FOCUS

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2017年9月号 No.491

地域の守り手として協会独自の防災・維持管理システムの活用

栃木県建設業協会は、国や栃木県等との災害協定に基づき、組織力や機動力を活かした異常気象時のパトロールや緊急出動を始め、地域の守り手として県等の補完機能を果たしています。
当会で独自に開発した「道路河川等管理情報システム」(建設業振興基金の助成金活用)により災害対応等に成果を上げています。

道路河川等管理情報システムについて

道路河川等管理情報システムは、災害発生時には、道路、河川等の被災情報を広く、迅速に収集し、施設の管理者である栃木県県土整備部等に写真や位置情報を報告をするとともに、平時には除雪や道路河川等の維持業務に運用されています。
栃木県発注の「道路及び河川等維持管理統合業務」は、平成29年度には、協会10支部に併設されている10協同組合のうち、8協同組合で共同受注されています。県管理の道路や河川の約90%の維持管理を受注していることから、事務の効率化を図るため、道路河川等管理情報システムを構築しました。各組合の構成員が除雪、維持の一日の作業をインターネット上のシステムに入力すると、集計され帳票が出力されます。

「道路河川等管理情報システム」の概要

実際の災害等への対応事例

(1)平成26年2月豪雪の対応
平成26年2月豪雪では、栃木県内でも交通渋滞やビニールハウスの倒壊など甚大な被害がありましたが、特に県土面積の4分の1を占め、世界遺産「日光の社寺」を有する日光支部では徹夜の除雪作業が行われました。

除雪隊出発前の一コマ

グラフは、「道路河川等管理情報システム」に入力された日光建設業協同組合の除雪作業を比較したものです。日光建設業協同組合の委託除雪道路は39路線、482㎞になっており、これを9地区に分け44社で分担施工しています。平成26年豪雪時の対応と翌年の除雪業務を比較すると豪雪時には総労働時間が10,878時間/月となっており、翌年2月の2.4倍となっています。しかも夜間の労働時間も2,163時間で総労働時間の19.8%となっています。建設工事の発注については平準化への取り組みが行われていますが、除雪を含む災害対応は災害時のピークへの対応が求められています。

日光建設業協同組合の除雪作業時間(2期分)

H26年2月豪雪時における徹夜の除雪作業

(2)平成27年9月関東・東北豪雨の対応
平成27年9月関東・東北豪雨では、2つの台風の影響により発生した線状降水帯により、関東地方北部から東北地方南部を中心として24時間雨量が300ミリ以上の豪雨となり、鬼怒川の決壊など甚大な被害があったところです。
道路河川等管理情報システムへ報告された309件の写真・地図・コメントにより、栃木県県土整備部は迅速な応急復旧や交通誘導等の指示を行い、各支部の協同組合は迅速に応急復旧工事を実施しました。

第1報 9月10日 12:04 鬼怒川喜楽橋現状報告。橋が途中からありません。
第2報 9月10日 15:46 鬼怒川喜楽橋崩壊 水位は朝より1mは下がっています。

関東・東北豪雨による栃木県内の被害は、「公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法」によると、公共土木施設で595箇所、198億7,640万円、治山・林道施設で37箇所、4億4185万円、農地・農業用施設で308箇所、18億2,944万円の合計940箇所、221億4,769万円となりました。

9月10日 18:38 田川金井田橋上流左岸洗堀、立ち入り禁止対策実施中です。(宇都宮市 鬼怒川支流田川)

システムの導入効果

当初、道路河川等管理情報システムは、災害対応の機能だけでしたが、共同受注の拡大に伴い除雪や維持の機能を追加しました。システムを使用することにより各協同組合の維持管理業務がスムーズに行われ、県の補完機能としての役割分担が評価につながり、現在では8協同組合で共同受注しています。

今後の展開等について

当協会では、県の維持管理における補完的役割を踏まえた地域密着型として、ネットワークや機動力・動員力を有している建設業協同組合を活用した共同受注について、平成22年度から調整を図りながら展開してきました。
栃木県から「道路及び河川等維持管理統合型業務」として除雪等を含んだ道路・河川等の維持管理業務を共同受注し、通常の維持管理業務を行うとともに、災害時には現場の最前線で応急復旧等を行うなど「地域の守り手」として活動していますが、次のような課題等が見受けられます。
国土交通省による資料においても、地域の公共施設の維持管理を目的とした地域維持型契約においては、除雪や清掃、除草などの「業務」、そして、補修工事や維持修繕などの「工事」を包括して発注するケースが見られ、「業務」と「工事」のいずれかの区別で発注するかは、それぞれのウェイトや予算制約上の事情により、発注団体毎に判断が異なっております。将来、地方でのインフラの維持管理の重要性が増す中で、実態に即した地域維持型契約として、「業務」と「工事」の両方の形態を併せ持った新たな発注区分の創設が課題となっています。
一方、全国各地でも大規模な災害が頻発しており、迅速かつ的確に災害に備えることは非常に重要なことであり、大雨警報など災害対応の待機やパトロール、点検業務も積算上の位置付けを明確にしてほしいと考えております。
また、災害時における道路啓開等ライフラインの確保や災害現場での緊急対応などにおいても、県民の安全・安心に迅速に対応するため、緊急自動車の配備等も踏まえた緊急時における警察や消防などと連携した体制の確立や、「地域の守り手」として地域維持を担う地域の建設業の具体的な役割や位置付けについて、建設業に対する地域の信頼やイメージアップの観点からも、より明確にしてほしいと考えております。

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