FOCUS

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2020年5月号 No.518

学校内や地域のお困りごとを教材に課題を発見し、解決するノウハウの習得を目指す

“地域のお困りごと”を課題解決型学習で解消

また、指導目標である「地域に役立てる人財育成」を実現するために、平成29年度から課題研究の授業内で立ち上げたのが、バーチャル工房「笠工テクノ工房」だ。
「笠工テクノ工房とは、地域の幼稚園や保育園、小中学校、特別支援学校、笠岡市などから『何かお困りごとはないですか?』と要望を募り、その依頼にお応えするものです。主にものづくりをして“納品”しますが、場合によっては笠岡湾の環境に関する依頼もあります。水質を清浄化する種子植物であり、指標生物でもあるアマモが、どれくらい生息しているか、ドローンを使って面積計測するなど行いました」

昨年度は、2つの保育園に園庭で使うテーブル&いすと、教室の仕切りにも使える収納棚を納品した。保育園から「教室の仕切りと収納棚がほしい」という要望を受け、生徒自ら依頼主との打ち合わせ、製作にかけられる時間的な余裕をも考慮。その結果、「仕切りと収納の2役を担う棚にして、時間短縮しよう」と発想したのは、すべて生徒のアイデアだった。
「技術的なことはもちろん教えますが、それ以外はすべて生徒主導です。工程表も自分たちでつくっているので、『納期が迫っているけど、進捗が遅れて困っています』という相談も。具体的なフォローアップは大切なのでその様な時は手伝います」

一見放任にも見える山本先生の指導方針だが、生徒からは「自分たちでしっかりと考えてアイデアを実現できるのはうれしい」「役割分担をしながら作業を進めるのは、会社の研修に似ているのかなと思う」と好評だ。また、「喜びの共有や達成感を経験できた。将来、ものづくりの仕事に携わるときに、役に立つと思う」と、将来の担い手として頼もしい感想を述べる生徒もいる。

園児が遊ぶときを想像しながら、天板は直線ではなく体がすっぽりはまるような曲線に。想定通り、大喜びの園児たち。
「おままごとに使いたい!」と早速テーブルを囲み遊んでいた

5年後10年後に役立つ“乗り越える力”

授業や実習、笠工プロジェクトデザインや笠工テクノ工房、すべての学習を通して、「何年か後に、『やってよかったな』と思ってほしい」という山本先生。
「彼らがそれを実感するときは、きっと彼らが困ったときです。働き始めて『しんどいな』ということがあっても、『あのときはこうやって乗り越えたしな』『先生にこんなノウハウを教えてもらったな』と思い出して、つらい時に乗り越えられる強さを、身につけて巣立ってくれたらなと思います」

そして5年後、10年後、自分が若手を育成する立場になったときにこそ、笠工での学びを活かしてもらいたいと山本先生は優しく語る。

 

カブトガニ博物館

同校の地域貢献活動で、カブトガニ生息域の清掃活動を行っていることもあり、笠工生にとっては馴染みの場所。
VYS (Voluntary、Youth、Social workerの略)部では、館が行う小学生向けイベントにサポートとして参加することも。

 

岡山県立笠岡工業高等学校

〒714-0043 岡山県笠岡市横島808
WEB:http://www.kasako.okayama-c.ed.jp/

 

◎本誌記事の無断転載を固く禁じます。

 

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