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2020年9月号 No.521

建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律等の解説

1.はじめに

将来の建設業の担い手を確保するため、働き方改革の促進、生産性の向上及び持続可能な事業環境の確保を図る施策を盛り込んだ「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」の概要等について、昨年9月の記事にて解説させていただいた。本年10月1日に本改正法の大部分の施行を控え、関係政省令についても公布されたところであり、本稿では、改正法の内容のうち、政省令の規定が関連する部分を中心に解説する。

2.改正法の主な内容

  2-1 建設業の働き方改革の促進

(1)著しく短い工期の禁止(建設業法第19条の5及び第19条の6関係

長時間労働の是正のためには、技能労働者に長時間労働を強いることを前提とするような工期設定でなく、雨天日など様々な事項を考慮した上で適正に建設工事の工期を設定することが重要である。このため、以下の事項を規定した。

①建設工事の注文者は、通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならないこととした。

②実効性の確保の観点から、国土交通大臣等は、著しく短い期間を工期とする請負契約の締結禁止に違反した建設工事の発注者に対し、必要な勧告をすることができることとし、勧告に従わなかったときは、その旨を公表できることとした。なお、その勧告・公表を行うため、当該発注者に対して、報告又は資料の提出を求めることができることとした。

さらに、著しく短い工期による請負契約を締結した場合に勧告の対象となる建設工事の請負代金の額の下限について、建設業法第19条の6第2項の政令で定める金額は500万円とした。ただし、当該請負契約に係る建設工事が建築一式工事である場合においては、1,500万円とした。

(2)工期に関する基準の作成及び実施の勧告(建設業法第34条関係)

受発注者双方による適正な工期設定の取組を促進するためには、まず、受発注者に対して中立な立場から工期についての考え方を明確にすることが重要であるため、中央建設業審議会が、建設工事の工期に関する基準を作成し、その実施を勧告できることとし、7月31日に勧告を行った。

  2-2 建設現場の生産性の向上

(1)監理技術者の専任義務の緩和(建設業法第26条関係)

情報通信技術の発展や建設生産現場での活用の状況などを踏まえ、工事現場に監理技術者を専任で置くべき建設工事について、当該監理技術者の職務を補佐する者として、当該建設工事に関し監理技術者に準ずる者として政令で定める者を専任で置く場合には、当該監理技術者の専任を要しないこととした。

なお、監理技術者に準ずる者として政令で定める者としては、今回創設する1級技士補等とした。また、監理技術者の職務を補佐する者を置いた場合に監理技術者が兼任できる工事現場の数は2とした。

(2)技術検定制度の見直し(建設業法第27条関係)

将来的な技術者不足が懸念される中、若手技術者の育成を図るとともに、監理技術者等となる一歩手前にいる技術者の活用を図ることが必要である。そのため、技術検定を第一次検定及び第二次検定に再編した上で、それぞれの検定の合格者は政令で定める称号を称することができることとした。なお、政令で定める称号については、第一次検定の合格者は級及び種目の名称を冠する技士補、第二次検定の合格者は級及び種目の名称を冠する技士とした。

  2-3 持続可能な事業環境の確保

(1)建設業の許可の基準の見直し(建設業法第7条関係)

建設業の許可の基準のうち許可を受けようとする建設業に関し5年の経営業務の管理責任者としての経験を有する者等を役員等として配置することとしている要件について、事業の継続性の観点から見直しを行った。これまでは、個人の経験により担保していた経営の適正性を、建設業者の体制により担保することとし、建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であることと改めた。

なお、国土交通省令で定める基準として、現行の基準を満たしている場合に加え、建設業の役員のみならず相応の管理職の経験等を有する者であることや、建設業者として加入すべき社会保険に加入していることを規定した。

(2)承継規定の整備(建設業法第17条の2・第17条の3関係)

これまで建設業の譲渡や建設業者の合併・分割があった場合には、事業を承継した者が新たに建設業の許可を受ける必要があった。今回、事業承継の円滑化を進める観点から、建設業の全部を譲渡、合併、分割する場合において、事前に国土交通大臣等の認可を受けることで、事業の承継の日にこの法律の規定による建設業者としての地位を承継することとした。また、建設業者が死亡した場合においても、死亡後30日以内に申請し、認可を受けることで、相続人は被相続人の建設業者としての地位を承継することとした。

また、認可の申請については、法律で定める認可の区分に応じ、関係者の連名で申請書を提出することとし、許可の場合に準じた書類等を添付させることとした。認可申請書の提出先が国土交通大臣となる場合において、都道府県知事の許可を受けている認可申請者は、認可の申請を行った旨を当該都道府県知事に届出をすることとし、その場合、国土交通大臣は当該都道府県知事に対して、当該都道府県知事の許可を受けた建設業者に係る書類の提出その他必要な協力を求めることができることとした。

(3)標識の掲示義務の緩和(建設業法第40条関係)

れまで下請業者も含め工事現場で施工する全ての建設業者に許可証の掲示が義務づけられていたところ、負担軽減の観点から、発注者から直接請け負った工事のみを対象とすることとした。なお、引き続き適切な情報提供を行うため、施工体系図の記載事項等について、監理技術者を補佐する者について、氏名及び保有資格を記載することとするほか、当該建設工事の従事者に関する事項(氏名、生年月日及び年齢、職種、社会保険への加入状況等)を追加することとした。

3.終わりに

今後、建設業をより魅力ある産業とし、将来の担い手を確保するためには長時間労働の是正などの建設業の働き方改革を強力に推進していくことが不可欠である。まずは、本改正の円滑な施行を図りつつ、建設業の働き方改革の実現に向けたさらなる改善に取り組んでいく。

 

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