FOCUS

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2020年3月号 No.516

建設業への動機づけは、2年時の体験が肝になる!建設業協会との連携で生まれる充実の工業教育

城下町として栄えた石川県金沢市は、加賀友禅や金箔など、藩政時代からの伝統が息づく街です。金沢市立工業高等学校は、先人たちの技術を受け継ぐものづくりの街・金沢市が、唯一設置する高校。平成27年度に「金沢型工業教育モデル」の提言を受け、「21世紀日本のものづくりを担う工業人の育成」を目指し、知識や技術の向上だけでなく、生徒の将来を見据えたキャリア教育にも力を入れています。土木科・塚本勇洋先生に、その指導方針を伺いました。

企業や地域の建設業協会と連携将来を見据えたキャリア教育

昭和3年に設立され、創立92年の歴史を誇る金沢市立工業高校。石川県内で唯一、土木科と建築科を有する同校は、県内の工業人の育成を牽引し、地域産業に貢献する優秀な人材を多く輩出してきました。部活動も盛んで、特に相撲や水球はインターハイに何度も入賞するほどの実力です。また、地域の建設業協会や企業との密な連携によって生まれる工業教育の数々は、同校の強み。外部と関わる機会を多く設け、「建設業への興味関心を深めるきっかけづくり」を大切にしています。

「しりこう」の愛称で親しまれている同校。県内企業への就職率もとても高く、地域産業の発展に貢献している

■ ■ 外部と連携して行われる工業教育には、どのようなものがありますか?

インターンシップや現場見学、3DレーザースキャナーやGNSS測量といった学校にはない測量機器を使った実習など、貴重な体験をさせていただいています。

特に金沢建設業協会とは、より親密な協力関係を築いています。3年生の春から秋にかけて行っている課題研究では、協会の職員が毎週のように本校を訪問。生徒の研究に対するアドバイスや資材の提供など、手厚いサポートをしてくれています。協会の方と教員の打ち合わせの機会もとても多いです。来年度の取り組みについて相談したり、「こういう実習をしませんか?」とご提案いただいたりと、新しい施策を一緒に考え実践してきました。

連携によって実現した取り組みのひとつが、石川県建設業協会が主催する社会人向け測量コンテストへの出場です。コンテスト種目になっている水準測量の実習が始まるのは1年生の春。その冬に行われる校内予選を勝ち抜いた上位3組が、2年生の6月に開催されるコンテストに出場します。コンテスト出場という大きな目標があることで、学びに対する生徒の姿勢も変わり、モチベーション向上にもつながると感じています。はじめて参加した大会では、残念ながら入賞には至りませんでした。しかし、社会人に混じって競うこと自体が有意義な体験。参加した生徒は、大きな自信を持つことができたのではないかと思います。

■ ■ 地域連携の取り組みから、生徒にはどんな力を身につけてほしいですか?

きちんと相手の話を聞き、自分の言葉で話せる力を身につけてほしいです。話すことは、どんな仕事をする上でも武器となります。土木の仕事を例にすると、世間では肉体労働というイメージを持っている人が多いと思いますが、実際はそれだけではありません。現場監督になれば、指示を出したり、打ち合わせをしたり、部材を発注したりと、話すスキルはいろんな場面で求められます。普段は明るく元気でも、大人がいる場や大勢の前に出ると、委縮してしまう子は結構多い。そのため、学生のうちから外部の人と積極的に話す機会をつくり、慣れてもらうことが大切だと考えています。

2年生を対象に金沢建設業協会と一緒に開催している「意見交換会」は、話すスキルを磨くには最適です。地元企業から建設業界の現状について説明を受け、それに対し生徒から「どんな仕事なのか」「どんな資格がいるのか」など、就職に関して抱えている疑問や不安を投げかけます。最後には、聞いたことや話したことをまとめて発表する場も設けているので、「聞く・話す」のいい練習になっていると思います。

「高校生ものづくりコンテスト(測量部門)」の石川県大会は、現在12連覇中。北信越大会を勝ち進み、全国大会優勝を目標に日々鍛錬を重ねている

一年生から全員ドローンを導入した実習を今年から初めて本格化。先端技術に触れ、知識を学ぶ機会を増やすことで可能性もひろがる

 

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