FRONTIER

FRONTIER
2023年7・8月号 No.550

「風景を自分の手で変えていく!」巧みな技と経験で、海や河川の安全を守る海洋土木工事。

善光ぜんこう 拓磨たくまさん
加賀建設株式会社
富山県出身

クルーズ船やコンテナ貨物船など、多くの船舶が寄港する石川県の金沢港。そうした船舶が安全に航行できるよう、海底に堆積している土砂を取り去る『しゅんせつ工事』に取り組むのが、加賀建設株式会社の善光拓磨さん。「同じ海の上でも、日によって風も潮の流れも違います。その時々に応じた判断を求められる海洋土木工事は、とても緊張感の高い仕事。ただ、仕事が終わればリラックスして和気あいあいと話せる、メリハリをつけて働ける現場です」。そう笑顔を見せる善光さんは、作業船団の甲板員として活躍するとともに、揚錨船(ようびょうせん:作業船を海上に係留するためのアンカーの設置・移設などを行う船)の船長を担い、ICT機器を巧みに操り工事を進める、現場に欠かすことのできない存在だ。

2年前から本格的にICTを取り入れたしゅんせつ工事に取り組んでいる同社。善光さん自身もICT活用の効果を実感している。「GPSによりリアルタイムで船の位置や傾きがわかるようになり、周囲の水深なども正確に把握できるようになりました。土砂をさらった後の海底の形状などがモニターで確認できるようになったことも、非常に大きいです。今までは経験に基づきながら捉えていたものが可視化されたことで、より効率的に作業を進められるようになりました」。

今や第一線で活躍する善光さんだが、入社前は海洋土木工事は未知の領域だった。「単に船を動かす仕事ではなく、ものづくりができる仕事がしたいと考え、加賀建設に入社しました。正直、海洋土木工事についてはほとんど知らなかったのですが、会社見学に訪れた際に“こんな船もあるんだ”“こんな仕事も面白そう”と感じたのが決め手でした」。最初の現場では、驚きの連続だったそう。「慣れない専門用語が行き交う中、どのように測深を行っているのかも分からず、すべてが新鮮でした。また、しゅんせつ工事に用いる台船は素材が鉄なので、夏はとにかく暑い!雨や雪との戦いに加え、船酔いとの戦いなど、陸の仕事では味わえない体験もありますね(笑)」。

そうした困難を乗り越えて、やるべき仕事を無事に収めた時の達成感はひとしおだ。「今も印象に残っているのは、防波堤の延伸工事の仕事。普段から通る海沿いの景色が自分たちの工事により変わっていく様子を見て、“風景を自分の手で変えていく”という何ものにも代えがたい喜びを感じました。まさに建設業ならではの醍醐味だと思います」。また会社によるバックアップも、善光さんの力の糧になっている。「給与面は働くためのモチベーションとしてもちろん大きいのですが、資格取得を応援してもらえるサポート体制や社風もすごくありがたいと感じています。建設機械施工技士資格を取得したのも、周りの勧めがきっかけでした。今後も現場で役立つ資格をさらに取得していきたいと思っています。ICTを取り入れた今でも、まだまだマニュアル化することのできない仕事や、培ってきたスキルに頼る微細な作業も数多くあります。能力や経験を活かしながら、これからも船舶の安全確保・海洋の汚濁防止に配慮した海洋土木工事に取り組んでいきたいです」。


加賀建設株式会社
代表取締役社長 鶴山 雄一 氏

創業80周年の節目を迎える当社では、担い手が不足する中で様々な状況にチームとして対応できるよう、現場と本社が連携する設備を強化した新たな社屋を設けました。今後も働く方の「学び」を支えていくため、様々な資格取得のサポートをはじめ、業務習得のためのOJT、給与や報酬の見える化などを積極的に推進し、新たな技術を活用しながら、次世代のために企業も個人も、そして地域も、いっしょに成長していける取り組みを続けていきたいと考えています。

建設人材育成優良企業表彰『不動産・建設経済局長賞』を受賞

 

【冊子PDFはこちら

関連記事

しんこう-Webとは
バックナンバー
アンケート募集中
メールマガジン配信希望はこちら