建設経済の動向

建設経済の動向
2026年10月号 No 582

災害続きの夏、成長戦略の防災・国土強靱化に高まる期待

日経コンストラクション編集長 真鍋政彦

総額370兆円超の官民投資を想定した、「戦略17分野」の2040年度までの工程表が発表された。中でも、この夏の災害多発を受けて、「防災・国土強靱化」分野への期待値が高まっている。防災産業の発展はもちろんのこと、日本の経済成長をけん引する分野になれるか。

2026年7月、8月は、想定通りの酷暑が猛威を振るう夏となった。一方、想定外だったのは、国民を苦しめたのが熱中症だけでなかった点だ。7月28日に熊本県を震源とする最大震度7の熊本地震が発生。8月13日には千葉県で記録的な大雨に見舞われた。内閣府によると死者は熊本地震で38人、千葉豪雨で13人だ(8月25日時点)。残暑の暑さが避難者を苦しめる2次被害も懸念されており、災害列島日本において、問題は山積みだ。

こういった事態に、政府も指をくわえて見ているだけではない。高市早苗首相が本部長を務める日本成長戦略本部は、今後重点投資すべき「戦略17分野」の1つに防災・国土強靱(きょうじん)化を盛り込んだ。17分野には、40年度までに総額370兆円超の官民投資を想定。防災・国土強靱化には30年度までに2.6兆円を投じる。自動施工・遠隔施工やインフラの老朽化対策などを含めた防災技術を、開発から実装まで一貫して支援。30年度までに14.5兆円の経済波及効果を生み出し、海外展開も図る。26年11月に発足する防災庁の役割にも期待が高まる。

防災技術の実装支援の具体的な取り組み(出所:内閣府)

防災・国土強靱化分野の投資内容は、様々なリスクの最小化に向けた「危機管理投資」と、先端技術を伸ばす「成長投資」に大別している。このうち危機管理投資では、25年6月に閣議決定した第1次国土強靱化実施中期計画をベースに、「ライフラインの強靱化」や「防災インフラの整備・管理」などの事業を展開する。事業総額は5年間で20兆円強に上る規模だ。

熊本地震後の対応で見えた防災産業発展の芽
「守りの防災」だけでなく「攻めの防災」を

他方、成長投資では、デジタルを含む新技術を国や自治体が積極的に導入して、国内の防災産業の発展、海外展開の促進につなげる。開発・実装を後押しする新技術の例としては、(1)気象予測などの災害リスク情報関連技術、(2)人工衛星を活用した水道管の漏水検知などのインフラ老朽化対策技術、(3)建設機械などの自動施工・遠隔施工技術、(4)分散型の水処理技術などの防災資機材関連技術、の4つが挙がる。

26年7月の熊本地震後の対応では、上記に関連する新技術を基に、防災産業の発展につながる芽が出ている。現地に降る雨水などを使う分散型水処理技術に関する動きだ。

25年12月に設立されたJWAD(小規模分散型水循環システムの広域互助プラットフォームの運営・調整を担う組織)が、災害時に全国の自治体などが保有する生活用水資機材を相互に融通するための協定に基づき、26年8月17日までに全国の様々な自治体・団体から熊本県へ140台の水循環型のシャワーや手洗いスタンドを集約した。単純な比較はできないが、能登半島地震での対応よりも相当に早いという。平時と災害時の両方で技術を活用する「フェーズフリー」が鍵を握ることを証明した事例とも言える。

災害時の外力に耐えるような「守りの防災」だけでなく「攻めの防災」に力を入れなければ、災害対応に持続性はない。攻めの防災とはフェーズフリーの考えや新技術活用を推進したり、防災へ投資することが関係者のインセンティブになる社会を目指したりするという視点だ。後者は「良い防災技術が適切に評価され、投資対象になる社会の実装」とも言い換えられる。成長戦略でそういった防災産業を生み出せるかどうか、今後も注視したい。

第1次国土強靱化実施中期計画における「推進が特に必要となる施策」の事業規模の内訳(出所:内閣官房)

 

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