FOCUS

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2023年7・8月号 No.550

快適に学べる最新の機器や実習室を整備。地域と連携した『デュアルシステム』で生徒を育む!

『デュアルシステム』から
見えてきたもの

建設科の大きな特徴の一つが、現場実習の年間プログラム『デュアルシステム』の取り組みだ。これは2年生時に月2回程度、1日6時間分(年間120時間分)の長期間の現場実習を横須賀建設業協会・神奈川県建設業協会横須賀支部と連携して行うもの。施工現場の見学や協会会員企業・市役所・県でのインターンシップなどに加え、測量や図面の作成、アスファルト舗装などを通して、生徒たちの実践的な学びを図っている。

「建設科に在籍する全生徒が学校での座学と外部での実習を並行して行う『デュアルシステム』は、神奈川県内では初めての取り組み。開始まで入念に協議を重ねて段取りを組んできましたが、蓋を開けてみないとわからない部分も多く、運用を通して課題も見えてきました。例えば、実習中の生徒への指示や管理の面です。実習日の朝、点呼をとって生徒を送り出すまでは教員のほうで見ることができるのですが、実習先では協会の方に見ていただく形になります。私たちに代わって授業を行っていただくので、教員がいない現場でどのように生徒に指示を出せばよいか、どのように生徒の動きを把握するかなどの戸惑いも生まれ、当初からすべてが円滑に運んだわけではありませんでした。ただ実習を終えるたびに協会側・教員側で意見をすり合わせる機会を設けて改善を図り、今はよりスムーズに運用できるようになってきました。どういった現場で実習を行うか、座学と実習のバランスをどうするかなど、来年度に向けての改善点なども抽出しながら引続き段取りと調整を重ね、より無理なく運用できる体制を整えていきたいと思います」。


デュアルシステムの中での現場実習や出前授業を経て学びを深める生徒たち。現場見学会などにも積極的だ。「新築や解体の工事現場など、現場見学会は他に類を見ないほどの頻度で行っています。突発的に現場見学のチャンスが訪れることもあるため、あらかじめ調整のしやすい時間割を組むなど、実践的な学びの機会を重視しています」

周りの信望を
得られる人材へ

「お世話になっていた方から“教職に就いてみては?”と勧められたことが、工業教育に携わるきっかけでした。教壇に立ってみて思うのは、私たちは“生徒に教える”というよりも“生徒から教わる”立場だということ。日々接する中で、うまくいくこともあればそうでないこともある。そのすべてがこちらにとって学びになります」。

山下先生が担任として受け持つ2年生(建設科の第1期生)も、いよいよ将来に向けて資格取得などに取り組みはじめている。

「今年は2年生全員が測量士補試験に挑戦しました。また3年生になれば、2級土木施工管理技術検定(第一次)などにも挑みます。合格という結果も重要ではあるのですが、本当に大切なのは受験に向けて動いた・挑んだという経験だと思っています。自ら動き、何かを経験する。それこそが主体的な学びとなり、企業などに入った後の成長にもつながります。もちろん本気で資格取得に取り組みますし、全力でサポートしていきます」。

生徒には学生生活を通じて、大切に育んでもらいたいものがあると話す。

「人に信頼される人材、人に頼られる人間になってくれたらと思います。専門的な技能や知識も大切ですが、3年間を通して育んでもらいたいのは、そうした信望を得られる“人としての質”です。目の前の仕事一つひとつに真摯に取り組み、成果を出すことで新しい仕事が回ってくるもの。それがいずれ信頼へと変わり、企業の場合は給与の向上などにもつながるはずです。私がよく使うのは、“将来を嘱望して、現状の発展を怠ることなかれ”というある鉄道技術者の言葉。先のことばかり考えて目の前のことをしないのでは何の発展もない、という意味ですが、まさにそのとおりだな、と。今できることをしっかり、確実にやっていこうというのは、私自身のポリシーにもなっています。今は目下、横須賀建設業協会の方やその関係者の皆さまとともにデュアルシステムを成功に導くことに注力しています。その取り組み一つひとつが、生徒が成長するきっかけになれば、それに勝る喜びはないですね!」


建設科の新設にあたり、最新のレーザースキャナーなどの機器・機材を揃えるほか、明るく清潔感のある実習室や製図室なども確保。「環境を整えてあげることが、生徒が学ぶうえでも、生徒を集めるうえでも重要です。“建設DXなら横須賀工業高校”と謳われるよう、建設科の立ち上げ当初から設備投資には特に力を入れています」と山下先生

 

国営木曽三川公園

山下先生が挙げたのは、木曽川・長良川・揖斐川流域の広大なスペースと自然環境を活かして整備された木曽三川公園。「私の故郷である岐阜県、愛知県、三重県の3県にまたがる日本一広い国営公園です。大学での研究テーマが河川工学だったことや、この公園に関連した仕事に携わったことがあり、印象に残っています」

 

 

神奈川県立横須賀工業高等学校

〒238-0022 神奈川県横須賀市公郷町4-10
WEB:https://www.pen-kanagawa.ed.jp/yokosuka-th/

 

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