特集

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2021年10月 No.532

建設産業界への人材育成に向けた高校段階での取り組み

地域のインフラ整備やメンテナンスの担い手であり、災害時には地域社会の安全・安心の確保を担う守り手ともなる建設産業。少子高齢化などの影響を受けて慢性的な人材不足に陥る中で、新たな力となる若手の育成は喫緊の課題となっています。今回は建設産業界への人材育成に向けた高校段階での取り組みについて、第一線で教鞭をとる、兵庫県立兵庫工業高等学校の清水先生、神奈川県立横須賀工業高等学校の山下先生をお招きし、本財団 佐々木基理事長との意見交換を実施。未来の建設産業を支える若き力を育む工業高校の“今”をうかがいました。

 

清水 哲成 先生・・・(以下、清)
山下 敦 先生・・・・(以下、山)
佐々木 基 ・・・・・(以下、佐)

 

はじめに
─進路に悩む生徒にこそ奨めたい建設産業─

本日は建設産業界にとって重点的な課題である人材育成に向けた高校段階での取り組みを、育成の最前線に立つお二方にうかがっていきたいと思います。清水先生、山下先生、よろしくお願いいたします。

清・山:よろしくお願いします。

まずは高校入学前の動きをお聞きしたいのですが、中学生や中学校に対してはどのように働きかけているのでしょうか。

清:本校では年に3回、オープンハイスクールという機会を設けています。最初は見学中心、次に体験・実験・実習などを通して学科への理解を深めてもらい、普通科にはない学びがあることを示しています。訪れる中学生に一番効果的なのは、高校生たち自身によるプレゼンテーションや、実験・実習のデモンストレーションなどです。ときには中学校へ赴いて説明会などを実施する場合もあります。

丁寧に取り組まれているのですね。山下先生はいかがですか?

山:本校も同様の取り組みを行っています。おそらくどの工業高校も同じ動き方をしていると思いますね。また地元の中学校との結びつきも強いので、見学会・説明会なども3、4回ほど設けて、中学生たちに本校の魅力を伝えています。いちばん遅い時期では、12月頃まで実施しています。

そんな時期まで動かれているのですね。

山:12月頃の時点でも、進路の方向性が定まっていない中学生は相当数いるんです。そうした子たちにこそ、見学会・説明会でしっかりと本校に目を向けてもらいたいと思い、活動しています。

清:中学3年生にとってはどの進路を選ぶかという瀬戸際の時期にあるので、迷っている子にこそ積極的にアプローチをしていきますね。

そうした中学生たちに御校の魅力を感じてもらうためには、どのような言葉をかけるのですか?

清:一番はやはり、地域を支える土木という仕事の意義や価値を示すことですね。日常生活に不可欠なインフラを支えているのは土木であること、また例えば高層マンションや壮大な建築物も土木の力がなければ成り立たないといったことなどを話します。ちょうど昨年もオープンハイスクールへ訪れた子で、土木へ進むか、建築へ進むかを迷った末に土木を選んだ生徒がいました。入学式にはお母さんと一緒にお礼に来られたので、「良い学科に来たね」と迎えました。

山:私の場合も清水先生と同じく、土木が社会インフラをいかに支えているかということを伝えます。特に本校は、2022年度に新設する「建設科」という括りで土木も建築も幅広く教えていくため、土木というものがどんな仕事なのか、身近な暮らしの中でどのように役立っているのか、土木の対象領域についてしっかりと認識してもらうことが大切だと思っています。

清:一口に土木といっても範囲が広く、ダム・トンネル・橋など扱うものも多いですから、説明するのは少し大変なのですが、高校生たちでも土木と建築との違いが曖昧な生徒も多くて「橋を作るのも土木なんですか?」と驚く生徒もいるほどです。実際のところ、建築という分野はパースや図面といった見栄えのするものや、PRできる材料も豊富で人気があります。建築と同じくらい、土木についてももっと認識が広がってほしいと常日頃から思っています。

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