特集

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2018年5月号 No.498

建設現場×安全

建設業の生産現場は、ほとんどが屋外であり天候や地形の影響を受ける。また、屋内において、ある程度固定されたメンバーが常設の機械設備を使って生産を行う製造業と違い、建設現場には様々な企業・職種の労働者と建設機械が入れ替わりながら作業が行われる。加えて、単品受注による生産物はその場で作り上げ、仮設で使われるものも多いことから、現場の状況は絶えず変化する。安全管理も変化する現場の状況に合わせた対応が求められる。

建設業における労働災害の概況等

建設業の労働災害は1960年代にピークに達し、その後1970年代後半に一旦上昇したものの、それ以降は減少傾向が続いている。20年前と比べて死亡災害は65.3%減少している図1。死亡災害件数を就業者数との割合で比較した場合においても20年前に比べ半減しており図2、建設業におけるリスクアセスメントの取り組みと重篤な危険要因への対応が確実に進んでいる。平成27年、平成28年と2年連続で死亡災害、死傷災害ともに過去最小となった。なお、平成29年は3月集計の速報値で死傷者数14,874人(前年比88人増)、死亡者数304人(前年比18人増)となっている。

図1 過去20年間の死亡災害発生状況(全産業、建設業)


図2
 死亡災害発生件数と建設業就業者数との比較

全産業のうち建設業が占める労働災害の割合(平成28年)を見ると、死亡災害では31.7%となっており、最も高い割合を占める。死傷災害(死亡災害及び休業4日以上の死傷災害)が12.8%であることから、建設業の労働災害が死亡災害に繋がりやすい傾向があることが窺える。
死亡災害の原因を建設業の三大災害といわれる種類別に見ると、墜落が135人(45.9%)、建設機械・クレーン等災害が34人(11.6%)、倒壊・崩壊が26人(8.8%)となっており図3、墜落によるものが最も多い。厚生労働省では2020年代前半までに、高さ5メートル程度以上の高所作業では胴体部全体を支持するフルハーネス型安全帯の着用を義務付ける方針であることが報道されている。

図3 災害種類別死亡災害発生状況(平成28年)

また、「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(建設職人基本法)」が平成29年3月に施行され、同年6月に施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本計画が閣議決定された。この中で、建設工事従事者の安全や健康の確保に必要な「安全衛生経費」について、①明確な積算がなされ下請負人まで確実に支払われるような実効性のある施策を検討・実施すること、②建設業法に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるものであり、立入検査等を通じた法令遵守の徹底を図ること、が明記された。国土交通省は、安全衛生経費について調査を行い、経費が下請まで適切に支払われるための施策を検討する。社会保険加入促進への対応に続き、当該経費の確保徹底には、建設産業界全体が連携・協力して取り組んでいく必要がある。

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