特集

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2021年10月 No.532

建設産業界への人材育成に向けた高校段階での取り組み

地域の企業やOBとの連携
─現場体験が生徒の大きな学びに─

続いて入学後の具体的な取り組みについてお聞きしたいと思います。先ほども話にあがりましたが、山下先生の高校では2022年度より新たに「建設科」を設置されるそうですね。

山:はい。本校では地域の企業や建設産業界からも要望の声が高い建設系技術者を育成するため、工業教育の充実を目指した「建設科」を新設することとなりました。建設科では土木も建築も幅広く教えていくほか、「デュアルシステム」という産業現場と連携した長期間の実習を2学年から取り入れる予定です。

清:「建設科」という学科で土木も建築もまとめている学校が増えてきましたね。そうした学校の場合、1学年では土木・建築をともに学び、2学年からどちらかのコースに分かれていく課程が主なようですが、横須賀工業も同様ですか?

山:本校の場合はやや特殊で、土木科目を中心にカリキュラムを組みながら、建築科目も学んでいけるスタイルをとっています。

企業の側でも、土木分野・建築分野双方のスペシャリストが育ってくれることを期待しているのでしょうね。

山:地元の企業側でも「人材を育ててほしい」という声とともに、育った人材に「地域の企業に定着してほしい」という想いがあり、デュアルシステムはそうした地元の企業の方々の協力もあって実現するものです。現場の方による指導の下での体験的な学びの機会は、生徒にとって非常に有意義なものになると思います。

清:山下先生の仰るとおり、実際の仕事や現場を体験することは生徒にとって意義深いものだと感じます。本校でも左官をされているOBに来校していただき、生徒に仕事を体験させる機会を設けたのですが、それをきっかけに左官業に興味を持ち、左官の世界に進んだ者も出てきました。また近年、学校外でも管更生工事の現場を見学させてもらう機会が増えたのですが、華やかなダムやトンネルばかりではなく、上水道・下水道工事など生活に密着したものを見せることで、「暮らしを支えている仕事」ということを生徒の心に刻むことができています。学校での授業とあわせて、実際の仕事にも肌で触れることで、生徒の意欲も上がります。OBや地域とのつながりを活かした取り組みは、今後さらに重要になっていくはずです。

インターンシップや現場見学といった体験は、想像以上に成果があるのですね。そうした受入れに積極的な企業は、学校や保護者の方からの信頼も増していきそうです。

デュアルシステムの取り組み

■建設科における長期間の現場実習について

2学年の専門科目「実習」では、校内における実習とともに、長期間の現場実習を校外で実施する。長期間の現場実習は地域の業界団体と連携し、5日間の集中型現場実習を含め、年間をとおして行う。現場実習を受け入れる地域の産業現場の方の指導の下、例えば工程管理や安全管理等について、体験的な学びの機会を設ける。校内における実習と校外での長期間の現場実習を組み合わせて展開することで、建築や土木に関する専門的な知識や実践的な技術・技能の習得を図り、建設産業の発展に主体的に取り組む態度を育成する。

(長期間の現場実習のイメージ)

※神奈川県HP/県立高校改革実施計画(Ⅱ期)横須賀工業高校専門学科(建設科)設置計画より

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