FOCUS

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2020年5月号 No.518

学校内や地域のお困りごとを教材に課題を発見し、解決するノウハウの習得を目指す

創立76年の岡山県立笠岡工業高等学校は、備西地域唯一の県立工業高校。国の天然記念物・カブトガニ繁殖地がある笠岡湾の近くに位置することもあり、「環境にやさしいものづくり」を重視しています。平成30年度からは、地域と連携した取り組みに重きを置いた教育課程へと再編。「地域のお役に立てる人財の育成」を目指した“課題解決型学習”について、環境土木科の山本茂樹先生に伺いました。

社会で困ったときに役立つ課題発見~解決の力を育成

改訂された学習指導要領から山本先生が読み取ったポイントは、「地域と協力し、自分で考える力」を養うこと。授業を通し、いかにその力を育てるか。山本先生は、技術的なことの習得もさることながら、「課題を発見して解決していくノウハウ」を伝えることを大切にしたいと考えている。その一環として、昨年初めて取り組んだのが、「笠工プロジェクトデザイン」という課題解決型学習。3年生を数班に分け、「笠工を良くするためにどうするか?」という大テーマのもと、生徒が自ら学校内にある問題を発見。解決する方法を考えるという授業だ。金沢工業大学で行われているプロジェクトデザインの授業を参考にしたもので、当初は「高校生にもできるかな?」と不安はあった。しかしそんな心配は、不要だった。
「生徒たちは予想以上に力を発揮してくれました。『校則を変えたい』『学校をきれいにしたい』など、生徒目線での課題をたくさん発見。環境に関する教科もある学科なので、住環境の分野から『笠工をきれいにしよう』とテーマを決定。学校内を歩いて汚れている場所を探してベスト3を決め、どのように解決したらよいかを考えました。この時、『PDCAサイクルのPがここ、Dはここ』と黒板に書きながら説明すると、生徒からは『PDCAサイクルは、施工管理の授業でやった!』などと声が上がるんですね。これまで学んだことが、身についているなと感じました」

授業内では物理的な解決まで実施するのは難しい。そこで、ポスターセッションを学習のゴールに設定した。発表に用いるポスターを作成するため意見交換をしていると、どうしても発想に行きづまり、静かになる。「そんな時こそ、私の出番」という山本先生。
「やりたいことがあるけどお金がないと、煮詰まっているときがありました。『OBに寄付してもらうという考え方があるよ』などと解決策の糸口をアドバイスすると、そこからまた議論が広がります。『ほかにも方法はないかな』と、タブレット端末を使って自分たちで調べる動きもみられました」

このようなグループ学習で山本先生が大切にしているのは、「相手の意見を受け入れる、肯定すること」。生徒が「言って良かった」と思う環境をつくることで、意見が活発になる。
「現代の若者は、“ネット弁慶”な傾向があります。しかし、こういった授業を積み重ねることで笠工の生徒たちは、面と向かって話をするコミュニケーション能力が非常に向上したなと感じています」

 

社会福祉法人 伸成会 富岡保育園にテーブルといすを納品した贈呈式。
仕上げの作業を生徒と一緒に、ハンマーを使って一生懸命にダボを打ち込む園児

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