FOCUS

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2021年9月 No.531

学びのプロセスに重点を置いた課題研究「失敗」という成果が生徒を成長に導いた

平成21年4月に開校した、徳島県立徳島科学技術高等学校。以来就職率100%を誇る同校では、「勉学、資格取得、部活動」にバランスよく取り組み、昨年度には工業系高校からの国公立大学合格者数日本一を記録。ハイブリッド型教育システムを可能にする背景には、徹底的に生徒の自主性を育む指導方法があります。その具体的な取り組みについて環境土木コースの日髙耕作先生に伺いました。

生徒の主体性を育むために失敗という結果を受け入れる

「世界をめざす技術者へ!」をキャッチコピーに掲げ開校した同校では、科学技術系人材の育成に向けた取り組みを積極的に行っている。2019年には文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、5か年計画でさらに取り組みに深度を増している。その一環として、環境保全・保護の視点と土木技術の融合を目指した課題研究に取り組んでいるのが、今回紹介する日髙先生だ。研究テーマは、自身がコーチを務めるラグビー場で繁殖する、外来植物・メリケントキンソウの駆除。まずは植物の分布状況の把握から着手した。今年からスタートさせて3か年計画で測量の技術と植物環境データを融合し、効率的な駆除の実現を目指している。

「生徒たちはせっかく『環境土木コース』に来ているのだから、土木の技術を使いながら社会の役に立つことができたらいいなと考え、今回の課題研究のテーマを決めました。また研究対象に関する明確な答えを私も含めて誰も知らないこのテーマだと、SSHが目指している仮説を立て実験をし、検証、考察を繰り返すという『学びのプロセス』に重点を置いた学習を実践しやすいと考えました」

現在は、種子の数など生態調査する班と、具体的な除草方法を探す班に分かれて植物研究を行っているフェーズ。学校の敷地内なので強い薬剤の使用ができないため、除草班では身近なもので安価に除草できる方法を模索中だ。

「先日は、100円ショップでクエン酸や重曹を購入してチャレンジして、『まったく効かないという結果』を得ることができました。自分たちが失敗したことから、2学期に取り組むべき課題や目標を見つけることができました。生徒たちは今、失敗を恐れずに仮説を立てて実験をやってみることをとてもポジティブに楽しみながら取り組んでいます。だからこそ、こういった『失敗という結果』がでることも、教員は受け入れなければならないと感じています」

このような学びのプロセスを通して、生徒の主体性が伸びるような指導がしたいという日髙先生。課題研究での生徒の動きを見ていると、みんなで計画立てをするような場面でも、黙っている生徒はほとんどおらず、間違っていたとしても積極的に発言をしたり、自分たちの役割分担をコミュニケーションによってクリアしたり。生徒の成長を随所に感じているし、なによりも生徒が楽しそうに取り組んでいるのがうれしいと目を細める。

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