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2018年3月号 No.496

しんこうTODAY 振興基金の活動報告

第22回建設業経営者研修
産業間の競争を踏まえて「人材確保・育成」の勝ち残り戦略とは
~人気企業の秘密について~

本財団では、2月16日(金)、フクラシア東京ステーションにて、「建設業経営者研修」を開催し、全国から約60名の建設業経営者の皆様にご参加いただきました。本研修会は、建設業経営における重要課題をテーマに開催してきましたが、今年は、ここ数年テーマとしている「担い手の確保・育成」を軸に、i-Constructionを活用した「生産性向上」の視点も加え、開催いたしました。研修会の概要をご報告します。

 

講演 1
建設技術の新たなステージi-Constructionにおける人材育成


立命館大学理工学部教授
建山 和由 氏

i-Constructionは、ICTを導入することが目的ではなく、生産性を上げることにより、建設業の体質を「給料」「休暇」「希望」で明るい展望をもつことができる新しい3Kに変えることが目的。機械が優位な仕事は機械に任せることによって、現場は、もっと創造的な仕事ができる場に変えていける。
i-Constructionに画一的なモデルはなく、自社の社員構成や規模等に応じて、それぞれに合った取り組みを行えばよい。成功している事例の共通点は、成果を組織内で共有化し、次回に活かす意識を高めていくということ、若手をうまく使っていること。
マネジメントに活かしている例として「タイムラプス」という早送りの技術を用いると、1日8時間の工事の映像も数分で振り返ることができる。現場で起こった問題点を素早く確認できるだけでなく、若手社員の教育や映像を元に社内で次に向けた議論もできる。
人口減少という日本の弱みを強みに変える。建設がその先頭を切る分野になればと思っている。

研修参加者の声
非常にわかりやすく、中小でも取り組める視点が大変良かったです。
動画を活用するという発想に興味を持ちました。ぜひ弊社でも実践しようと思います。
ICTを目的にするのではなく、活用につなげることについて学べました。
最新の事例で大変勉強になりました。会社でも検討材料に利用させていただきます。
ICTと生産性向上を分かりやすく解説していただきました。

 

講演 2
「30代以下が7割」の会社で感じる、教育とコミュニケーション、ワイガヤ感の重要性について


株式会社フクザワコーポレーション
代表取締役 福澤 直樹 氏

父から会社を引き継いだ当初、採用合同説明会では、ほとんどの学生に見向きもされず、やっと入社した学生も数年で半分くらいが辞めて行く状態だった。会社がモテないとダメなんだということを痛感し、自社のブランド力向上「頭でっかちなキン肉マン」を目指す。工事成績アップと自社施工にこだわり、重機類はできるだけ自社で保有・操作。結果、工事成績が上向き、長野県優良技術者表彰を14年連続で受賞できるようになった。
人材確保においては、まず企業という母体を強くして余裕をつくることが先で、採用というタマゴを得るのは後ではないかと感じる。事実、新卒採用を頑張りすぎると、現場の収益性は一時的に低下する。経営をしっかりさせておかないと、採用はできても良い社会人として熟成させるのは難しい。
高校を出たばかりの社員の友人には学生もいて、まだ遊んでおり、法定以上に休ませるくらいではないと続かない。彼らも、結婚をして子供を持つと、自然に強くなってくる。それを待つ余裕を持つことも大事だと感じている。小手先の即効薬を我々も最初は追ったが続かなかった。まずは新卒よりも目の前の社員、目の前の事業である建設業、これを大切にすることが一番の採用対策、育成対策になると思う。

研修参加者の声
人の育成と労働環境の改善は財務の改善なくしてできないという点について共感が持てました。ブランディングしていきたいと思います。
社内技能検定すごい! 工事成績UPすごい!
建設業で働く喜びを人材育成に取り入れている。家族的な経営方針、若者から選ばれる企業ブランド作り等、勉強になった。
社員に対する考え方が非常にすばらしいと思いました。また、実践したことによる結果も出ていて非常に素晴らしいと思いました。
「30代以下が7割」の会社ができるのは「社員は家族」という思いと行動が社長に備わっているからだと思う。

 

講演 3
一番の財産は多様な人財力~我が社の取り組み事例より


株式会社長岡塗装店 常務取締役
古志野 純子 氏

ワークライフバランス先進企業として、さまざまな媒体や省庁の白書で紹介されているが、これは、社員の問題を一つずつ諦めずに解決してきた結果に過ぎない。
取り組みのきっかけは、ベテラン職人の「若い職人が育たなければ会社がダメになる」という一言。当時は、5人入って7人辞めるような会社だった。そこで、かっこいい職人が働いている会社にしたい、経営利益も上げていきたい。その両方がうまくいく方法はないかと模索し、まず、若手教育のため65歳までの高齢者継続雇用制度を導入。次に新入社員として入ってきた男性が抱えていた育児問題を解決するために子どもの看護休暇、保育料補助などの制度を整備。子が小学校へ入学した母親社員のために、育児時短の期間延長、子ども手当の支給なども設けた。取り組みを始めてから約20年で、若い社員だけでなく、誰も辞めない会社となった。
まだまだ男性社会であるし、土日祝日にも仕事がある。しかし、若い社員が増加したことや資格者が増えたこと、計画的に休みを取れる体制を整えたことで、生産性が落ちずに会社の利益をきちんと上げることができている。これは私自身が一番体感したことであり、残っている問題点を集中的に片付けていきたいと思っている。

