特集

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2019年12・2020年1月号 No.514

専門学校生&大学生の就職活動最前線

 学生たちの就職活動は、今どのような傾向がありますか?   

山野大星先生(以下、山野) 志向が非常に多様化している傾向があります。以前は情報源が限られていて、たとえばみんな同じテレビ番組をみて同じようなことに興味をもっていました。しかし今は、YouTubeをはじめメディアがたくさんあります。学生が自分の好みに合ったものから収集をしているので、昔のような絶対的な価値観ができにくい。その中でも、特に専門学校で比較的共通して耳にする企業選びの基準は、「家の近くで就職したい」「転勤は避けたい」ということです。それは、保護者のご意向も強いのかもしれません。


栗﨑真一郎先生(以下、栗﨑) なるほど、専門学校では地元志向が見られるのですね。私どもの大学の建築では関東・関西への就職率が高い傾向にあります。1年生の頃から授業で、「大きな建築・構造物をつくりたいなら、地元にいても機会が限られているぞ」と話している影響かと思っています。若いうちは地元を離れて大きなものづくりに携わる企業で活躍し、遠い将来、地元に戻ってくればいいと考えている生徒が多いです。


山野 就職エリアについての考え方は、確かに大学生と専門学校で違うかもしれませんね。専門学校の方がより、地域に根出した存在であることが影響するのでしょうね。
それから、以前から変わったと感じることは、ワークライフバランスを重要視する学生が増えたこと。「自分の生活はどうなるのだろう」と心配しているようです。


栗﨑 「どうしても設計をしたい!」という学生も、以前に比べると割合が減りましたよね。


山野 はい。入学当初は「住宅を設計するぞ」と志を抱いているのですが。学んでいるうちに自分の適性を見極めて、施工管理に志望先を変更する学生が多くなりました。それには、近年、施工管理の求人募集が増えていることが、影響している可能性もありますね。

 就職活動において、学生と企業の重要な接点はどこですか?   

山野 専門学校生にとって企業と初めての接点は、卒業期の4月に校内の体育館で実施する「合同企業説明会1」。これは、とても大切なポイントだと考えています。ここで就職を決めていく学生ももちろんいますが、4月の合同説明会で企業の方と直接会話を体験して初めて就職活動のモードに切り替わっていきます。合同説明会は企業と学生の“お見合い”の場だと思っているので、基本的には1社ずつ受験しています。工業高校生と同じですね。4年制大学の場合だと、エントリーシートを出して、同時に複数受験するスタイルで就職活動を行うのですよね?

栗﨑 2、3社は動いていますが、文系学部より少ないですね。今、就職戦線は過渡期に2あります。もっとも変わったのは、3月頃に東京の大きな会場に多数の企業が一斉に集まる合同説明が少なくなったこと。5、6年前までは広島から学生を100人ほど連れていっていたのですが、今は学校としては引率していません。それに代わるものとして、「インターンシップ3」が非常に大切な接点となりました。業界全体でまとまってではなく、個別での動きにシフトしてきた印象です。

山野 インターンシップについては、2年制の専門学校では今課題となっています。時間が限られているので、行けて1年生の夏休み。しかしタイミングが早すぎるという意見もあります。そうすると、2年生に上がる直前に数日いけるくらい。そこで企業の方に当校に来ていただき実施する疑似インターンシップです。キャンパス内で鉄筋や型枠などを組む体験型学習などはいいのかなと思っています。

栗﨑 なるほど。仕事を体験するという意味ではいいですね。企業で行うインターンシップに参加するときには、昼休みを大切にするようにいっています。「ぶっちゃけどうですか?」と聞けと。そうすると、「初任給はいくらだ?」「余暇時間は十分にとれるか?」といった価値観で企業探しをしていた学生が、「会社の雰囲気」「仕事の細かな内容」が大切なのだと意識をシフトして帰ってきます。

山野 それはいいですね。求人票に載っていない、そういった情報はとても大事。私たちも学生に企業を紹介するさい、会社が社員をどう育てるか、親睦(飲み会)はあるのかなどの情報を、企業の採用担当の方から教えていただければなと思います。

POINT1 合同企業説明会
日本工学院八王子専門学校では、4月に全学科対象で3日間開催。毎年学生を採用いただいている企業が、1日130~140社ブース出展。その後は順次、業界ごとに定期的に行っている。

 

POINT2 就職戦線は過渡期に
大学側の理想的な就職活動時期は、3年生の2~3月の春休みあたり。4年生になって早々に就職先が決まると、就職後に役立つ実地に近い学びを組み込んでいく。
専門学校の場合は、2年生の4月から秋くらいまでの間が、就職活動の決戦期となる。

 

POINT3 インターンシップ
現場ではトランジットを使った測量、設計事務所では与えられた課題を期間内で取り組みプレゼンテーション、また実際の模型製作を手伝うなどの体験をしている。

 

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