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2021年9月 No.531

岡山工業高校土木科生徒が学ぶ オンライン現場見学会

地域のインフラを支える現場から「未来の土木技術者」が学ぶ、リモートを活用した現場見学会。

6月16日、岡山県立岡山工業高校土木科で学ぶ生徒117名が、国土交通省中国地方整備局高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所が進める小田川合流点付替事業の現場をオンラインで見学。“コロナ禍にあっても地域の未来を支える若者たちに建設業界の役割や魅力を実感してもらいたい”という想いから始まった現場見学会の模様をレポートした。

生徒たちの挨拶からスタートした現場見学会。
モニターや資料を見つめ、事業の意義を実感。

「起立、礼!」生徒たちの挨拶から始まった現場見学会。冒頭では濱田所長が、各地で頻発する洪水被害と共に2018年7月の豪雨による高梁川水系小田川沿川の甚大な被害に触れ、その対策に取り組む事務所の意義を強調。「今後も継続して整備を行う中、皆さんのような若い力が必要になる」と、参加する生徒たちへ期待を寄せた。次に水谷工務課長より工事概要が解説され、堤防などの「ハード」と、地域の方に危険を認知してもらうといった「ソフト」の両面の重要性が説かれた。「人々が訪れ、町が活性化する。そうしたことまで含めて復旧・復興といえます」と述べ、SNSを活用した取り組み事例などを紹介。生徒たちも熱心に耳を傾ける。

スライド資料をもとに作業工程や取り組みを学習。
臨場感あるドローン映像や主観映像による疑似体験も。

続いて工事受注者の鹿島・大本・荒木JVの担当者が、現場での掘削や施工といった具体的な作業工程を説明。実際に使用されている大型重機の画像や発破掘削の様子のほか、ダンプ運転席からの主観映像、ドローン・レーザースキャナーを用いたICT活用による測量の様子なども紹介され、生徒たちの目を輝かせた。一日の始まりである朝礼・体操や、職長による作業内容説明のシーンなど、実際の現場で繰り広げられる光景を目にする中で、改めて建設業という仕事を理解し、興味を深めていったようだ。

 

モニターに映るスライドや映像での説明とあわせて、手元の資料で詳細に現地や作業工程について学習

ひたむきに地域と向き合う様子に「社会インフラを守る強い意志と、安全への想いを感じた」という感想も聞かれた

 

高校生たちと国・工事受注者の若手職員によるディスカッション。

後半では、高校生たちと岡山工業高校OBを含む国・工事受注者の若手職員によるディスカッションを実施。地域の安全を支える工事や生徒の多くが進むであろう建設業について高校生から様々な質問が挙がり、若手職員それぞれが経験をもとに思いや意見を伝えた。

  • 復興事業は地域との関係性が特に大切なものだと分かりました。地域から信頼を得るために意識していることはありますか?

地元の方としっかりコミュニケーションをとること。そして「なぜこの工事が必要か」を十分に理解してもらうことを大切にしています 〈大都建設 田辺さん〉

  • 現場の堤防護岸には「ファイト!」とペイントされたブロック積みがありますが、どういった想いが込められているのですか?

「災害に対して一丸となって頑張ろう」また「コロナ禍のような困難も一緒に乗り越えていこう」という気持ちを込めています〈国交省 棟田さん〉

  • 様々な年齢・立場の方と仕事を行っていく中で、工夫されていることはありますか?

皆さん年上なので、話し方や一つひとつの言葉選びが大切。連絡事項は相手に確実に伝わるよう心配りをしています。部活動の経験も役に立っていますね 〈奥野組 山本さん〉

  • 卒業後、建設業に就くにあたってどのような「心構え」を持つとよいでしょうか?

一生懸命に取り組むこと。分かったフリをせず、一つずつ相談しながらクリアしていくことだと思います。時間のメリハリなど、自己管理も大切です 〈三幸工務店 河合さん〉

私は神戸の被災地復興が最初の現場で、過酷な中でも地域の方に喜ばれることに使命感を持って臨めました。「誇りを持てる仕事」というのは、心の拠り所の一つになると思います 〈大本組 川原さん〉

  • 建設業にはいわゆる「3K」のイメージがあるのですが、女性目線から見て今の職場環境はどのように感じますか?

最近はエアコン付きのお手洗いなどが設置された快適な現場もあり、衛生面も向上しています。仕事は「慣れ」も大きいので、楽しみながら頑張れば大丈夫! 〈蜂谷工業 家高さん〉

  • 「仕事ができる人」「活躍している人」と評価されるのはどういった人ですか?

いろんな人を巻き込んで仕事ができる人。今のうちからいろんな世代の方にアドバイスをもらいコミュニケーションをとれる人は、いずれ必ず役に立つはずです 〈鹿島建設 山崎さん〉

何事にも興味を持ち積極的に質問できる人、質問をたくさんできる人は、将来的に活躍する人材になりますね 〈荒木組 清水さん〉

若手職員のアドバイスに真剣に耳を傾け、つぶさにメモを取る生徒たち。「現場の方の貴重な声を聞くことができ、将来のイメージがしやすくなった」「体調管理や自己管理は今のうちから意識できそう」といった感想も挙がるなど、建設業の世界で活躍する先輩たちの声は、生徒たちにとって何よりの手本となったようだ。

 

現場見学会を終えて──

コロナ禍に鑑みたオンラインという形ながら、非常に有意義な時間となった現場見学会。見学会後のアンケートでは参加した全生徒が「今後もこのような見学会を開催してほしい」と回答し、数多くの前向きな感想を聞くことができた。

生徒の92%が見学会前と比べて知識理解を深めることができた(満足69%・やや満足23%)と回答

生徒の声〈現場見学会の感想(一部抜粋)〉
  • 地域の安心と安全を守るために、インフラ整備は本当に欠かせないものなんだと実感しました
  • 「ファイト!」のブロックに込められた意味を聞き、さらに興味がわいてきました!
  • 現場で活躍している女性の方から「安全対策や衛生面もしっかりした職場環境」と聞き、期待が膨らみました
  • 今の自分を振り返り、勉強不足を痛感しました。もっと専門科目を学んでおきたいです
  • ネットで調べたつもりでしたが、オンラインで学んだことでとても理解が深まりました
  • 幅広い年齢層とのコミュニケーションや問題解決力・危険予知力・強いメンタルなどが大切だと学びました
  • ドローン活用などのICT施工の進化を実感し、効率化を追求する楽しさを感じました
  • 私も地域の方や周りの方を明るくし、感謝されるような仕事を目指していきたいです
  • 就職の心構えが聞けてよかったです。わかったフリをせず何でも質問し、一生懸命に頑張るということを実践します
  • 「人々が安心して訪れるまでが復興」という言葉に、土木という仕事に対するイメージが変わりました
  • 地元の方の協力があってこの職業が成り立つんだと、地域に理解してもらう大切さを知りました
  • 就職活動において自分で調べただけでは出てこない皆様の声を思い出し、志望動機や心構えに生かそうとおもいました

「未来の土木技術者を応援したい」という思いがしっかりと通じ、生徒それぞれの大きな学びと励みになったオンライン現場見学会。双方にとってプラスとなった今回の試みは、今後の現場見学会の新たな可能性を示す取り組みともなった。

 

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