研修参加者の声
男性社員の育児制度について、子育て世代の男性にはいい制度だと思いました。会社独自の子育て制度がある事が社員にとっては良い事だと思いました。
会社の制度が見える化をされていて、とても参考になりました。弊社の制度も一度まとめてみたくなりました。
「社員と共に成長する企業」難しいテーマについて考えさせられました。
女性目線での気くばりが経営(人材確保・育成)に活かされていて参考になりました。
福利厚生に対する力の入れ方に驚きました。また、積極的に女性を採用し、現場に登用する事は見本になります。

 

講演 4
若手を採用するために大切だったこと


株式会社セカンドライフ 代表取締役
子安 克枝 氏

当社はトンネル工事の防水シート張りを請け負っている作業員10人の小さな会社で、トンネル工事において重要な作業とはいえ仕事自体が見えにくく、一般的に危険だと思われていて、また、共同生活の苦手感から採用の難しい業種でもある。
トンネル専門工事業協会が作成した「山の神様」というパンフレットを学校に配布したり、先生方とお話をしたり努力しているが、現場まで足を運んでもらうのはなかなか難しい。現在のところ、定着率もそれほど悪くはないが、昨年、久しぶりに入社してくれた新卒社員が、半年ほどで辞めてしまった。残念だったが、社員一同でなぜ辞めてしまったのか、どのように対応すれば良かったのか、居心地がいい場所が見つけられるようにしてあげることが大事だったということを話し合い、みんなで共有できたことは良かった。
当社は小さな会社だが、トンネルは誰もが絶対通るところなので、これからも面接に来てくれる方や働いている方にも「本当にすごい仕事をしている」ということを伝えていけたらと思う。

研修参加者の声
社員に会社での居場所を見つけてもらうという視点にはハッとさせられました。
仕事に誇りを持ち、若手の採用に取り組んでいる姿勢がうかがえる。参考にさせていただきます。
ホームページに作業内容を具体的に載せるというのは良いことだと思います。是非弊社も変えていきたいと思いました。
専門工事業者の魅力を発信される努力、社内でのコミュニケーション等の努力が伝わってきました。各社の努力が業界の人材不足の解消に伝わると思いますので、引き続き若手の確保を続けていただきたいと思いました。
若い社員を採用するためには、業界を正しく伝えるPRが必要と話を聞いて分かった。山の神って美人らしいよ! のキャッチコピーは良い。

 

パネルディスカッション
「人気企業の秘密について」


パネラー:建山 和由 氏(立命館大学) 福澤 直樹 氏(フクザワコーポレーション) 古志野 純子 氏(長岡塗装店) 東 君康 氏(東京都立総合工科高等学校)
コーディネーター:内田 俊一(建設業振興基金理事長)


東京都立総合工科高等学校
東 君康 先生

パネルディスカッションでは、本財団の内田理事長がコーディネーターを務め、新たに東京都総合工科高等学校の東君康先生にもご登壇いただきました。
冒頭、東先生から、高校生は日常的にスマートフォンを使っているため就職活動時の情報収集もインターネットを利用しています。企業のホームページは子ども達が興味を持つような内容に充実させることがおすすめです。また、会社案内のパンフレットは若者向けに別途つくることが必要だというお話がありました。
また、工業高校の教員も建設業の全てが分かっている訳ではないので、企業の方には積極的に学校に来て、教員と情報交換をしてほしいこと、生徒のインターンシップは教員にとっても、その企業や業務内容を知る重要な機会であり、その後の繋がりもでき、採用に向けたきっかけになるのではないかというお話がありました。
その後、パネルディスカッション開始前に研修参加者からいただいたパネラーに対する質問も紹介しながら、大変好評いただき幕を閉じることができました。今後も時宜を得た内容をテーマとして、皆様にお届けしてまいります。

研修参加者の声
今回のセミナーはとても参考になりましたし、経営者の皆さんそれぞれの奮闘が伝わってきました。未来に向けての希望がもてる話をうかがえました。
人材不足にどう対応すればよいのか、建設業の魅力をどう伝えていくのかとの検討や課題については、建設キャリアアップが大きく関わっていく中で、建設業の認知が変わっていくと思います。

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