FOCUS

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2017年12・2018年1月号 No.494

関西圏の中核的な訓練施設として「一人でも多く」をモットーにフル稼働

三田建設技能研修センター(以下、センター)は、宿泊棟や実習場、建設機械等の設備を有する関西圏を代表する建設業の教育訓練施設として昭和57年の設立以来、多くの修了生を全国に送り出してきました。近年では、担い手育成・職業訓練に対するニーズの高まりに対応し、年間約1万人日の訓練を実施しています。今年度からは建設労働者緊急育成支援事業に新たな地方拠点として参画しています。センターの役割や活動について依藤庸正所長にお話を伺いました。

三田建設技能研修センターの概要

センターは、昭和57年7月に雇用促進事業団によって型枠、とび、鉄筋及び建設機械などの野丁場職種の職業訓練を行う施設として設置されたのが始まりです。現在、施設は兵庫県の所有となり、職業訓練法人近畿建設技能研修協会が土地・建物の貸与を受け、広域的な訓練施設として運営しています。事業を大別すると、技能士資格の取得などのレディメイド研修、企業等の要望に対応したオーダーメイド研修の他、技能士試験等の会場として実習場の貸出等も行っています。

建設労働者緊急育成支援事業に地方拠点として参画

依藤所長が着任した平成26年度に厚生労働省の「地域人づくり事業」の建設人材育成の分野を兵庫県から受託。さらに募集から職業訓練、就職支援までを行う建設労働者緊急育成支援事業が開始された平成27年度からは兵庫県建設業協会、建設産業専門団体近畿地区連合会、豊岡建設技術者養成センター等の地方拠点から技能講習を受託。これらの事業を通じて建設業未経験者に対する職業訓練に関して必要なノウハウが培われ、これがステップとなって、今年度から新たにセンター自らが地方拠点として建設労働者緊急育成支援事業に参画しました。

技能士コース とび

車両系建設機械運転技能講習(整地・運搬・積込み用、及び掘削用)

地方拠点として独自の育成プログラムをスタート

建設労働者緊急育成支援事業で、今年度募集したコースは、「空調・衛生基礎コース」と「女性限定 重機オペレーターコース」です。新たな地方拠点として事業に参画することから、あえて他ではやっていない特色のあるコースであることに意義があると考えました。
依藤所長は、「空調・衛生がないと、建物は活かせない。これまでその重要性があまり重んじられていないという現状がありました。こうした職種の人材育成も地方拠点としてどんどん広げていきたい」と力説します。
もう一つの「女性限定 重機オペレーターコース」は、全国で2例目、兵庫県では初めての取り組みとなります。
依藤所長は「これまでもセンターで行う講習には男性に混じって女性の姿もありましたが、気後れして積極的に動けない様子が見受けられました。それなら、あえて女性限定にしたほうがよいのではないかと考えました」と話します。
「女性でもできる仕事ではなく、女性だからできる仕事が建設業にはたくさんあり、実際に女性重機オペレーターは増える傾向にある」と依藤所長。33日間の講習で車両系建設機械の運転資格など建設業に必要な資格取得だけでなく、建設業経理事務士3・4級のほか、ドローンやCADの実習も含まれています。この狙いについて依藤所長は「女性は出産や育児など生活環境の変化で離職する事が多い。建設業経理事務士などの技能以外の資格を取得することにより、経営者も異動の選択肢を広げることができ、現場以外でも彼女たちが建設業で働き続けることができると考えたからです」と話します。

バリエーション豊富な講座の提供と着実な体制整備

人気の講座がある一方、中には予定人数に満たない講座もあるとのこと。それでも依藤所長は「我々には、公的なセクターとしての役割があると考えていますから、基本的なスタンスとして、一人でも参加希望者がいるのなら開講しようと職員には話しています。参加人数によっては赤字の講習もありますが、一つひとつの講習で損益を考えるのではなく、年間の受託事業全体で黒字になればいいと考えています」
所長着任時から様々な要請に応え、オーダーメイド研修も積極的に開催数を増やしている。着任した平成26年度の訓練実施実績が7,329人日に対し、平成27年度が9,935人日、平成28年度は9,384人日と、受講者数、講座実施日共に増加傾向。場所と時間には限りがあるため、違うコースであっても同じ講座がある場合は、一つの講座を複数のコース受講者が共有するなどスケジュールを調整する工夫をしています。
講習数増加に伴う講師確保といった課題解決のため、講師養成事業にも取り組み始めました。「センターでは現在、活動可能な講師を100名ほど確保していますが、講師人材の確保、講習技術の向上を目的とした技能者育成講師養成事業にも今年度から取り組みを開始しました。専門家にも助言を受けてテキストも作成しました。講師養成はセンターとして普遍的な事業にしていくつもりです。また教員免許更新制に対応して工業高校教員向けの選択領域の講習を始めたいと思っています」(依藤所長)
就業支援にも力を入れる必要があるとの考えから就業支援課を新設しました。ハローワークとのパイプを太いものにすべく、大阪管内のハローワーク職員を招いた講習見学もほぼ週に1度のペースで開催しています。
また、若者の建設産業への入職支援のため、主に工業高校生を対象として実施している体験セミナーや出前講座は、今後も引き続き積極的に行っていく予定です。

「女性限定 重機オペレーターコース」実習の見学に訪れたハローワーク職員

人口減少社会とどう向き合うか

センターでは現在、就職前段階、就職内定段階、就職直後段階、定着段階の4段階に分けて、就職訓練を体系づけて行っています。「人口減少社会においては、すべての産業が担い手不足という問題に直面します。建設業も業界外からの就労者等に対して門戸を広げていくことになるでしょう。特に、今後は、建設系の学科以外を卒業した若い人を採用する企業が増えてくるのではないかと考えています。小さい会社だと現場で手取り足取り教える余裕もノウハウも少ない。そうすると、若い人がなかなか仕事を覚えられず、離職する要因になってしまいます。そのため、入社後、2ヶ月程度センターに預けて貰えば、きっちりと建設業の基礎が身につけられるというコースを作りたいと考えています」と依藤所長。
関西圏における教育訓練の中核的な存在として、積極的に事業の幅を広げる三田建設技能研修センター。今後益々その活動に期待が高まっています。

工業高校への出前講座

◆職業訓練体系表

三田建設技能研修センター

設立:昭和57年7月
運営:職業訓練法人 近畿建設技能研修協会 会長 川嶋 実(一般社団法人兵庫県建設業協会 会長)
所在地:【本館・宿泊棟】兵庫県三田市武庫が丘6丁目1番地 【実習場】兵庫県三田市香下2122番地
会員数:正会員590社(団体会員8団体、事業主582社)
敷地面積:本館と実習場を合わせ敷地面積27,004.33㎡
昭和57年7月、雇用促進事業団(後に独立行政法人雇用・能力開発機構に改組)により、近畿地区の建設業関係職種に係る認定訓練、その他教育訓練を行うことを目的として設置。機構廃止後は、近畿建設技能研修協会が兵庫県から土地、建物等の貸与を受け運営。

本館

実習場


三田建設技能研修センター ホームページ http://www.kensetsu-sanda.ac.jp/

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