科を勧められ今の高校への進学を決意し、それからは一度も変えようとは思いませんでした。

■Q3  学校ではどのような勉強をしていますか?

最近は測量士補国家試験の合格に向けた勉強に力を入れています。

■Q4  将来の夢を教えてください。

盛岡市内の企業に就職して重機オペレーターになることが私の夢です。私も父のように重機を扱って現場で働きたいです。向き不向きはあると思いますが、1つでも多くの重機を扱えるようになれればいいと思います。周りから気づかれにくい仕事かもしれませんが、地元に貢献したいと思います。

私は周りの人から時々、何故土木科を選んだのかと聞かれます。私の中にはいくつかの答えがありますが、その中で私が言わなくなった答えが一つあります。それは「地元に戻って復興に貢献するため」です。私は土木科に入るために沿岸の中学校から内陸の高校に進学しました。入学当初は、将来地元に戻って働こうと思っていたのですが、何年経っても地元の復興が進んでいるように思えず、次第に「私一人が地元に戻ったところでこの状況を打破できるのだろうか」と考え込むようになりました。せっかく嵩上げした土地も大部分が2年近く放置されて雑草まみれの状態です。私は無力感を感じ、その答えを言うことができなくなりました。

しかし、将来の夢を諦めたわけではありません。私の夢は重機オペレーターになることです。この夢は、土木科に進学することを決めた中学1年生の頃から全く変わりません。通学中に工事現場を見るととても興奮します。骨組みを見てどんな建物が建てられるかを想像し、道路の舗装の進行状況を見てどのように造られているかを学んでいます。敷かれたばかりのアスファルトの上を通ったときは特に嬉しいです。私もああやって働く日が来るのだと思うと楽しみで仕方がありません。私が土木科を志望した時、父親に「女には無理」と笑われましたが、私は「そんな事はない」と笑い返しました。私は土木科で学んでいることをとても誇りに思っています。

以前、建設現場で働く女性の方々と意見交換をする機会がありました。そこで、建設業界ではジェンダーをなくし、性別関係なく働いていけるように沢山の取り組みを実施していることを知りました。少しずつ女性でも働きやすい環境になってきていることは間違いありません。私たちが社会に出てからも取り組みを続け、もっと環境を良くしていかなければならないと思います。

建設業イコール男のイメージはまだ根強く残ってはいますが、女性が活躍する姿が全国の人の目に留まれば、そのイメージを少しずつ崩すことができますし、その中で建設業に興味を持ってくれる女性も増えてくれると信じています。努力を重ねればもしかしたら10年後の建設現場には多くの女性がいることも夢ではないでしょう。そうすれば建設業全体が盛り上がり、私の地元で建設業に携わる人も増え、復興が進み、活気が戻るのではないでしょうか。

私は幼い頃からずっと故郷の景色を見てきました。たったの1日で崩れたかつての景色はもうほとんど覚えていません。私があの町から出て活躍することが復興に繋がるのであれば、とても嬉しいことです。10年後の私が見たいのはかつてと同じ景色の故郷ではなく、生まれ変わり活気の戻った町です。「故郷に帰りたい」と心の底から思えるような日が来るのを楽しみに、夢を叶えるために今、全力を尽くします。

 

 

描く未来

鹿児島県立鶴翔高等学校 総合学科 環境緑地系列2年
岩月 野々 さん

受賞者へインタビュー

■Q1  受賞された感想を教えてください。

報告を受けたとき、信じられないくらい驚きました。下宿先のみんなが喜んでくれたことがすごくうれしかったし、そこで実感が湧いてきました。こんなにも光栄なことはないので、本当にありがたい気持ちです。

■Q2  なぜ工業高校に進学しましたか?

私は最初土木に全く興味はありませんでした。高校は好きな部活動に集中できる環境を希望して選びました。そして総合学科の普通科コースから大学進学を考えていました。しかしコース選択の為の体験授業で、女性が土木の世界で活躍しているということを知り、魅力を感じました。建設業や測量、公務員、大学、専門学校と進路選択も多いことから、2年生で土木コースを選択しました。

■Q3  学校ではどのような勉強をしていますか?

専門では測量や施工、設計、造園など農業土木に関する科目を学習をしています。そして出前講座や現場見学会、実習がとても多くあります。先日は測量や建設の専門家の話を聞いたり、VRやICT建機などの最先端技術を体験したりしました。実際のものに触れたり、体を動かすことで実践的な勉強が出来ています。

■Q4  将来の夢を教えてください。

専門科目を学習し始めてまだ半年ほどなので、まだはっきりと将来の自分の職業は見えていませんが、一人の女性技術者として、この手で社会の支えとなるようなものを、仲間と協力して造ってみたいです。そして、一生を超えて残るような大きな何かの工事に携わってみたいと思っています。女性でも建設業で活躍できることを、社会に発信できる存在になりたいです。

道路、トンネル、橋、そしてダム。いつも何気なく過ごしている日常には、人々の暮らしを支えているものがたくさんあります。多くの人が、昔は凸凹した道や通れなかった道だったことを知らず、当然、そこに道があるものとして生活しています。

私自身もそうでした。私は、土木になど全く興味のない高校生でした。そんな私を変えたのは、教室に置いてあった建設業界を紹介したパンフレットの一ページでした。そこに写っていたのは、立派で美しいダムの姿とTS(測量機器)を覗いている女性の姿でした。その瞬間、私も一生残る、いや、一生を越えて残っていく立派で美しく大きな何かをつくってみたいと思いました。それと同時に、女性が土木の世界で活躍していることに驚き、純粋に憧れを感じました。

私は現在、総合学科の環境緑地系列で農業土木について学んでいて、現場見学会や企業説明会に参加することが多くあります。校庭改修工事の現場見学会では、建設機械の試乗体験や施工計画書、工事内容の説明を受けました。そこで、現場で働く一人の女性から「女性が現場にいる利点」について、「力はないけれど、男性にはない視点から現場を見ている」と教わりました。女性は細かいところに気付く点や、気配りができる点から、現場パトロールなどで安全点検をしたり、環境整備をしたりすることで、働きやすい職場づくりに向いているのだそうです。また別の現場では、女性の現場監督の姿を見ました。現場での人を動かすことのできる的確な指示、設計図に関しての細かな指摘、そして、現場をまとめるにあたっての多彩なコミュニケーション能力と対応力など、強い魅力を感じました。今まで、男性の世界だと思っていた建設業界は、女性ならではの働き方ができる、女性も現場で活躍できる社会だと実感しました。

企業説明会では、「ひと」と「まち」をつなぐ、「ひと」と「しぜん」をつなぐという言葉を聞きました。心にグッときました。インフラ整備をしているからこそ、今のより良い生活があります。この言葉を聞いたとき、ただものをつくるだけでなく、そこにある一つの道が人の暮らしの支えとなり、「ひと」と「まち」をつなげ、その一つの道が、その人自身の故郷の風景として頭に残り、地域を守り、育て、「ひと」と「しぜん」をつなげることになるのではないかと思います。私も、女性ならではの視点で、「ひと」と「まち」、「ひと」と「しぜん」をつないでいきたいです。

社会に大きな力を与える土木の世界で私は、この手で一生残る何かをつくりたい、女性技術者の一人として仲間と協力して多くの仕事に携わりたい、という夢があります。多くの人の役に立つために、今は、たくさんの知識を身につけられるように学び、いつか、土木の力で「ひと」、「まち」、「しぜん」を支えていけるようになりたいです。

 

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