建設業の労務管理

建設業の労務管理
2020年9月号 No.521

同一労働同一賃金について

Photo・Text :
アスミル社会保険労務士事務所代表
特定社会保険労務士 櫻井 好美

民間企業に7年勤務後、2002年櫻井社会保険労務士事務所(現・アスミル社会保険労務士事務所)を設立。
【主なコンサルティング・セミナー内容】
就業規則・労働環境整備、人事評価制度コンサルティング、賃金制度コンサルティング、退職金コンサルティング、働き方改革セミナー、管理職向け労務管理セミナー、建設業むけ社会保険セミナー、介護セミナー、WLBセミナー、女性の働き方セミナー、学生むけ働く前に知っておいてほしいこと 等

いつからスタート?

大企業は2020年4月1日より、中小企業は2021年4月より同一労働同一賃金が適用されることになりました。

中小事業主の範囲

資本金の額または
出資の総額が

 または 

常時使用する
労働者数が
小売業   5,000万円以下 
サービス業 5,000万円以下
卸売業   1億円以下 
上記以外  3億円以下
小売業   50人以下
サービス業 100人以下
卸売業   100人以下
上記以外  300人以下

同一労働同一賃金とは?

同一企業内の正社員と非正規社員(パートタイム労働者、契約社員等)との間で、給与、賞与、各種手当といった賃金に関すること、また福利厚生や教育訓練等のあらゆる待遇について「不合理」な待遇差が禁止されることになりました。

原則的な考え方

※詳細は「同一労働同一賃金ガイドライン」(厚生労働省告示第430号)に記載
▶︎https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf

不利益変更とは?

非正規労働者の待遇改善をしていく上で、場合によっては正規労働者の条件を変更せざるを得ない場合もあるかもしれません。その解消に取り組む際は、労使での十分な話合いが必要です。労使での合意がなく、正規労働者の待遇を引き下げることを「不利益変更」といい、留意事項が法律で決められています。

労働契約法
第9条
原則として、労働者の合意が必要
労働契約法
第10条
就業規則の変更により労働条件を変更する場合は、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、以下の事項に照らして、合理的なものであること
・労働者の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の相当性
・労働組合等との交渉の状況
・その他の就業規則の変更にかかる事情

 

定年後の再雇用は?

日本の雇用では、60歳定年、その後労働条件を引き下げて65歳まで再雇用というケースをよくみます。今までは日本の雇用制度の慣行として問題とはされてきませんでした。ただ、同一労働同一賃金が施行されれば、再雇用後の有期契約労働者は、同一労働同一賃金の対象となります。待遇差が不合理かどうかは総合的に考慮されますが、従来のように、単に継続雇用で条件を下げるということは「不合理」と判断される可能性があります。今後は、再雇用についての労働条件も検討していく必要があります。

これからの取り組み

今までは正社員、アルバイト、パートタイマー等雇用形態を分けていれば、その雇用形態ごとに制度を決めていれば問題ありませんでした。正社員だから賞与と退職金がある、正社員だから家族手当がつくといったことが成り立っていました。しかしながら、同一労働同一賃金では、同じ仕事をしているのであれば雇用の形態で区別することはできず、同じ待遇にしなくてはいけないということになりました。ただし、能力に応じての賃金差ということは問題ありません。今まで日本は終身雇用で、年功的な賃金、正社員であれば定年退職金をだし、正社員雇用を守るために、パートタイム労働者や派遣をつかってきましたが、これからはこのスタイルが変わっていきます。私達も今までのような、この人だからいくらにしようといった給与の決め方(職能給)ではなく、この仕事だからいくらといった給与の決め方(職務給)へ変更をしていくときなのかもしれません。ただし、給与や会社の仕組みを変えていくのは、簡単なことではありませんので、1日も早く取り組み、計画的に実施していくことが必要です。まずは、自分達のまわりに不合理な待遇差がないか点検をすることから始めてみましょう。

 

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