特集

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2018年6月号 No.499

働き方改革〜時短の実現に向けて〜

働き方改革 事例1
現場技術者の事務作業を女性の「現場支援担当者」がサポート

株式会社井木組(鳥取県東伯郡)

綿密な業務分析により現場作業の分業化を図る

大正元年(1912年)創業の井木組は働き方改革にいち早く取り組み、平成29年度の月平均時間外労働時間は24時間、年次有給休暇取得率は61.1%という驚くべき数値を出している。この高水準を支えているのが同社の女性社員だ。
従業員119名。うち女性社員は19名、事務職8名、設計と営業に3名、積算1名、そして現場支援業務に4名が従事している。「現場支援担当者の制度を導入し、現場の過重労働を減らすことを目標としています」と話すのは、工務管理部長 田中保史さんと総務部次長 八嶋美佐緒さん。同社は働き方の改善のため、10年かけてこの業務を導入した。

(写真左から)工務管理部長 田中さん 総務部次長 八嶋さん

現場支援担当者は、その名の通り現場技術者の事務作業をサポートし、技術者に現場業務に専念してもらうための役割。多くの現場技術者は、現場作業終了後に写真の整理、日報や提出書類の作成作業に追われ、超過勤務が常態化してしまう問題がある。現場支援担当者はそれらの事務作業を代行する。これにより現場技術者の事務作業量が軽減されるようにしている。3月まで2名体制だった現場支援担当者は、その重要さが社内に認知され、この4月から高校を卒業したばかりの女性新入社員2名が新たに加わり増強されている。
この業務の導入に欠かせないのが綿密な業務分析と作業の切り分け。井木組では部署長や工務管理、総務が連携を取り、各スタッフの業務フローを細かく分析。「今のところ現場事務所での作業となっていますが、ゆくゆくは本社で支援作業できるようにしていきたい」と田中さん。「将来的にはもっと人数を増やし、現場の技術者は本来の技術業務に集中できるようにしたい。そうすればより一層の作業時間の短縮につながります」と八嶋さんは語る。また、重点現場では経営者も参加する「評議委員会」を毎月開催し、現場の意思決定の迅速化や企業トップによる発注者との折衝など、更なる現場の効率化を図っている。

現場支援担当者スタッフ。新卒で入社した2名(右)は先輩社員のもとで研修中

働きやすい職場環境に向けた制度の創設や社員の意識改革に取り組む

そもそも、井木組が働き方を改善するきっかけとなったのは、平成20年に公益財団法人21世紀職業財団(当時は厚生省所管)の職場風土改革推進事業への参画だ。「派遣アドバイザーの指導に基づき職場環境を整備していたところ、『くるみん』の取得を勧められました。当時、タイミングよく複数名の男性社員、しかも管理職の家庭に赤ちゃんが生まれ、育児休暇を取得してもらい、その実績により『くるみん』を取得。それ以降、職場環境の改善を積み重ねています」と八嶋さん。「育児休暇は、男性は取得しづらい空気がありますが、まず管理職に取ってもらえたので後に続きやすいのではないか」。これを機に育児休暇取得率が上昇し、現在では女性の取得率は100%。さらに子どもの看護休暇や介護休暇も半日単位で取得できる制度も整えた。
また、働き方の柔軟性を図るため事務職にダブルキャスト制度を創設。「これまで事務職は配属された業務が退職までその業務一筋でした。そうなると、その人が休んでしまうと業務が滞ってしまう。その問題を解消するため、事務職は原則3~5年で担当業務を変えるようにしました。また、主担当者のほか副担当を決め、主担当が休暇のときは副担当が代行するようにしています」と、八嶋さん。担当が変わることで業務に対して新しい見方ができる効果も生まれ、業務へのモチベーションも上がっている。
このほかにも、有給休暇取得率のアップなど、より一層の職場環境改善を目指している。「『残業=頑張っている』という意識を変えることが重要。残業や休暇に対する管理職と社員の意識改革が必要不可欠。有休取得率も残業時間もまだ改善の余地がある。今後も業務内容や制度などで働く皆さんをサポートしていきたい」と八嶋さんは語る。毎月、社労士も交えて働き方改革会議を開催するなど創業106年企業の取組は今後も進んで行く。

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