FOCUS

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2019年9月号 No.511

目指せ!工業高校における防災教育のリーダー校 成果を発信することが、生徒の真の学びに

実践の場を意識した生徒が主体の考える学習

■ 生徒たちにはどんなことを身につけてほしいですか?

地域に貢献する土木技術者であり、かつ地域で活躍する防災リーダーになってもらいたいと思っています。災害時にご年配の方や小さな子どもを安全に誘導したり守ったりできるリーダーになるためには、適切な判断をしなければなりません。その判断力を養う取り組みのひとつが、災害対応カードゲーム教材「クロスロード」を使用した実習です。この教材は、「こういう場面で、あなたはどういう行動を取りますか」という問いに、「Yes/No」のカードで自分の考えを示しながら、参加者同士が意見交換をするものです。「自分がこの立場で災害現場にいたらどうする?」と、考えていくゲーム形式の学びなので、生徒たちは楽しみながら取り組んでいます。

クロスロードの実習や学科設定科目である「防災工学」の学びの延長線上で、防災士の資格取得ができたらいいと思っています。これには市役所や大学など外部との連携が必要なため、防災士の資格取得に向けて取り組みを進めています。

■ ■  授業の進め方で気を配っていることはありますか?

身近なニュースなどを用いながら授業を始めることもあります。雑談の延長線で授業に入っていくのですが、たまには話が脱線したままのときも(笑)。最近では、ノートルダム大聖堂の火災も話題にしました。「ノートルダム大聖堂は世界遺産だけど、土木遺産というものもあるんだよ。群馬県内にどんなものがあるか知ってるかい?」という話から、インフラや社会基盤の授業に入っていく……といった感じです。教科書をじっと見る授業というよりは、「外の屋根を見てごらん」「あそこにクレーンが立ってるよね」など、窓の外を眺めることも多い。生徒たちの興味と理解を促すためにも、「なるべく身近なところから話を広げていく」ということを心がけています。

カードゲーム「クロスロード」では、生徒と教師が一緒になってゲームを行うことに意義がある。普段とは違う様子で、生徒たちはゲームを楽しむ

強度確保のためにどうするか自分たちで考えながら、力を合わせて段ボールベッドを作成

■ 授業ではどのような工夫をしていますか?

高校での3年間は、社会に出るためのトレーニングの場だと考えています。生徒ひとり一人が、自分で考えて行動できるような環境をつくることが、私たち教員の役割ではないでしょうか。その環境づくりの一環として、本校では課題研究のテーマ決めから生徒たち自身で行っています。はじめは「防災関係で何かつくりたいものを探せ」という調べ学習からはじめます。段ボールベッドをつくったときには、どうしたら人が乗れるほどの強度にできるかと、試行錯誤しながら自分たちで問題解決をしていきました。教員から与えられたものではなく、自分で考えて選んだ題材なので、アイデアがたくさん出てくるし積極性も増します。その他、日常の授業でも、考える時間をたくさんつくることを心がけています。「これについてどう思う?」とこちらから問題提起したり、「◯◯くんはこういっているけど、君はどう?」と意見交換を促したり。教員が一方的にしゃべるのではなく、アクティブラーニングの授業法を積極的に実践し、生徒と多くの言葉のキャッチボールがしたいですね。そのやり取りはきっと、建設や防災の現場で不可欠なコミュニケーション力にもつながるのだと思います。

■ 社会に巣立つ生徒たちには、どのような大人になってほしいですか?

将来、それぞれの立場で決して驕ることなく、きちんとあいさつをし、時間を守り、掃除も率先してする他の模範となるような人であってほしいですね。本校の生徒には人とのつながりの大切さを忘れてほしくない。地域で活躍する土木技術者として防災の根底にある助け合い、支え合いという気持ちを持ち続けていてほしいです。

課題研究で学校敷地内につくった「かまどベンチ」。いざというときに率先して使えるよう、使い方などを説明する授業も実施

「チーム・都市防災」は、生徒も教員も「元気で明るく!」を合言葉に毎日授業を行っている

 

新潟県立新潟県央工業高等学校

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