FOCUS

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2021年9月 No.531

学びのプロセスに重点を置いた課題研究「失敗」という成果が生徒を成長に導いた

実習に取り入れたコーチング 生徒の表情がいきいきと変化

生徒に主体を置いた指導方法は、課題研究だけにはとどまらない。日髙先生は担当している2年生のトータルステーションのトラバース測量の実習でもコーチング的な要素を組み入れ、生徒が目標に向かって歩みを進められるよう導いている。

「実習ではしっかりとしたゴール設定が重要だと感じています。それを達成するために何が必要なのか『キーワード』を明確にし、最後にはきちんと振り返りを行うことを徹底しています。また、単に振り返るのではなく、『Good/Bad/Next』という視点を持ち、『僕たちのチームはここに失敗したから、みんなも気をつけよう』というような自発的な行動や発言を促すよう指導しています。例えばトータルステーションを据え付ける実習の時には、『3分以内に据え付ける』など、ちょっとチャレンジングなゴールを設定しています。据え付けをするのでキーワードは『求心と整準』。またもう一つのゴールであるスピードアップを達成するために、『なにかキーワードになることはないかな?』と投げかけ、与えるばかりでなく生徒からキーワードを引き出すことも大切です。ここで出てきたキーワードに気をつけながら実習を進めようと促すと、自然と自分たちで工夫を凝らす場面が多く見られるんですね。そうすると、やらされているのではなく『自分たちで勉強をしているぞ』という雰囲気が出ていて、生徒はいきいきといい表情をしていますね」

試行錯誤をしながら挑む課題研究は、物事を探求する力を身につけ、
仲間とともに成し遂げる達成感も知ることができる格好の機会。
楽しそうに取り組む生徒たちの笑顔が、日髙先生の原動力だ

日進月歩の建設業界だからこそ基礎の重要性が浮き彫りに

このように生徒に主体を置いた、コーチング的な指導に積極的に取り組んで約10年。積み重ねてきたからこそ日髙先生が感じているのが、コーチングとティーチングのバランスの重要性だ。

「自分たちで考えて行動できるよう指導することは、とても大切なことです。一方で、学校なのでやり方を教えることも当然必要です。例えば、今、建設の現場ではi-Constructionが進んでいます。最先端のICT技術を活用した施工が実施されてはいますが、用語や図面の見方など基礎となる部分をしっかりティーチングしなければ、新技術もうまく活用できません。技術の進化が目まぐるしいからこそ、この基本的でありかつ重要な知識がこれからの土木技術者には必要なのだと感じています。だからこそ、生徒たちに基礎的なことを楽しみながらどのようにティーチングしていくのか。これは私の目下の課題です」

 

阿波しらさぎ大橋

吉野川河口部にかかる「阿波しらさぎ大橋」。環境に配慮し設計されたこの橋は、斜張橋とケーブルトラスのそれぞれの特徴を活かした珍しい橋梁です。まるで両翼を広げ今まさに干潟から飛び立とうとするしらさぎのような美しさが印象的です。

徳島県立徳島科学技術高等学校

〒770-0006 徳島県徳島市北矢三町2丁目1-1
WEB: https://tokushima-hst.tokushima-ec.ed.jp/

 

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